JASM（TSMC熊本）は「水のリサイクル設備を入れる予定がなかった」とか言い出した深田萌絵さんの話を検証しました。
深田萌絵さんがまたおかしなことを言い出しました。
まずは何を言っているのかを確認しましょう。
■深田萌絵TV（2023-09-02）
このYoutube動画の書き起こしをnote記事にまでしていました。
“■ 不利になれば突然リサイクルすると言い出す
テキサスインスツルメンツでは、日本で工場を運営する場合に、水を汲み上げ、汚染された水を浄化し、浄化した水をまた工場で使う事で９５％の水を再利用し、非常にエコな工場を作っている。
このように大量に水を汲み上げなくても工場は稼働できる。 菊陽町のＴＳＭＣ工場は毎日、１万２０００ｔの水を汲み上げ、大量の汚染水を垂れ流し、排水処理をするための下水道を拡張し始めたが、まったく企業は費用を負担せずに、皆さんの血税が注がれて中国人の尻拭いをさせられるのだ。
ここに来て突然ニュースが、ＴＳＭＣが地下水の採取量を3割削減して１日８５００tにし、高度な水処理設備の導入で、水のリサイクル率は７５％に達する予定と報道し始めた。
１万２０００ｔの水を７５％リサイクルして、何故３割しか削減できないのか。計算が合わない。本当に水の汲み上げ量を減らすのかどうかも分からない。きちんと証拠を出せと求め、７５％本当にリサイクルする気があるのかを確認し、リサイクルする設備は、何処の会社の設備を何時導入するのか明確にしたい。
なぜ７５％だけなのか、テキサスインスツルメンツのように９５％リサイクルをして１万２０００tもの水を使わないようにする事も出来るはずだ。
最初はリサイクル設備を入れる予定が無かったはずだが、なぜいきなり付け加えたのか。本当にその設備が工場の敷地内にきちんと設置されるのか。開示請求を求めなければいけない。 ”
もうね、めちゃくちゃ。
深田萌絵さんの話を要約すると
深田萌絵さんのYoutubeでの発言を要約すると、こうなります。
①突然（つまり2023年9月頃になってから）、高度な水処理設備の導入で水のリサイクルは75％に達する予定と報道し始めた。
②１万２０００ｔの水を７５％リサイクルして、何故３割しか削減できないのか。計算が合わない。
③JASM（TSMC熊本）は、水のリサイクル設備を入れる予定がなかった。
さて、この深田萌絵さん発の情報は正しいのでしょうか・・・？
さあ検証してみましょう。
まずは、最近のTSMCの水使用量についての報道を確認します。
現在、8月31日の地元紙の熊本日日新聞の記事はプレミア会員限定で読めません。
その為、9月1日の読売新聞の記事を確認します。
「ＴＳＭＣ熊本工場、地下水採取量を「３割抑制」…環境保全へ当初計画見直し」 （2023/09/01 15:11九州発けいざい）
半導体受託製造大手の台湾積体電路製造（ＴＳＭＣ）は３１日、熊本県菊陽町で建設中の新工場で使用する地下水の採取量を見直し、１日あたり約８５００立方メートルに抑える方針を明らかにした。使用後の水の７５％を再利用するなどして、当初の計画量より約３割減らす。
ＴＳＭＣ側が８月２４日に県に申請した地下水の採取計画に盛り込んだ。当初は１日あたり１万２０００立方メートルを予定していたが、水処理設備を見直したり、製造工程で必要な水量を精査したりした結果、３割削減できると判断した。
JASM（TSMC熊本）は当初1日あたり約12,000㎥の地下水採取を計画していました。
しかし、2023年8月24日に熊本県に提出した地下水の採取計画では、
1日あたり約8,500㎥に抑える方針に修正したという事ですね。
さて深田萌絵さんの話を検証していきます。
検証①突然（つまり2023年9月頃になってから）、高度な水処理設備の導入で水のリサイクルは75％に達する予定と報道し始めた？？？
実は、この75％の話は昨年、2022年10月16日に西村経済産業大臣がJASMの視察をした際に、JASMが上方修正していました。
どのくらい地下水を採取するの？ 工場排水や水のリサイクルは?? 経済記者がイチから解説「もっとよく分かる」TSMC⑤ 熊本日日新聞 2023年2月6日
