苫小牧市令和5年度12月第4回定例会「一般質問」
以下の内容は、令和5年12月に開催された苫小牧市第4回定例会において、市議会議員である私、嶋中康晴の一般質問での発言内容と、苫小牧市の答弁をまとめたものになります。
文字数の関係で実際の言葉を簡略化したり、表現を若干変更していますが、内容については調整しておりません。(実際は全ての質問答弁がもっと丁寧な言葉でやりとりされています)
一語一句正確なやり取りをご覧いただきたい場合は、以下のURLよりアーカイブ動画をご覧いただければ幸いです。
Ⅰ:認知症予防、介護予防について
質問先:福祉部介護福祉課、総合政策部スポーツ都市推進課
目 的:生涯スポーツや地元のスポーツクラブを活用した将来的な医療費・介護費の抑制について提案
▼嶋中
高齢化などを要因に増大する社会保障関係費について、将来の重要な福祉や医療の予算を確保するためにも、日頃から病気や衰えを予防するような取組が重要になる。
そんな中でも近年、継続的な運動が認知症予防や介護予防に効果的だと言われているが、本市ではこの件について現在どのような取組をしているか。
▼答弁
介護予防は介護が必要な状態になる前に予防策に取組み、健康や身体機能を使持すること、生きがいや役割を持って社会参加することが重要であると言われている。また、認知症予防については、予防に資する可能性のある活動として、運動不足の改善、生活習慣病の予防、社会参加による社会的孤立の解消や役割の保持等があるとされている。
本市においては、65歳以上の方を対象に地域包括支援センターが市内21教室で介護予防教室を実施しているほか、市の介護予防事業として、げんき倶楽部による取組を行っている。また、令和2年度からは地域でシルバーリハビリ体操を教えるシルリハ指導士を養成するとともに、地域でシルリハ体操を行うためのシルリハサロンを展開している。
▼嶋中
高齢者を対象にした取組については積極的に実施できていることがわかった。しかし、先ほどの答弁にもあった生活習慣病の予防に効果的な「運動習慣」については、高齢者層だけではなく、30代から50代の働き盛りと呼ばれるような、忙しくも運動する機会が少ない世代にこそアプローチが必要だと考えるが、本市の現状は。
▼答弁
高齢化社会の進展に伴い医療や介護を必要とする高齢者は増加することが見込まれることから、生活習慣病を予防し、健康を増進することで、健康寿命を延ばすことが重要となっている。
健康こども部策定の健康増進計画においては、健康寿命の延伸に向けた健康づくりを基本目標に、世代を問わず、一人ひとりの状態に合わせた適切な運動に取組む人を増やすこと、「運動習慣」に関する正しい知識の普及暋発することを方針として、取組みを展開している。
若い世代からの習慣が大切だが、例えば健康増進の観点で実施されているスポーツ都市推進課などの事業を通じた取組みも、介護予防や認知症予防に寄与するものと認識をしている。
▼嶋中
課題や認識が一致しているようで安心した。運動習慣については「生涯スポーツ」とも表現されるような、世代を問わず一人ひとりの状態に合った運動を継続することが大切。
しかし世代や目的の異なる一人ひとりに、継続して運動機会を提供し続けるには、行政としても部署を跨いだ連携を求められるはず。こういった課題に対して、福祉課とスポーツ都市推進課が連携して取組んでいるような実績もあるのか。
▼答弁
介護予防や認知症予防の取組については、介護福祉課やスポーツ都市推進課の取組に限らず、認知症予防に効果的と言われている健康ウォーキング事業や市内公園設置の健康器具活用などのほか、高齢者福祉センターにおける体操講座の実施などあらゆる世代を対象とし、全庁的な取組を展開している。
▼嶋中
非常に効果が期待できる取組と感じるので、一人でも多くの参加者が増えるよう継続していただきたい。因みに、スポーツ推進課は働き盛り世代に対し、具体的な取組を実施、もしくは今後計画しているか。
▼答弁
