川遊びでの失敗集と基本的な対策まとめ
僕はこれまで、川での仕事や遊びを通じて、色んな痛い経験や、怖い経験をしてきました。そんな経験から、川の危なさは理解してきたつもりです。
ですが、川をはじめとしてアウトドアでの失敗の恐ろしいところは、もしどんな危険があるかを知らなければ、たった1回の失敗でも命や怪我の危険に繋がってしまう可能性があるということです。
それは、アウトドアでの危険をきちんと知っていれば防げることがほとんどです。
なので、僕のこれまでの失敗エピソード(どちらかと言うと隠しておきたいような類のもの。笑)をお伝えすることで、まだ川でそこまで怖い経験した事ないって方にも、少し想像してもらえたら嬉しいなと思っています。
かなり長いので、気になるところだけでも読んでみて頂ければと思います。
①ライフジャケットは絶対着用しよう
これは、ラフティングガイドを初めて2年目の頃、ガイド歴が近い先輩と2人、ボートで川を下りながら操船のトレーニングをしていた時の話です。
ガイドにとって、川に入る時にライフジャケットを着用するのは当たり前のことでした。
ですが、だからこそ"ライフジャケットを着用せずに流水に入ったらどうなるのか"を知っておくべきでは無いか?という話になり、ラフトボートにライジャケを脱ぎ置いて、2人同時に、流れが速い四国吉野川に飛び込んだことがあります。
飛び込んだ瞬間にヤバいことをしたことを悟りました。
流水では、ライジャケ無しの身体は一切浮かない上、川の流れは水面より水中の方が速いので、水中に引きずり込まれて顔が水面に出ない。
水面より少し深い所の方が抵抗が無く流速が速い
そして、自分はどんどん本流の流れに乗って流されていく割に、唯一の助け舟である誰も乗っていないラフトボートは、ゆっくりと流れてくる。
水面に浮いているボートは、空気抵抗や波の抵抗を受けるのでスピードは遅くなるのです。
あっという間に距離は離れ、ボートに戻るのは不可能な状態になっていました。
こうなったら、自力で川岸に泳いで辿り着くしかないのですが、本流の流れが速い川で、本流からエディ(川岸に近い流れの穏やかなところ)に入るのはかなり泳力が要ります。
赤点線がエディライン、本流と逆転する流れがエディ
この時点でほとんど息ができてないので、思うように身体を動かすことができない。
なんとか水面から口だけを出すような泳ぎ方で、もがいて岸に辿り着くことはできましたが、その後は酸欠状態で数十分間動けませんでした。
もし、ここで岸に辿り着けないまま、本流に流され、そのまま次の瀬(流れが速いところ)に突入してしまっていたら、確実に窒息死していたでしょう。
当時の僕は勘違いをしていたと思います。
ライフジャケットを着けていると、ある程度クロールができる人なら、流れの速い川を泳げる。流れに逆らって川を横断できたりします。
でも、それができるのは、ライフジャケットを着用しているからです。
浮力を何も身に付けなければ、川の複雑な流れに翻弄されて、人間の泳力ではどうにもならない。それを痛いほど体験しました。
皆さん、川で遊ぶ時、川に近づく時は必ずライフジャケットを着用しましょうね。
ライフジャケットはホームセンターやアウトドアショップで買えます。
②サンダルは脱げないやつを。裸足はNG!
