成瀬は天下を取りに行く/成瀬は信じた道をいく を読んでの感想

爆笑問題カーボーイで太田さんが絶賛していたのを聴いて気になり、本屋さんで沢山平積みされているのを購入しました。
本屋大賞も受賞し、かなり話題になっているみたいです。

本を購入しても積読になりがちな私ですが、めずらしく買ってから短期間で読み終わりました。(読み終わってから、このnoteを書くまでかなり期間が空いてしまいました。)
1作目の「成瀬は天下を取りにいく」を読んで、早速続きを読みたくなり、すぐに本屋で続編「成瀬は信じた道をいく」を買い、そちらも購入後すぐに読了しました。
面白かったですし、それに読んでいて前向きな気持ちになれました。

独立した短編が数編入っているかたちで、各話通りの繋がりも少しあるのですが、それぞれ1話完結の話で読みやすいです。
2冊とも1冊200ページくらいだし、文字も大きくて、そのおかげもあり本を読むペースが遅い私でも割と短期間で読めました。

現在出ている2冊は主人公の成瀬の中学生~大学生時代にかけての話(その続きもぜひ読みたい)で、成瀬はいろいろな目標を掲げて(大きなことを言って)は、それに向けて進んでいきます。
成瀬が立てる目標が常人では思いつかないようなことばかりで、しかも、普段の話し方や振る舞いもちょっと変わっていて、行動が読めません。

成瀬と、成瀬に巻き込まれる周りの人たちの物語が面白可笑しくて単純に読んでいて楽しいし、しかも、どの話も読み終わってから少しポジティブな気持ちになれます。

読み終わった頃に、私は早速、バケットリスト(やりたいことリスト)のようなものを作ってしまいました。

私は自己啓発書のようなものは普段読まないというか、むしろ、どららかというと嫌いなのですが、なぜこの小説には簡単に影響されたんだろう、と考えてしまいました🤔
考えてみれば、若い成瀬のユニークな言動と自己啓発書に書かれている既に成功を手にしている人の押し付けがましい教訓みたいなもの(だいぶ私の偏見が入っているかもしれません。すみません。)って、対照的かもしれません。
また、成瀬と同世代が読んだら、大人になって擦れてしまった後で読んでる私とは違う感じ方をするのかもしれません。

学生時代や若い頃は漠然と「何かすごいことやりたい」「すごい人になりたい」みたいな気持ちを持っていたりするものだと思いますが(そうじゃない人も多い気もしますが私はそうでした。)、そういう気持ちを持っていた学生の頃にこの本を読んでいたらどんな気持ちになっていただろう、とか想像したりします。
この本はなんだかプラスの影響を与えてくれそうな気がします。
何かやりたいことをやる為に背中を押してくれたり、変に周りの目を気にしすぎる必要はないことを教えてくれるかもしれません。
かなり売れているみたいなので、きっと学校の図書館とかにも置かれていることだろう、と思うのですが、ぜひ色んな人に読んでほしいです。
普段本を読まない、図書館に行かないタイプの学生でもこの本は読みやすいと思います。

そして、大人になって日々の生活に追われている今でも成瀬から学べることってある気がします。
成瀬は勉強も運動も幼いころから得意で紛れもなく天才だけど、私のような凡人でも成瀬から学べることって多いと思います。
成瀬の凄いと思うところ/個人的に好感が持てるところを挙げてみます。(ここから先は少しネタバレがあるかもしれません。)

目標の決め方。

周りからすれば、なぜそれを目指そうとおもった?となるようなユニークなことを目標にするところが面白いと思いました。
成瀬にも当然何かキッカケがあるんだろうけど、成瀬の言うことはなんだか周りからすると突拍子もない感じです。
周りの目を変に気にしていないから、普通の人なら他人の目を気にして無意識に封印するような自分の気持ちに気付けるのかもしれません🤔

誰かに決められたことや、漫然と目指していることと比べて、自分の意志で決めたことってモチベーションを維持しやすいし、何より目指していて楽しいですよね。
成瀬の行動は自発的にやっていることだからモチベーションを維持できるのかも、と思います。

自分の経験上も自発的にやりたくなったことってやる気を維持しやすいし、伸びるのも早い気がします。
逆に最初に就職した会社で、強制的に読まされた本や、やらされた研修の内容はあまり身に付きませんでした。それは私が素直じゃないだけかもしれないですが‥
何かをやりたいという気持ちを最初から諦めずに大切にするべきかもしれないなんて思ったりしました。

変なこと(他人と違うこと)を極めたりしたら、意外と仕事面とかでも差別化につながることもあるかもしれないとも思います。
自分がやりたいことなら他の何かに役立たなくても、それ自体が楽しいのでそれだけで十分なんですが。