認知症や介護予防に関連して、スポーツの取組については、「スポーツ推進計画」に基づき、「誰でも気軽にスポーツを楽しむ環境づくり」や、「身近な地域でスポーツ交流ができる機会の創出」などの施策に基づき、各種事業に取組んでいる。
主な事業としては、スポーツフェスティバルや健康ウォーキングなどを実施しているほか、スポーツ施設においては、スポーツ教室やフィットネス講座などを開催しており、30代から50代の多くの方々に参加していただいている。
▼嶋中
それでは、実際の効果や現状についても聞きたい。
現在、スポーツ庁が掲げる「第3期スポーツ基本計画」において、「成人の週1回以上のスポーツ実施率が70%になること」が目標として設定されているが、本市のスポーツ実施率の実態は把握できているか。
▼答弁
市民の運動頻度につきましては、令和2年4月に「スポーツ活動実態調査」を実施し、1,212名の回答中、58%の方が「週1日以上」運動を行っているとのこと。
一方で、「月に1〜3日」が22%、「3か月に1〜2日」が9%、「年に1〜3日」が6%となっており、スポーツを行うきっかけづくりが重要と考えている。
▼嶋中
こういった実態調査を続けることで、取組による効果を検証しながら、より良い取組へと改善することが可能となる。引き続き、先ずは「成人の週1回以上のスポーツ実施率70%」の達成を目標に、各種取組の継続や、新たな施策を模索してほしい。
もう一つ、プロスポーツとの連携について聞きたい。
近年、全国各地域のスポーツを活用した健康事業・福祉事業に目を向けると、プロスポーツチームと自治体が連携して、健康増進の取組や研究を行う事例が増えているように感じる。本市においてもレッドイーグルス北海道というプロアイスホッケーチームがあり、既に本市と包括連携協定を締結しているわけですから、協定を活かして市民の健康づくりに関する企画や取組を、積極的に進めてほしいと考えるが如何か。
▼答弁
レッドイーグルス北海道については、令和3年5月に「包括連携協定」を締結し、子ども達を対象とした競技の普及活動や、市主催のスポーツ事業に参加をいただくなど、本市のスポーツ振興に幅広く協力いただいている。今後についても、チーム関係者からは、在籍しているスポーツトレーナーが日程等の調整を図り、協力いただける旨のお話をいただいた。
なお、レッドイーグルス北海道とは、より一層の連携強化に努めるとともに、関係部署とも連携を図り、全庁的な取組みにより、市民の健康づくりや生涯スポーツの普及に努めたい。
▼嶋中
非常に期待できる回答、ありがとうございます。
その環境下にいると忘れてしまいがちですが、プロスポーツチームの存在というのは稀有であり、非常に価値の高いもの。トップレベルのアスリートや指導者、トレーナーが町に集結していること。定期的に対戦相手のファンが町に訪れること。地域を一つにするシンボルがあること。そのどれもが「その存在がある町」だけの特権。
健康に関する地域への貢献についても、既に西部ライオンズと早稲田大学の研究により、「定期的にプロ野球の試合を見に行くことで認知機能や抑うつ(よくうつ)症状が改善された」という研究結果がある。因みにこれは、種目が野球じゃなくても同様の効果が期待できると言われている。指導者やトレーナーが持つメディカルの知識なども、地域に共有・提供されれば、本市のあらゆるスポーツ現場で、スポーツ傷害の防止などに繋げることもできるはず。そして何より、レッドイーグルス北海道の持つスポーツコンテンツによって「健康寿命の延伸」や「医療費・介護費の抑制」を実現することができれば、スポーツ都市を宣言する氷都苫小牧らしい、魅力のある健康増進施策になる。
もちろん様々なハードルがあると思いますが、実現すれば「市民の健康」「本市の財政」「イーグルスのファン拡大」に繋がる可能性のある取組。
経産省とスポーツ庁が推進するメニューの中には、健康数値の改善度に合わせて事業者に報酬が支払われるSIB(ソーシャルインパクトボンド)のような手法もある。私も前職時代、事業者側で案件組成からオペレーションまで関わった経験があるので協力は惜しまない。