昨年4月にJASMが菊陽町と立地協定を結んだ際は、工場で使用する水の70%以上をリサイクルするとしていましたが、10月に西村康稔経済産業相が建設現場を視察に訪れた際の資料では75%以上に「上方修正」しました。
熊本日日新聞のプレミア記事は内容が確認できないので、2022年10月16日の西村経済産業大臣JASM視察の際の報道でこの75％への修正について報道していたかはわかりませんが、
少なくとも、2023年の2月6日の記事で「70％→75％」へ上方修正していた事は報道されていたという事です。
それを、JASM（TSMC熊本）の水に関して現地でもギャーギャーと騒いでいる深田萌絵さんが把握していないなんて事であれば、情報に怠慢すぎますね。
検証②１万２０００ｔの水を７５％リサイクルして、何故３割しか削減できないのか。計算が合わない？？？
これはシンプルに計算が間違っています。
報道内容を再度確認しましょう。
使用する地下水の採取量を見直し、１日あたり約８５００立方メートルに抑える方針を明らかにした。使用後の水の７５％を再利用するなどして、当初の計画量より約３割減らす。
当初予定 1,2000㎥
修正後 8,500㎥
削減割合を確認したいなら、【修正後の計画量】を【当初予定の計画量】で割ればいいんです。
8,500（修正後）÷12,000（当初予定）＝0.7083333333333333
はい、おわかりいただけましたか？
おおよそ7割ですね。
つまりおよそ3割削減されているということです。
計算あっていましたね。
何故【当初予定の計画量12,000㎥】から【75％リサイクル】をしてしまうのか・・・
本当に謎です。
算数の文章問題で、無関係の数字に惑わされて計算式を間違えてトンチンカンな答えを出しちゃう人ですね。
検証③JASM（TSMC熊本）は、水のリサイクル設備を入れる予定がなかった？？？
深田萌絵さんの話では、
・最初はリサイクル設備を入れる予定が無かったはずだが
・今になって突然リサイクルを言い始め
・いきなりリサイクル設備を付け加えた
・本当にその設備が工場の敷地内にきちんと設置されるのか
という事なんですよね。
何を根拠にリサイクル設備を工場に入れる予定がなかったなどと断言しているのか謎過ぎます。
半導体製造について調べれば、半導体工場には下水へ流す前に工場内の排水処理施設で、水に含まれる有害物質を法律等に則った基準値以下している事はわかります。
というか、半導体の製造工場に関わらずどんな分野の工場でも工業排水は、下水に流す前に排水処理をしています。
昭和の高度経済成長期の公害、あの時代のやり方を現代の工場ができるとでも思っているんでしょうか。
だとしたらアンポンタン過ぎますね。
半導体工場では水や薬液は超重要な要素です。
半導体工場には、超純水製造設備、排水処理・リサイクル設備、有価物回収設備などの水処理の設備が大きなプラントとして工場内にあります。
フッ酸や、銅やレアメタルなどの有価金属などは回収してリサイクルしています。
※例：水処理大手のオルガノのサイト
オルガノはTSMCやソニーの半導体工場に水処理を提供している日本の水処理大手企業です。
オルガノの代表取締役へのインタビュー記事を見つけたのですが、
大型の半導体工場では水処理装置はサッカー場の規模になるそうです。
JASM のある菊陽町の議会が2023年9月に台湾を訪問した際のTSMC研修報告が議会だより117号にUP されていました。
それによると、工場から排出された水は数十種類に分けられて、新竹のサイエンスパークのTSMC工場の水処理施設の面積はサッカー場6面分もの大きさだそうです。
超純水の製造から排水処理まで、半導体製造と水処理は切っても切れない関係だという事を覚えておきましょう。
半導体製造工場にリサイクル設備を入れる予定がないなんて訳がないし、もちろんJASMもそんな事言っていません。
「JASMは最初リサイクル設備を入れる予定が無かった」というのは、深田萌絵さんの妄想ではないでしょうか？
逆にリサイクル設備がない半導体工場がどこにあるのか、深田萌絵さんに教えてもらいたいですよ。
