議員定数に関する考え
以下の内容は、令和6年11月に開催された苫小牧市議会による「議員定数に関する全員協議会」において、市議会議員である私、嶋中康晴の発言内容と、他の議員の発言を聞いた上でまとめた考えを掲載したものになります。
Ⅰ:自身の発言内容
下記は全員協議会における私自身の発言内容になります。
先ず結論から申しますと、私は現状維持を表明いたします。
理由は、基準や指標が無いまま議員定数を変更すべきではないと考えているからです。
人口や税収による指標を定め、そこに達した場合、もしくは割り込んだ際に増減するという基準が無ければ、組織的な動きによっていつでも定数を変更できてしまいます。
これは逆に、人口や税収が大幅に減ったとしても、大多数の議員が反対すれば定数維持にできてしまうというリスクでもあります。
実際に他市町村でも、人口や税収の推移と比較しながら議員定数を随時変更している事例があるようです。室蘭市もHPに「議員定数検討会議においての検討資料」と題して根拠資料を掲載し、市民にも分かりやすく公開しています。
そういった事例もありますので、指標と基準を定めることは難しくないと思いますし、基準があれば、削減すべき時に速やかに実行できるのではないでしょうか。
そしてそういった観点で本市の議員定数を他市町村と比較すると、本市の議員定数は決して違和感のあるものではありません。
もちろん、ITやSNSによる情報化、データ化が進むことで議員という窓口が減ったとしても民意を汲み取りやすい社会になってきていますので、人口と議員定数の比率自体も検討の余地はあると思います。今後は議員定数削減を目標に、市民の声を集約できるスキームや、傾向をデータ化するようなDX推進も検討して良いのかもしれません。
最後に、私自身は議員定数を見直していくことには賛成です。
しかし、「なぜ今なのか」「なぜ何名減らすのか」という問いに対しての指標や基準が無ければ、否が応でも個人の価値観や組織の都合による議論になり、毎回のように時間を要し、最終的に決選投票するしかなくなってしまいます。そのリスクについては先に述べたとおりです。
よって「いつまでに指標や基準を定め、いつから導入する」という計画を樹立させることを今回の目標にすべきと提案して終わらせていただきます。
以上です。
Ⅱ:他の議員の意見に対する個人的見解
続いて他の議員から出たいくつかの意見に対し、自身の見解を示します。
①人口減少に合わせて減らしていくべきではないか
人口減少に合わせて議員定数を削減することには賛成しますが、感覚的に議論するのではなく、指標を用い、基準を定め、機械的に執行していくべきだと思います。
もちろん、その上で全議員が一丸となって人口減少に立ち向かいたいです。
②定数を削減して財源を確保すべきではないか
報酬、交通費、視察費など加味すれば、恐らく1人あたり年間800万円~900万円程度の削減になると思います。この財源を基に何ができるのか。
議員定数を削減すれば、前回の本市の得票数から予測すると「長年育てた強力な後援会を持つベテラン議員」や、「政党所属議員」、「企業に属する議員」や「組織の支援がある議員」が残り、組織的な後ろ盾の無い、直接的に市民から支持を得る議員が減る可能性が高くなります。そういった議員を削って確保する年間800万円で何をするのか。
今回、現状維持を表明した議員さんの大多数がここに着目していたと感じます。
③一気に人数を減らして長期的に安定した運営をすべきではないか
選挙を機に定数が変わるのであれば、小まめに人数を変更したとしても運営が不安定になることはないはずです。
逆に市の現状を注視し、常に定数を監視(もしくは調整)することは必要だと思います。
個人的には、現在のような政党政治の大きな流れがあるタイミングで大幅な変更を求めるのは、今を機と判断した「政治戦略」に見えてしまいます。
④議員数が26名だった時期もあるので問題ないのではないか
事務職や製造業ではありませんので、議員は数を多少減らしても実務レベルで影響が無いのは当たり前です。大切なのは、市民にとって議員の存在を身近に、そして有意義に感じるかどうか。
「26名でも問題は無かった」とは、何を指しているのか。この意見をベースにしてしまうと、逆にどこが適正なのかを定めるのが難しくなってしまいます。
⑤意見がまとめやすくなるのではないか
これは一理ありますが、利点と同様に欠点もあります。
それは、意見が纏まりやすくなる反面、少数の偏った意見が通りやすくなるリスクです。
これは利点だけをピックアップするのではなく、利点とリスクを両方理解した上で議論すべきです。
Ⅲ:様々な意見を聞いた上での「まとめ」
当然ですが、長年育てた強力な後援会を持つベテラン議員や、政党所属議員、企業に属する議員など組織の支援がある議員は、選挙で負けるリスクが低いわけですから、多少定数が減っても怖くはありません。
もっと言えば、今期で引退する予定の議員さんにとっては個人的リスクの無い議論です。
そういった立場の違う議員が議論してもフェアではないなと改めて感じましたし、だからこそ指標と基準が必要だと確信しました。
そして私自身の獲得票数が少ない以上は、「保身のためにこんな主張をしている」と思われても仕方がないことも理解しています。
自身を支える組織が無いことは自分の意見を言いやすい反面、こういった議論になると発信力が非常に弱くなります。今回初めて「選挙は当選するだけではなく上位当選してこそ発言に重みが生まれる」ことを実感しました。
自身の意見が民意を背負ったものであると胸を張って言えるよう、今まで以上に地域の未来のため「見える活動」「伝わる活動」を意識して活動していきたいと思います。