是非、実現へ向けて検討をお願いしたい。
Ⅱ:市のプロモーションについて
質問先:秘書広報課、産業経済部観光振興課
目 的:市外からの流入人口を増やし経済効果に繋げるための提案
▼嶋中
本年度は本市内でも数年ぶりに様々なイベントが開催され、その中には非常に集客が多く、賑わったイベントもあった。複数のイベントに参加した知人から話しを聞くと、本市の公式LINEから情報を得る機会が増えているとのこと。こういった声からも、本市の公式LINEは情報発信源として浸透しつつあることが伺える。
先月の決算委員会の際、登録者数24,000人と言われていたが、その後、増減はあるか。
▼答弁
市公式LINEアカウントの登録者数は、今年9月末時点で24,296人で、直近の11月末には2万5千人を超えている。
▼嶋中
現在も順調に登録者数を伸ばしているが、ここまでどのような施策で登録者数を伸ばしてきたのか。
▼答弁
LINE の登録者数を伸ばすための取組みとして、広報とまこまいやホームページ、各課が作成するチラシなどで周知を行ってきたほか、PR 用ポスターを市内公共施設や郵便局、小売店に掲示していただくなど、多くの市民の目に触れられる機会をつくり、気軽にLINE登録ができるよう取組んできた。
▼嶋中
様々な媒体を活かしてPRした結果が成果に繋がっているのは素晴らしい。しかし一定数の登録者数が確保できたからこそ、今後は今までと同様の手法では伸び悩むことが予想されますが、今後、更に登録者数を伸ばすための施策はあるのか。
▼答弁
今後、登録者数を伸ばすためには、市公式LINEをご存じない方にいかに知ってもらうかがポイントになる。
本市には、市公式LINEの他にも、各部署が運用しているSNSがあるので、それそれのSNSが相互に周知を行い、登録者の増加を図るなど、新たな取組みを検討していく。
▼嶋中
LINEアプリは、スマホもしくは携帯所有者の8割以上が利用していると言われているので、まだまだ登録者数の伸びしろがあるはず。市からの情報をダイレクトに届けることができるツールとして非常に貴重なので、引き続き登録者数を伸ばしていけるようアプローチを続けていただきたい。
少し視点を変えて、公式LINEではなかなか情報を届けることができない、市外への発信についても聞きたい。
今年度、コスプレフェスタやアニメツーリズム推進事業が行われたが、交流人口数や経済効果について把握できているか。
▼答弁
アニメツーリズム推進事業については、本市とゆかりのあるアニメ作品を活用し、記念撮影パネルの設置、トークショーやスタンプラリー等を実施してきたが、本事業の実施による来訪者の把握が困難なため、取組に対する効果の把握が難しい状況。
とまこまいコスプレフェスタについては、市内約20か所の撮影会場やイベント会場において、来場者数の把握を行っているため、経済効果を算出しているところ。
▼嶋中
観光資源が限られている本市において、サブカルチャー文化を観光事業として打ち立てていくことは非常に良い取組だと感じるが、この2つの事業について「今後、来場者数を如何に増やすか」、「交流人口を如何に経済効果に繋げていくか」という戦略はあるか。
▼答弁
数字として把握が難しい取組については、携帯位置情報分析ツールなどを活用し、取組の前と後での来訪者の動向を分析するなどして効果を図るのも一つの方法と認識しているが、その事業による効果か否か難しい部分があり、正確に経済効果を把握することは難しいと考えている。
観光誘客の目的は、交流人口を増やし、地域経済の活性化を図ることと認識している。経済効果を高めるためには、ホテルや飲食店などと連動したイベントの開催等さまざまな取組が必要と考えているので、どのような取組がより効果的なのかを今後検討していく。
▼嶋中
イベントの誘客や交流人口は、その数が増えれば何かしらの形で一定の経済効果に繋がる側面があるものの、消費行動に直結するような仕掛けや工夫を張り巡らせることで、より高い効果が期待できる。表面的な規模や華やかさに満足することなく、収益性や経済効果にも目を向け、より観光産業として価値の高いイベントにブラッシュアップしていただきたい。