これは穏やかな四国の渓流、汗見川で川遊びをしていた時のこと。
カヤックで少し下り、程よく遊べそうな淵が見つかったので、カヤックから下りて、潜って鮎を追いかけたり、飛び込みをしたりして遊んでいました。
普段、激しい流れの区間を下る際は、何かあった時のために、きちんと川用のサンダルかリバーシューズを履いて下ります。
ですが、この日は穏やかなダウンリバー&川遊びだったこともあり、クロックスのようなサンダルでした。さらには、カヤックを降りた後はクロックスを脱いで裸足で遊んでいました。
裸足で川で遊ぶって、解放感があり気持ち良かったのです。
そんな中、3mくらいの少し高い所から飛び降りようと、岩肌を登っている時。
登ることに夢中でよく見てなかったのですが、その岩肌は結構鋭く、尖っているところがいくつも。
そこを登ろうとして足に体重をかけた時、ずるっと足が滑り、足の指の間を尖った岩でズバッと切ってしまいました。
川に入ると、皮膚がふやけて柔らかくなるし、気持ち的にも、淵の水の綺麗さにテンションが上がっていたと思います。
ここでの教訓は、たとえ今回のように川自体が穏やかで、まったりとした遊び方をする予定でも、川に入る時は、足を保護するためのサンダルは必須なんだってことです。
それ以来、裸足で川に入ることはしないと決めてます。
ビーチサンダルも、川では流されるので不向き。
③ファーストエイドキッドはどんな時でも必要
足を切ってしまった続きの話ですが、僕はその時ファーストエイドキッドを携帯していませんでした。
怪我した足の指は結構ぱっくり切れていて、血が止まらない状況。しかも、川を下ってきてしまっているので、道路に上がることもできない。
そこに、一緒に下っていた仲間の一人が、車にファーストエイドキット(救急セット)載せてるから使っていいよと言ってくれたので、カヤックに乗ってなんとかスタート地点まで漕ぎあがり、止血ができました。
ですが、自分が怪我することを考えておらず、ファーストエイドキッドの準備していなかったことに、なんとも恥ずかしい気持ちでした。
ここでの教訓も、サンダルを履いていなかったことと一緒です。
激流を下る訳じゃないし、穏やかな川で遊ぶんだから、別にファーストエイド要らないでしょって、なんとなく思ってしまっていたこと。
川で遊ぶとき、アウトドアする時、別に要らないでしょって思う時こそ、ファーストエイドキットは携帯しておかないといけない、ということを学びました。
どんな川遊びでも装備はバッチリで。ファーストエイドも携帯を。
④河原では走らない!
これは、ラフティングツアーにセイフティカヤック(SK:ツアーの安全の為に同行するカヤック)のガイドとして同行していた時のことですが、スタート前にカヤックを担いで河原を走っていました。
右肩にカヤックを担ぎ、左手にパドルを持ち、ツアーが押し気味だったので、ちょっと焦りもありながらゲストの元に向かって走っていたのですが、つま足が地面から出ていた岩に引っかかって、派手に顔面からこけたことがあります。
痛いとも言ってられませんし、自分がケガしたからといってこれ以上ゲストを待たせるわけには行かないので、そのままカヤックに乗りツアーを続けました。
ゲストが心配そうに僕の顔を見ていたので、やっぱり怪我してるかな?思いつつ、ツアー終了後に鏡を見たら、鼻のてっぺんの皮膚がパックリ割れていました。
何十回も通っている河原でしたし、履いてるサンダルも毎日使っているもの、カヤックも毎日担いでいたので、油断や慢心がありました。
どんなに慣れている場所でも、河原は走るもんじゃない。皆さん河原では走らないようにしましょう!(当たり前か。笑)
河原で走ったらこけます(笑)
⑤ロープを身体に結ぶのは絶対にダメ
川で子どもと遊ぶ時、流されないように身体をロープで大人と繋いでおく。これ、どう思いますか?
ライフジャケットには、カラビナを付けたりするところがあるし、そういう使い方をするためなんじゃないの?と思った方、要注意です。
ロープを身体に結んだり、ライフジャケットの肩口にロープを結んだカラビナを付けるのは絶対にNGです。
流れる川の中で、ロープを身体に結んだ状態で、逆側のロープの先端が川底の岩などに引っかかったところを想像してみてください。
自分の身体は当然下流に流される水圧が掛かりますが、繋がったロープの先は岩に引っかかっているので、最大限に伸びきったところで自分の身体は水中で留まることになります。
この時に掛かる水圧がとんでもない重さになり、すごい強さの水圧に押されたまま、身動きが取れない状態になります。
これはロープエントラップメントといい、かなり危険な状態です。過去にこれによる死亡例もあります。引っかかるのがロープでなく足なら、フットエントラップメントと言います。
これはフットエントラップメント
僕は以前、トレーニングの一環として、足にロープを結び、もう片方を仲間が持ち、ロープエントラップメント状態をわざと作り出し、水圧を体験するという練習をしていたことがあります。