あるんだったらね。
JASMの水のリサイクルについては、
昨年2022年3月1日の時点で服部毅先生の記事で紹介されています。
TSMCが熊本工場(JASM)の計画概要を公開、1000名強の新規雇用を計画
掲載日2022/03/01
熊本県企業誘致連絡協議会主催のオンラインセミナーが2月28日に開催され、TSMCとソニー、デンソーの合弁会社であるJapan Advanced Semiconductor Manufacturing(JASM)の代表取締役社長を務める堀田祐一氏が、JASMの概要を明らかにした。
（中略）
堀田氏は、JASMの課題として以下のような事柄を挙げて、地元自治体やサプライチェーン関係者の協力を求めた。
採用育成：操業開始に向けた短期間の人材獲得と稼働開始後の継続的な人材獲得が必要
交通：現在、近隣の多数の工業団地へマイカーによる通勤時に交通渋滞が生じており、JASM操業開始までに対策が必要
住宅：台湾から300人および国内からの移住者への住宅確保
宿泊・食事:工場建設時および装置立ち上げ時の取引先対応
教育：台湾から赴任する社員の家族の教育機関(インターナショナルスクールなど)
調達：国内調達優先で5割はそうしたいが、調達先の確保について商談中
輸送：国内外からの調達材の物流の確保
環境：環境に十分配慮した工場設計の実施、特に水回収・リサイクルシステムの導入、地下水涵養の取り組み
また、栗田工業がJASMでの新規排水処理設備/廃水回収設備建設工事の施工管理と試運転調整の求人も確認できています。
つまり…
・2022年の2月28日にJASMの代表取締役である堀田氏が水のリサイクルについて言及しているし
・「最初はリサイクル設備を入れる予定が無かった」なんて情報のソースがないし
・栗田工業がJASMでの排水処理設備/廃水回収設備建設工事の求人を出しているし
・水のリサイクル設備のない半導体工場を作ると思っている時点でど素人より酷いただの妄想
・「本当にその設備が工場の敷地内にきちんと設置されるのか」とか、最初から巨大な水処理プラントが入る予定なのに何言ってんだコイツ案件です。
大量のデマ・歪曲と玉山氏への記事執筆依頼
このnote記事では深く言及しませんが、
深田萌絵さんは「TSMCは台湾で大量の汚染水を垂れ流して環境汚染企業で有名」などというトンデモ情報流しています。
そんな記事はどこを探してもないのですが、実は玉山富士子さんという方が、深田萌絵さんとそのビジネスパートナーのジェイソン・ホー氏が依頼されて、facebookで台湾の環境汚染についての記事を書いたことがあり、そのfacebook記事の内容を「TSMC起因の環境汚染」かのように歪曲して発信していた事実はあります。
玉山さんご本人が依頼された当時のやり取りを暴露されています。
その他、これまでのTSMCの排水に関する大量のデマ、歪曲情報については、↓のnoteでまとめてあります。
菊陽町2023年6月の議会での質疑
菊陽町の議会で、JASMの排水処理についての質疑がありましたので、ご紹介しておきます。
令和5年第2回定例会（録画放送） / 町議会 / 菊陽町https://www.town.kikuyo.lg.jp/gikai/kiji0033875/index.html
菊陽町議会 令和５年第２回定例会 一般質問3甲斐榮治議員 令和5年6月7日（水） JASM（TSMC熊本）の排水処理について 39:20〜https://www.youtube.com/watch?v=iWb_IZlwdig&t=2360s
循環し使用できなくなった汚水には、製造過程で発生した混合物が含まれる。
— 八洲子 (@yascosanwan) September 13, 2023
下水道施設へ排水する前に企業側で水処理施設を設置。
町、条例等の水質基準に適合させる為の水処理を行った上で排水。
処理方法は混合物により異なるが、中和処理、ろ過処理、凝集沈殿処理など。pic.twitter.com/j24Wj4MuT4
台湾TSMCの立地するサイエンスパーク内の浄化センターを視察。