因みに、これらのイベントは会場提供など、協力してくれている事業者がいると思うが、協力事業者のメリットや満足度にも繋げることはできているか。
▼答弁
とまこまいコスプレフェスタは毎年撮影会場として多くの民間企業に協力いただき開催しており、令和5年は約9,500人、コロナ禍前は約16,000人と多くの来場者が訪れ、一定の認知度があると認識している。
イベントの開催にあたり、ポスター掲示や特設HPの開設のほか、SNSや各種マスメディアでの周知を行い、撮影会場を掲載したパンフレットも作成し来場者に配布しているので、協力事業者にとっても一定の企業PR効果はあるものと考えている。
▼嶋中
様々なプロモーションによって実現した集客が、協力事業者のPRにも繋がっているだろうということで理解した。
しかし今後、より大きなイベント、そして産業として育てていくためには、協力事業者の参画数拡大と、会場提供やプロモーションに留まらず、更なる協力を求める必要があると感じる。そのためには、企業PR効果も強化しつつ、来場者が協力事業者の商品を購入するような仕組み、協力金などのインセンティブを用意するなど、協力事業者へのメリット提供も強化することはできないか。
▼答弁
イベントに参加いただく方々に最大限楽しんでいただけるよう取組でいるが、予算も限られていることから、コスプレフェスタで撮影会場を開放していただいている企業や団体に対して協力金などのインセンティブはなく、ご厚意で協力いただいている状況です。
会場を解放していただく際には、会場運営にかかる人員の配置はしているものの、コスプレフェスタは特に協力いただける企業や団体あってのイベントですので、今後、継続・発展していくためにも、協力いただいている企業や団体にとってのメリットについて、様々な視点で検討していく。
▼嶋中
協力事業者の職種、サービスもバラバラで一様にメリットを提供するのも難しいとは思うが、今後、広報や現地サービスの部分で互いが協力し合い、本市の目玉事業に発展・成長する可能性があるからこそ、是非とも前向きな検討をお願いしたい。
情報発信に話しを戻すが、市民に情報を届ける公式LINEは、情報発信ツールとして着実に成長していると感じるが、市民以外にも本市のイベント情報などを届ける仕組みや施策はあるか。
▼答弁
イベント情報などの発信については、市の公式LINE や公式Facebook、観光振興課のXやYouTubeなどのSNSのほか、市のHPや特設HPなどのインターネット戦略を活用するとともに、観光情報誌にも掲載するなど、市外の方へも広く情報が伝わるよう取組んでいるところです。
観光振興課のXにつきましては、令和5年3月から新たに開設し、フォロワーも着実に増えているが、プレゼントキャンペーンなどを実施するなどフォロワー数増加へつなげる取組を実施し、さらなる発信力向上を図っている。
また、インバウンド向けにリアルタイム翻訳機能を有したインターネットサイト「クールジャパンビデオ」を活用するなど、国外へ向けた情報発信にも取組んでいる。
▼嶋中
SNSによる情報発信は安価で拡散性が高く、一定の効果を期待でるので、是非、積極的に活用してほしい。しかしSNSは「基本的にフォロワーにしか届かない」という大前提がある。もちろん受信者が「いいね」や「シェア」をすることでフォロワーのフォロワーにも届くという拡散機能こそがSNSの魅力だが、市外や道外の潜在的なターゲットに対し直接的にアプローチできる類のものではない。そう考えると、本市が想定するペルソナが例えば「市外・道外に住む成人女性」であれば、既にそのペルソナに類似したフォロワーを多数抱えたインフルエンサーに情報を発信してもらうことが理想かもしれません。
そこでこれは提案だが、フォロワーを多く抱えた市内外のインフルエンサーを、本市の魅力的なスポットに案内するツアーに招待し、実際に体験した本市の魅力をSNSで発信してもらうような事業はできないか。
▼答弁