その最中にハプニングが起こり、仲間が手放したはずのロープが水中の岩にひっかっかり、僕は足首をロープで結ばれたまま、強い水圧を受けてリアルなロープエントラップメントに陥ったことがあります。
この時の水圧は、勉強しているはずの自分でも想像を超えるもので、パニックになりました。
ガイドは普段リバーナイフを携帯していますが、この時は冷静にナイフでロープを切ることができず、駆け付けた先輩ガイドに助けてもらい、事なきを得ました。
普段の川遊び中にこの状況になったら、普通は対処できませんし、助けにも来てくれる人もなかなかいないでしょう。
ちなみにこれはボディエントラップメント
これらの事故を防ぐために、流れる川では足を水面まで浮かせましょう。足を地面に向けておくと、引っ掛かる可能性が高まりますので、足は上げて流されましょう。
川で流れる時は、足を上げてホワイトウォーターフローティングポジション(WWFP)の体勢を。
⑥川の流れは複雑なことを知っておく
川の流れはとても複雑で、その中の一つにダウンストリームという流れがあります。
その名の通り、水面から川底へ向かう流れなのですが、僕はこのダウンストリームを一度体験したことがあります。
これもガイドトレーニング中でした。両足首をロープで結び(かた結び)、川に飛び込み、流れながらナイフを出して足をロープを切るという練習内容。
僕は足を縛り、川に飛び込み、流れながら、ロープを切るためにライフジャケットからナイフを取り出しました。
ロープは9mmくらいあるので簡単には切れないので、背中を水面に、顔と手と足は水中に向けるような体勢で息を止めて必死に切る。
その時、スッと流されるような感覚があり(水圧はほとんど感じなかった)、気づいたら、いつの間にか水深2,3mくらいの位置にいました。
瞬間、自分はなぜこんなに深いところにいるのか理解できませんでしたが、とにかくロープを切るのをやめ、急いで水を掻いて水面に浮上しました。
エディライン(流れの境い目)で発生するダウンストリーム。
後になって、それがダウンストリームだったということがわかったのですが、普段ライフジャケットを着けた状態では、2,3mも潜るのはほぼ不可能です。
それくらいライフジャケットには浮力があります。にもかかわらず、ダウンストリームでは、一瞬で深い所まで沈められました。
今回はライフジャケットを着けていたからよかったものの、未着用だったらと思うとゾッとします。
もっと沈んでいたでしょうし、沈んだ先で岩などや川底の変わった地形に引っかかってしまったら、上がってこれないでしょう。
深い所でボディエントラップメントになる可能性もある。
ダウンストリームは、水深が深いエディライン上で発生する可能性が高いですが、水面からはなかなかわからないので、ライフジャケットを必ず着用し、むやみに深みにいかないようにしましょう。
川の危険は事前に勉強しておきましょう。
⑦川を流れる遊び方をするならヘルメットも
川遊び中のヘルメット。これは遊び方にもよるので、絶対ではないですが被っていた方が安全なのは間違いなです。
特に河原や岩場で滑ってこける可能性が高い子どもには、ぜひ被せてあげてください。
川での(特に流水での)アウトドアスポーツである、ラフティングやカヤック、リバーサップなどはヘルメットが必須です。
これはなぜかというと、川で流されながら水中や水面に出ている岩に頭をぶつけた場合の衝撃はかなり強く、大怪我に繋がるからです。
僕もカヤック中に過去2回は強烈に水中の岩に頭をぶつけたことがあります。そのうち1回はヘルメットが割れました(※ヘルメットは、一定以上の衝撃が加わると割れるようになっていて、割れることで頭への衝撃を和らげます。)
これはカヤックで瀬を下っている時、ボートコントロールをミスして沈(ひっくり返ること、頭が水中にある状態)し、そのまま流されながら水中の岩にヒットしました。
猛烈に痛いです。
もちろん、カヤック中じゃなくても頭を打つ可能性はあります。
川を歩いていて、滑りやすい岩に滑って転んで頭を打つこともありますし、浮き輪や浮き具で流れて遊んでいる時に、ひっくり返って水中の岩で打つこともあります。
流れがある川での遊び方が多い方や、お子さんはヘルメットがあれば安心ですね。
以上です。今回は僕のお恥ずかしい失敗集でしたが(笑)、いかがだったでしょうか?
この記事を読んでくださった皆様の川遊びが、少しでも安全に楽しくなってくれたら幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
もっと詳しく知りたい方はこちらをどうぞ!とてもわかりやすいです。
(表紙写真:Yuya Nojiri)
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