行動に移せるところ

基本的なことだけど、目標に向けて実際に行動するところが凄いと思います。
M-1を目指してコンビを組むために数少ない友人に相方になるのをお願いしたり、観光大使に立候補したり、と行動力が凄い。

悲壮感がない。

大きなことを100個言って、ひとつでもかなえたら「あの人すごい」になるから種をまくことが大事、と成瀬は言っています。
個人的には成瀬の言葉の中で一番これが印象に残ってるかもしれません。
その考え方だから失敗しても落ち込まないらしいです。

成瀬は才能があるだけではなく努力家だけど、なぜだか悲壮感を感じさせません。
成瀬目線の話が少なくて、第3者からの目線で描かれる話が多く、成瀬の心の声は実際にはよく分からない部分もあるんだけど、なんだか凄い自然体で飄々としている印象があります。

普通はなかなかそうはいかないと思います。
努力って、将来やりたい事の為に目の前のやりたい事を我慢する事だったりすると思うので、当然、目の前のやりたい事が出来ないことでストレスがたまります。自分自身の機嫌をとりながら続ける事って結構難しいことだと思います。

私自身、資格試験の為に勉強中心の生活をしていた頃、自分自身も自分の周りにいた受験仲間も合格するのに必死でストイックな分、どこか悲壮感みたいなものがあった気がします。
自分自身を振り返ると、勉強時間確保のために周りの同級生の多くが就職しているなか仕事をアルバイトに留めていることや、失敗したらどうしよう?といった不安等、ネガティブになる要素は色々あり、そのせいでちょっと不機嫌になっていた気がします。

実は今も私の身近に「意識が高い風なんだけど偏屈で不機嫌な人」がいたりして、成瀬はその反対だな、なんて思ったりしています。

目標の為に何かを犠牲にするのは仕方のないことかもしれないけど、そのせいで不機嫌なのを表に出したり、周りの人に負の感情をぶつけたりするべきではないですよね。

自然体で努力ができる成瀬が羨ましい。

試験に限らず、自分が決めたことに縛られて苦しくなったりすることがないようにしようと思いました。

成瀬は才能に恵まれているから、無理をせずとも目標に手が届くというのはあると思うのけど、それだけじゃなくて、物事に対するスタンスが良い気がします。

成瀬のように大きいことをやろうと思っていなくても、人生の時間が限られている以上、現実で誰しも取捨選択は必須だし、できないことを嘆いていても仕方ないですからね。
「出来たら凄い」くらいが良いのかも、と思ったり。

成瀬はきっと自分を変に追い込んでないから失敗しても落ち込まない。
あと、物語の途中までスマホも持っていないし、自制するまでもなくもともと雑念がなくて、その分やりたい事をやる時間が多く持てるのかもしれません。

基本的に善人なところ。

成瀬は変人だけど、正義感が強く、基本的に善人だと思います。
地域のためにパトロールをし、自殺しようとしている人がいれば止めようと説得に入るし、漫才やイベントで相方がミスをしても責めることもありません。

また、我が道を行っているからといって、他人への関心がないわけではなく、他人に対してもするどいアドバイスをしたりするし、友人の島崎のことを素直に「すごい」とも思っている。
変人だけど、決して独りよがりではない。
だから、身近な人は深く接するうちに成瀬を素直に応援したくなるのだと思います。

地元愛が強い

成瀬の行動ややりたいことは地域に根差したものが多いです。
漫才コンビのコンビ名にも地元名が入っているし、観光大使も務めるし、地元愛が強いと思います。

自分も沖縄で生まれ育って、自分の地元を応援したい気持ちが少しあるので(みんな少なからずあると思うけど)、なんか親近感があるというか、好感が持てます。
そして、この作品を読んでいると滋賀に興味が湧いてきます。

以上、成瀬のすごいと思うところを5つ挙げてみました。

🚢

無理して自制している風ではなく、自然体でわが道を行く成瀬は変人ですが、そこになんだかリアリティがあります。
なんかキャラが一貫しているというか、本当にこんな人いそう、って感じます。

成瀬の交友関係があまり広くないのもリアルな気がします。
良い悪いではないですが、飲み会とかにやたら時間を取られてると自分のやりたいことをやる時間ってなかなか無いですからね。
うまいこと両立してる人もいるとは思いますが。成瀬の言動はMOROHAの革命の歌詞に出てくる言葉「居酒屋だけの意気込み」の対極に位置する気がします。(ちなみにMOROHAさんのこと詳しくはないけどこの曲は好きです。)
この本を読みながら、対照的なものとして、なんだかこの歌詞が頭に浮かびました。

それに、ネットやテレビに影響されすぎないからこそ、ユニークな目標が生まれるし、地元を大切にするのかもしれないとも思います。
きっと、自由にやらせてくれる親や、理解のある友人に恵まれてるのも大きいですね。

架空の人物について何をここまで熱心に考えているんだと思われるかもしれないですが、それだけとても面白い小説でした。




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