情報発信については、新聞や雑誌、テレビやラジオなどのマスメディア、また加えてSNSやインターネットなど様々な媒体を活用することで、若者からお年寄りまで幅広く情報を伝えられると考えている。中でも市外へはSNSやインターネットによる情報発信は効果的と考えているが、場合によっては過剰な情報量の中に伝えたい情報が埋もれてしまう場合もあると思う。インフルエンサーは、フォロワーが多く、Xや Instagram 等のSNSで積極的に情報発信を行っているので、特定の分野に興味関心の高いフォロワーに共有拡散されることで高い広報効果が期待できると認識している。
本市でもこれまで、オートリゾート苫小牧アルテンを拠点としたワーケーション事業の中で、インフルエンサーを活用した取組を行っているが、よりいっそう本市の魅力を発信していく手段として、観光スポットの紹介にもインフルエンサーの活用を検討していきたい。
▼嶋中
前向きな回答、ありがとうございます。
ワーケーション事業については私も内容など把握しており、本市のPR事業として一定の効果があると評価している。
最後に1点。SNSを中心とした広報については、安価に拡散性の高い発信ができることが魅力であり、今後も効果を期待できる戦略だと認識しているが、先ほどの答弁の中にあった「情報量の中に埋もれてしまう」ことが唯一かつ最大の課題。継続的な投稿、共感される内容、流行に乗る感覚、影響力のある協力者など、意図的に効果を引き出すのは簡単ではない。共感や信頼があるからこそ相乗効果を引き出せるものであり、だからこそ地元事業者や地域を訪れた個人の協力が得られるような関係性やオペレーションが重要です。
是非、仲間を増やしながら事業を拡大していくイメージを持って、失敗を恐れず挑戦を続けてほしい。
Ⅲ:空き家対策について
質問先:市民生活部市民生活課
目 的:空き家の管理や再活用の支援を検討し、移住促進に繋げるための提案
▼嶋中
本市の空き家状況について、昨年度の実態調査の結果を教えてほしい。
▼答弁
市内の空き家状況については、第2次空家等対策計画策定に向けて、空き家件数や分布状況の変化を把握し、基礎資料を得ることを目的として、令和4年度に空家等実態調査を実施した。実態調査では、はじめに外観目視により、居住者・使用者がいない建物について現地調査を行い、老朽度合いや敷地の状況などを個別に確認した。
あわせて、空き家の所有者や管理者に向けて実施した「空き家所有者等アンケート調査」の回答なども含めて精査をした結果、令和4年度末の空き家数を1,494件とした。
▼嶋中
実態調査と合わせて「空き家所有者等アンケート調査」を実施したとのことでだが、アンケートの返答率をどうか。
▼答弁
令和4年度の空家等実態調査により、居住実態のない可能性が高いと把握した建物について、所有者や管理者の重複や所有者不明の物件を除く1,450件を対象に、利活用の状況や今後の意向を把握することを目的に「空き家所有者等アンケート調査」を実施。アンケートについては631件の回答をいただき、返答率は43.5%となっている。
▼嶋中
この実態調査は、所有者や管理者の重複や、所有者不明の物件を除く1,450件を対象にしたとのことだが、所有者不明等により、利活用が困難な空き家はどの程度あるのか。
▼答弁
利活用が困難な空き家は、所有者不明の理由のほか、管理が行き届いておらず、損傷が激しいため保安上危険となる恐れがある、または、倒壊の危険性があって修繕や解体などの緊急度が高い建物が該当すると考えており、これに該当する空き家は190件と把握している。
▼嶋中
因みに、空き家対策推進事業は、地域の生活環境の維持・向上を目的とした事業かと思うが、空き家の利活用を推進するような施策は、現在本市にあるか。
▼答弁
本市においても空き家数は増加傾向にあり、地域にとって身近な課題となっていることから、安心・安全に暮らせるまちづくりを推進するため、平成31年3月に苫小牧市空家等対策計画を策定し、空き家に関する施策を総合的かつ計画的に実施している。
