世界史選択だけど百人一首の話
をします。
私の母は歴女で、日本史の教員免許を持っているタイプの筋金入りですが、
どれくらい筋金入りかというと、
男の子が生まれたら不比等(大宝律令の人)か必勝(三島由紀夫と一緒に割腹自殺した人)、
女の子が生まれたら寧々(豊臣秀吉の奥さん)って名前をつけようと心に決め、
女が生まれたんだけど「女の子は”子”がついてないとダメ」という義父の言葉に反発するも、
蜻蛉日記の作者・藤原道綱母が「寧子」という名前だったという説があり(お父さんが藤原倫寧なので)
ダブルミーニングでいいじゃん!文学少女に育てよ!といって娘に寧子(やすこ)と名付けるような人でした。その娘が私です。男じゃなくてよかった。不比等はさすがに嫌だ。
ちなみに藤原道綱母はマジで男運が悪くて、蜻蛉日記は基本その愚痴の日記です。それについては秀吉の妻の寧々も大概なので、マイマザーにはマジで冷静になってほしいですが、百人一首にも、
なげきつつひとりぬる夜のあくるまはいかに久しきものとかは知る
という短歌が残っています。
旦那が愛人を作って、なかなか家に帰ってこないので、イラついた寧子さんは、旦那が帰ってきた時に、わざと門を開けずに外で待たせたんだそうです。
入ってきた旦那に「おい、待たせんなよ(笑)」と言われた彼女が、菊の花を渡し、「あんたが帰ってくるっていうから待ってたのに、帰ってこなかった時の孤独な気持ち、あんたにわかる?=私だって待ってんだけど?」という意味のこの歌を詠んだ、というお話です。
…思い返すと私も同じようなことをしたことがあるような気がするのでぞっとしますが、
要は今も昔も、みんな考えていることはあまり変わらなくて、そういう時に「浮気するな殺す」ではなく、いかに機転のきいた一言を言えるか、というのが、男も女もひとつ評価ポイントだった、という話です。
多分誰もが学生時代に授業でやらされている百人一首も、それぞれの短歌にエピソードがあって、それが結構面白いし、
歴史の面白さって、そういうのを見ていると当時の人になんとなくシンパシーを感じたりするところなのかな、と思っていますが、
その中で私の一番好きな短歌の話をします。
大江山いく野の道の遠ければまだふみも見ず天橋立
百人一首の60番、小式部内侍の歌です。
小式部内侍は、多分割と有名な和泉式部の娘で、
親に似てかなり和歌の才能があったそうですが、「親の七光りだろ」「ていうか親に書いてもらってんじゃね?」みたいなことを言われがちだったそうです。
そんな中で歌会に参加した時、控室にいた彼女が、藤原定頼に「お前どうせ親に代作してもらってんだろ?ママからの手紙は届いた?」と嫌味を言われて、
「は?見てねえよ」と即興で切り返したのがこの歌と言われています。
すごい教科書通りのことを書くと、
「行く野の道」と「生野(天橋立に行く途中にある)の道」
「文(手紙)も見ず」と「(ママが旅行に行ってる丹後の地を)踏みも見ず」
で掛けていて、即興なのにすごい、という話なのですが、
地名を3つ並べて最後終点の「天橋立」で締めるのも地続き感があってすごいかっこいいし、
その強気な態度っていうか、才女感みたいなものがみなぎっているエピソードに憧れるしシンパシーを覚えて、学校の百人一首大会では、どんなに強い人と当たってもこの札だけは取るという執念を見せていました。
やっぱりいつの時代でも、自分のプライドがにじみ出た、機転のきいたことが言える人でありたいものですね。
さて、そんなわけで、今回百人一首の話をお芝居でやります。私は小式部内侍の役です。
主宰の村岡さんに「誰がやりたい?」と言われたので、間違いなく小式部内侍だと言って上記の話をしたら、
「これはMC漢も認める明確なアンサーだ」
とかいう意味のわからない一言とともに採用されました。ありがとう。
今回はその辺をラップとも絡めながら描きますが、日本語ラップを聴いていて、日本語の妙というか趣に加えて、ラッパーさんのプライドを感じるところがいっぱいあって、
音楽にみじんも興味のなかった自分がこんなにはまれたのは、やっぱり言葉と、各人のバックボーンに魅力があるからなんだな、とひしひしと感じます。
やっぱり人は言葉を尽くして分かり合おうとしてきた生き物なのだなと改めて思うので、そんな歴史も含めて、いろんな人に楽しんでいただけたらなと思います。きてね。
定時残業Z第4回公演「HEIANMCZ」
ネオ平安
忌わしい呪いを受けた一つの魂は
ストリートと雅(ミヤビ)を
世代を超えて蝶のように滑空する
日本の1000年の時を接続する、定時残業Z最大の試み
藤原一族、物の怪、女官にイケメンが大挙してライミングする
一大平安ストリートラップバトル絵巻
ちはやふる絵夢師(MC)たちの生きざまがここにある
定時残業Z 第4回公演「HEIAN MCZ」
作・演出:村岡正喜(定時)
【公演日程】
2017年1月7日(土)〜9日(月・祝)
7日 19時半
8日 14時 / 19時
9日 13時 / 17時
【場所】
ザムザ阿佐ヶ谷
〒166-0001 東京都杉並区阿佐ヶ谷北2-12-21
(JR中央線・総武線 阿佐ヶ谷駅 北口より徒歩2分)
http://www.laputa-jp.com/annai/index.html
【キャスト】
松島やすこ(残業)
村岡正喜(定時)
山畑拓之(現場)
以上定時残業Z
金海用龍(八焔座)
小池惟紀
篠井千賀子
佐溝貴史(正直者達)
柴田周平
白井肉丸
中川慎太郎(劇団ダブルデック)
平平平平
伏田英樹
三谷奈津子
吉川瑛紀(劇団ダブルデック)
【ゲストラッパー】
今回は日替わりでフリースタイルバトルを行うゲストラッパーが登場!
7日:MCKUREI / 押忍マン
8日:Penny / COYASS
9日:BOZ / T-Tongue
【スタッフ】
作・演出:村岡正喜(定時)
舞台監督:川田康二
照明:タカハシカオリ(研究)
音響:栗原カオス
映像:kaniwave(労災)
宣伝美術:サノアヤコ
小道具:定塚由里香
衣装、WEB:松島やすこ(残業)
当日運営:岡村雄太郎
スタッフディレクション:塚原望(教職)
協力:木場すすむ
【チケット代】
前売3000円、当日3200円(当日精算・全席自由)
【ご予約】
http://ticket.corich.jp/apply/78715/001/
【Web】
http://teiji-zangyo-z.main.jp/heian-mcz/
劇中でラップもします。
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