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やすみと珈琲

こんにちは、『やすみ』です。

コーヒーの香りが鼻をつつく。
ふらっと立ち寄る喫茶店。
グラグラと不安定な歴史ある椅子に座って、
読みかけの本を開く。

私はコーヒーがとても好きです。

中1で習う英文の訳みたいになってしまいましたが、本当に好きなのです。

11-1.やすみと珈琲

これは大学時代の話。
70歳くらいのおばあちゃん(以下、ママさん)が
一人でやっているような純喫茶でアルバイトをしていました。
4年間、入学してから社会に出るまで。

当時の私は、あまりコーヒーの魅力についてはわかっていませんでした。
だって、苦い。
お砂糖とミルクを足せば、まぁ飲める程度。

働くことになった理由は、ママさんにスカウトされたから。
スカウトというと大げさですが、お声をかけてもらったのです。
喫茶店で働く、というのに多少なりとも憧れがあり、二つ返事でOKさせていただきました。

11-2.やすみと珈琲

18歳やすみ、衝撃を受けます。
コーヒーの種類の多さに。
まずは名前と特徴を覚えろとママさんが言います。
厨房でケントをふかしながら、優しく説明してくれました。

モカ、キリマンジャロ、ブラジル、トラジャ、
マンデリン、コロンビア、ブルーマウンテン……
中でもお気に入りだったのはグァテマラでした。
強い酸味が好みではなかったので、甘みの余韻が残る風味が好きになった理由かもしれません。

飲み比べるうちにブラックで飲めるようにもなりました。
今ではお砂糖とミルクは要りません。

11-4.やすみと珈琲

もう閉店してから7年ほど経ちます。

多くの常連さんに愛されたまま、約40年の歴史に幕を下ろしました。
ママさんが身につけていたドクロリングは、
私が形見としていただきました。

毎日つけていましたが、去年ついに割れてしまったんです。
物ですからね、いつかは壊れてしまいます。
でも、思い出はきっと残り続けるんだろうなあって。

11-5.やすみと珈琲

私は今日もコーヒーを飲みます。
昔より好きになれたからです。

11.やすみと珈琲

まっくろコーヒー、覗けど覗けど底見えず。
見えるころにはあと少し。
おかわりすれば、またもや見えず。
まだ熱いから、ちょっと冷ましてひとやすみ。

やすみ

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