具体的な施策として、不動産関連団体や司法書士会など業務協定を締結による協力団体の紹介や、金融機関等が行う解体や改修費用に対する金利優遇制度の情報提供、「北海道空き家情報バンク」の周知及び登録など、空き家の円滑な流通の促進に取組んでいる。
▼嶋中
もう少し詳しく教えてください。
空き家の所有者の中には、年齢や現在の住居地によって自己管理が難しい方もいると思う。当然、管理自体を本市が担うことはできないわけですから、所有者に対し地域の安全や生活環境を維持するため、どのようなアプローチをしているのか。
▼答弁
空き家所有者等アンケート調査において、空き家の維持管理に関する項目への回答のうち、回答者の約19%が「全く維持管理をしていない」と回答されており、主な理由としては「遠方に住んでいる」「費用を負担できない」「必要性を感じない」が挙げられている。本市では、これまでに相談窓口の連絡先や管理業者などに関する情報の提供や、空家等解体補助金制度など、所有者に必要とされる情報の周知・啓発に取組んでいるが、アンケート調査から空き家の利活用に着手や実現するまでに時間を要する傾向が見られ、これまでの相談においても、時間の経過とともに課題が複雑化しやすい状況に直面していることが確認されている。本市といたしましては、空き家の適正管理は、所有者により適正に行われるべきとの考えを前提に、周知・啓発に取組んでいるところですが、まずは相談していただけるよう、情報提供や意識啓発を継続していきたいと考えている。
▼嶋中
難しい問題だが、最新の状況把握やきめ細やかな連絡が肝になるので、引き続き対応をお願いする。因みに、利活用が困難な建物については「空家等解体補助金制度」があるとのことだが、一方で空き家の購入、もしくはリフォームに使えるような補助メニューもあるか。
▼答弁
空き家の発生を抑止するためには、所有者、管理者による適切な維持管理はもとより、行政、民間事業者が連携して空き家の利活用促進に取組むことが重要と考える。
空き家の購入、リフォームに活用できる制度としては、(都市建設部所管の)住宅耐震・リフォーム支援事業や(産業経済部所管の)空き店舗活用事業がある。これらを活用することにより、空き家購入者の負担軽減に一定の効果があると考えている。
▼嶋中
現状や対策、使える制度についてよく分かりました。対策事業や各種取組によって対応を進めているようですが、今後高齢化が加速度的に進めば、今まで以上に住宅地の空き家や空き地が目立つようになると予想できる。そして一方では、ラピダスやデータセンターの建設、その稼働に合わせて、苫小牧を住居拠点として検討する人が増えるはず。
これは最後に要望ですが、移住検討者が本市の既存の住宅地に転居するという選択肢も持てるように、環境の維持・整備を継続しながら、空き家の購入を後押しするような本市独自の支援制度を設計してはどうか。
空き家の再活用は、景観や防犯の観点はもちろん、高齢化が進む地域の再活性化にも繋がる。以前、まちなかに限定した新築物件の建設に対し100万円まで補助するような制度があったと聞くが、今後は移住検討者をターゲットに、新築や中古住宅購入、賃貸契約など様々なニーズに応えられる幅広い補助メニューを検討してほしい。
今回、関係部署の皆さんと打ち合わせする中でも感じたが、「暮らしの部分は市民生活部」「建設や解体は都市建設部」「移住定住であれば総合政策部」と本件は窓口が多く複雑です。また、今後は近隣の自治体が、様々な移住促進政策を打ち出すことも予想できる。
市内外の情勢変化に対し調査や分析を怠ることなく、近隣の自治体の動きに出遅れることなく、積極的なPRができるよう、窓口や役割の明確化も踏まえ、備えていただければ幸いです。
Ⅳ:市職員の評価制度と人材育成について
質問先:総務部行政管理室
目 的:市職員に適正な評価制度を導入することで職員のパフォーマンスを向上させるための提案
▼嶋中
近年、全国的に職種を問わず、若年層の離職が増えている。本市職員についても同様の傾向はあるか。
▼答弁