— 八洲子 (@yascosanwan) September 13, 2023
サイエンスパーク内の水質管理は台湾の排水水質基準を大幅に下回る環境配慮の値で実施されている。
TSMCはその排出基準適合の為、自社の1次処理場を設けるなど、水質管理が徹底されていることを実感。pic.twitter.com/kE3yK4Zkzv
TSMCはAWS（Alliance for Water Stewardship）3年連続プラチナ
質疑動画の中で紹介されたように、TSMCは世界中の工場を対象とした持続可能な水利用に関する国際承認AWS（Alliance for Water Stewardship）において、最高位であるプラチナを3年連続で取得している世界で唯一の半導体企業です。
https://esg.tsmc.com/en/update/greenManufacturing/caseStudy/60/index.html
自治体側（熊本県・熊本市・菊陽町）の監視体制
JASM工場で処理された水は下水道に排出されるが、自治体の監視・管理体制について紹介されている記事がありました。
・菊陽町が工場に立ち入り検査を実施
・県が下水道施設で水質管理
・坪井川に放流されてからは熊本市が水質を監視
という体制になっているようです。
半導体工場の水処理ってどうなっているか、普通の人は知らないですよね。
私もそうでした。
でも調べれば出てきます。
半導体工場には、超純水製造・リサイクル・有価物回収・排水処理まで行う水処理プラントが入っているものなんですって。
業界的には常識の話のようです。
何事も業界の方に話を聞くのは大切ですねー。
そして、半導体工場の超純水製造や排水・リサイクルなどの処理は、日本の企業が担っているんです。
これからも世界で活躍してほしいですね！
半導体クラスタのご紹介
半導体産業は、一般人には謎多き世界です。
でも私はTwitter（X）を通して半導体産業で働いている現役の技術者の方と交流して情報を得ています。
半導体業界にいるくらいだから、基本的にみなさん理系だし頭いい人ばっかりで、最初は話しかけるのもおこがましい…と私も恐れおののいていたのですが、最近はポヨポヨ言っていて一見ゆるそうだし、🦆🍖がずっとブームだし意味わからないですが、まずは眺めてみるといいかもしれません（笑）
その方達はみなさん、深田萌絵さんの半導体関連の話は嘘・デタラメばかりだと言っています。
虚言を撒き散らされて迷惑しています。
まとめ
ご紹介した通り、JASMは排水処理設備を入れる予定がなかったなんて話はとんでもないクソデマです。
なんでこんな幼稚な虚言を信じてしまう人がいるのでしょう。
日本人の情報リテラシーに絶望してしまいそうです。
こんな虚言を鵜呑みにしてしまっていた人は反省してください。
どの業界にも言えることですが、妄想なんだか自分の都合の悪い情報は脳が拒否して受け入れられないのか知らないですが、事実と全く異なる話をしている怪しいインフルエンサーの話をそのまま鵜呑みにして、頑張っている企業や地域を事実と全く異なる話を前提に侮辱するのはやめましょう。
熊本の地下水が心配であるお気持ちは私にもわかります。
監視することは大切です。
でも、変な話をしている人に乗っかってしまうのはやめましょう。
本当に地下水が心配で活動されているのに、デマという異物が混入した状態で活動していては多くの方に賛同されませんし、企業も自治体も相手にしてくれないかもしれませんよ。
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Youtubeでたまーに動画を上げているのですが、以前収益化までいったのですが、動画UPが滞って視聴回数が減少してしまい、収益化剝がされてしまいました(´；ω；`)ｳｩｩ
なので、暇なお時間ありましたら、お好きな動画を再生していただけると嬉しいです！
(1) 八洲子(ヤスコ) - YouTube
最新作はコチラ↓
https://youtu.be/xKGrT--ObnI?si=JRYFYfM8Rvyr9zOb