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《Deep Red Sugar Saxophonist》第2話

 これは、中学時代に書いたお話です。
 昔使っていたパソコンから、そのままデータを移しました。
 訂正なし、原文ママです。
 途中まで公開しますので、どうか生あたたかい目で見守ってやってください。

(前回のお話はこちらから↓)


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 佼成吹奏楽団の団員たちは、練習を終え家路に着く。
「やっくん、今日は一緒に帰らない?」
 綾子が尋ねる。
「いいよ」
 靖人はあっさりと答えた。
 靖人は、佼成吹奏楽団でセカンドアルトサックスを担当。高い身長、美しい顔立ち。女性団員から人気があった。
 そして、綾子はファーストフルートを担当していた。長く、まっすぐで、美しい茶髪に、細く、白い手。こちらも、男性団員に人気があった。
 
 綾子は靖人の後ろを歩く。綾子の前には、ズボンのポケットに手をつっこんだまま歩いている靖人と、その影があった。
「・・・ねえ、やっくん」
「なに?」
「私が今から何をしても、それを許してくれる?」
「な・・・っ」
 靖人には、言っていることがわからなかった。一体、今から綾子は何をするのだろう・・・・・・
 
 綾子の髪が風になびいた。
 甘いにおいがした。
 同時に、綾子が靖人の背中に飛びついた。

 細い腕が、靖人の首付近に巻きつく。綾子の足は地を離れていた。
 地に足が着いた瞬間、綾子の腕は、靖人の首を絞め上げた。
「綾子・・・く、苦しい・・・・・・」
「じゃあ・・・少しかがんで」
 綾子が耳元でささやく。靖人はゆっくりと膝を曲げていった。首を絞めていたロープが解けていくような感じだった。
 さっきの甘いにおいは・・・綾子だったのか。
「ごめんね・・・しばらくこうさせていて・・・・・・」
 綾子が今よりもきつく、靖人を抱きしめる。時間が止まってしまいそうな気がした。
 二人はしばらく動かなかった。
 どれだけ時間が過ぎたのだろうか、綾子は腕を離した。
「・・・ありがと」
 綾子が言った。
 あたりはもう、暗くなっていた。街の明かりが見える。
「・・・じゃあ、またね」
 綾子は階段を降り、暗闇の中へ消えていった。
「・・・綾子」
 名前をつぶやいてみる。顔が熱くなっているのがわかる。体は汗でびしょびしょだった。
 靖人は深呼吸をした。そして、けっこう高い階段の上から勢いよく飛び降りた。体が宙に浮く。さっきとおんなじだ、時間が止まってしまいそう・・・。月の光が、靖人の影を地面に落とす。靖人は、その上に着地した。衝撃で足が痛む。靖人は立ち上がって走り出した。

 午前零時。靖人は胸騒ぎがした。
 綾子はなんであんなことを・・・それに・・・・・・
 靖人は帰り道のことを思い出す。
 ・・・ありがと
 綾子の声が頭の中に響いてくる。なんだか・・・悲しそうだった。
 ・・・じゃあ、またね
 いつもは「また明日」と言うはずの綾子が、今日は「またね」と言った。
 ・・・本当に、もう会えなくなりそうな予感がした。
 気が付けば、家を出て走っていた。綾子がいつも行く、南走部通りへ。



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