本市における近年の退職者につきまして、消防職、医療技術職を除く行政職全体の過去3年間における中途退職者数は、令和2年度で13人、令和3年度で18人、令和4年度で22人と、若干の増加傾向が見られる。
中途退職者の年齢については、20代・30代職員の比率が上昇しており、全国的な傾向と同様であると分析している。
▼嶋中
もう少し世間の傾向を深く見ていくと、近年は若者を中心とした価値観の変化により、若年層のキャリアアップを目的とした転職が多いという分析もある。そういった社会情勢の中、本市職員の離職は、どのような理由が多いか正確に把握できているのか。
▼答弁
退職の理由については、自己都合退職ということもあり不明な場合も多く、正確に把握する事は難しいですが、結婚などの環境変化や健康上の理由によるものや、20代・30代の職員については、キャリアアップを含め、自身にとってより働きやすい環境を求めた転職によるものも多いと認識している。
▼嶋中
確かに退職理由の聞き取りは難しい部分もあるが、可能な限り正確に把握することで組織課題を抽出することができ、結果として離職の少ない組織づくりに繋がる。工夫を凝らして、本質的な退職理由を組織が蓄積できるよう努めていただきたい。
そして離職防止ももちろん大切ですが、能力のある人材を外から発掘、採用することも重要だと思う。本市における近年の中途採用エントリー数や採用数、定着率など分かる範囲で教えてほしい。
▼答弁
中途採用について令和4年度を例に挙げると、夏、秋、冬に採用試験を実施し、エントリーいただいた計357名の受験者のうち、112名が職歴のある受験者となり、その中では7名を採用している。
定着率については、平成30年度から令和4年度の5年間に採用された職員のうち、職歴のある職員は50名おり、そのうち令和4年度末までに退職した職員は3名で、5年間の定着率としては94%となっている。
▼嶋中
中途採用のエントリー数や定着率を聞く限り、本市の募集要項や雇用条件、職務環境においては大きな課題は無いと感じた。となれば、若年層の中途退職者を防止するためには、仕事のやりがいや納得のできる評価制度、成長を感じられる人材育成システムなどが鍵になると思う。
現在本市としてはどのような制度を活用、若しくは今後計画しているのか。
▼答弁
評価制度につきましては、平成28年の地方公務員法改正により、各地方公共団体においても人事評価制度の実施が義務付けられたため、本市においては数年間の試行実施を経て、平成28年度より人事評価制度を本格実施している。
人事評価制度は、職員の能力や業績を正確に把握し、人事管理の基礎として活用することはもちろんのこと、評価の過程における面談等を通じて評価者と被評価者が積極的にコミュニケーションを図るとともに、適切な指導や助言等を行うことで、人材育成や組織パフォーマンス向上につなげることを目的としている。今後も、人事評価制度を人材育成ツールの一つとして有効に活用することにより、活力ある組織を実現し、さらなる市民サービスの向上につなげていく。
▼嶋中
おっしゃる通り、人事評価制度は人材育成の根幹です。若年層は能力の高い人材ほど、成果や成長に合わせた評価を求めますし、正当な評価がされていないと感じれば離職という決断に至る傾向がある。
成果や能力に合わせた評価は国からも導入を求められていると聞くが、本市においては現状どのような制度を導入できている、若しくは今後導入していくのか。
▼答弁
人事評価の結果については、地方公務員法の規定により、任用や給与などへの活用が義務付けられていることから、本市においては、評価結果を昇任や昇格などの参考としているほか、給与面においては管理職の勤勉手当に反映している状況です。
人事評価制度は人材育成を目的として実施しているところではあるが、評価結果の給与反映は、職員のモチベーション向上につながる重要なものだと認識している。
評価結果の昇給への反映、また、現在管理職を対象としている勤勉手当への反映を一般職にも拡充するなど、さらなる職員の仕事に対するモチベーション向上につながる人事評価制度となるよう、引き続き改善に努めたい。
▼嶋中
ただ今の答弁の中に合った、新しい評価制度の一般職への拡充は、非常に価値のある重要な取組です。因みに、現職者へのアンケートや面談では、評価制度や人事制度に関して現場の声を吸い上げることができているか。
▼答弁
アンケートでは、現行の制度を「人材育成につながっている」などと評価する声が一定程度ある一方、昇給や勤勉手当などを含めた評価結果の更なる活用を望む声が多く聞こえている。また、評価の過程においては評価者と被評価者の面談が必要ですが、アンケート回答者の約3割が「面談が不足している」といった回答でした。
人事評価制度を人材育成ツールとして有効に活用するためには、評価者と被評価者がしっかりと向き合った面談を行い、お互いの信頼関係を構築する必要と考えます。そのため、今年度は評価者の面談力強化を目的に、人材育成の要の存在である部次長職を対象とした「部下育成支援事業」を実施し、効果的な面談やフォローアップ方法などを講師に密着型でサポートしていただいている。
先ずは既存の制度を安定的に運用し、今後は評価結果の更なる活用に向けた検討を進めていきたい。
▼嶋中
「面談が不足している」という課題に関しては、早急な改善が必要です。
当然、認識されていると思いますが、評価を報酬や昇格に反映させるには、評価者と被評価者の「評価の共有と納得」が絶対条件です。答弁の中にもあった「部下育成支援事業」によって面談の頻度はもちろん、効果的な面談が実施されるよう支援及び管理をお願いします。
合わせて、優秀な職員がやりがいを持って永く働いてくれる職場にするためには、上長との信頼関係や面談による声の吸い上げももちろん大切だが、報酬や役位による評価も重要。管理職以外にも短期的な成果を賞与に反映したり、能力のある職員には年齢を問わず役位を与えるなど、成果・能力に対して明確で直接的な評価制度を導入してはどうか。
▼答弁
本市の人事評価制度については、評価者との面談により職員が自分自身の強みや弱みを把握し能力開発につなげる人材育成に主眼を置いて、これまで実施してきた。しかしながら、人事評価の結果は地方公務員法の規定により、給与への活用が義務付けられているほか、職員アンケートにおいても「仕事のモチベーション向上につながるよう、評価結果を給与に反映してほしい」といった声が多く聞こえており、年々給与への反映を望む声が増えてきている。面談での評価者による適切な指導や助言などのほか、評価結果の給与反映について、先進自治体を参考にした制度設計を進めることにより、職員の成長、さらには仕事に対するモチベーション向上につなげていきたい。
▼嶋中
改革に取組んでいる担当課や、人事評価制度の導入を望む若い職員の想いがよく分かった。
繰り返しになるが、人事評価制度の改革はたいへんな労力を要すが、人材育成や組織の生産性向上を実現するために、避けては通れない。私自身、民間企業で評価制度の改革に携わったことがあるが、評価制度の改革にはハレーションが伴い、どんなに良い制度を構築しても現場の理解や納得が無ければ機能しない場合もある。
しかしその労力やリスクを差し引いても、導入する価値のある改革。それは能力のある職員が正しく評価されることによって、組織全体のパフォーマンスが上がり、結果として真面目に働く全ての職員の職務環境を改善し、成長機会に繋げてくれるから。
若い職員から人事評価制度の導入を望むアンケート結果があるのであれば尚更、職員団体との調整を進め、いち早く導入していただけるようお願いします。
Ⅴ:議会を終えて
3回目の議会は、福祉・まちづくり・行政改革と自分の想いの強いジャンルに対し、強く課題提起や提案ができたと感じています。
もちろん、今後も継続的に注視し提案し続ける必要はありますが、関係部署に対し自分の想いと見識を理解してもらえたと思っています。
今回は教育についての質疑・提案は常任委員会で行っていますので、別の機会にそちらも公開させていただきたいと考えています。
変化と成長を楽しむことを忘れず、苫小牧の未来を描きます。