1月25日<001・散文>
25になるかなしみに襲われて、ずっと昔の曲を聴く。幼い頃に好きだった曲は、ひとつの取り零しもなく今でも好きで、それのどこに安心できるのか何ひとつ理解できやしないが、それでもとても安心できると思った。何ひとつ順番通りにいかない、思っていたピイスが何ひとつ嵌らないパズルを与えられている。夜が来ればいずれ日が昇って、また一日が人々を叩きのめす。誰も、誰も、その力に逆らえない。だから私も逆らえない。私は逆らえない。だから誰も逆らえない。目に映ったもの全てを手に入れるなどできないことに一分の納得もいかないまま、昨日が、ひと月が、一年が、十年が、そうやって歳が二巡した。かなしみは三巡目を迎えてしまう。焦燥が思考を濁らせる。憂懼が耳を曇らせ目を煙らせる。白いものが黒く見え、質量ある身体が無機質な虚像になる。身動き一つ取らないで、<わたし>が静かに<わたし>の手を離れていく。指先までに閉じ込められてる<わたし>は、何の亢奮もなく、それを只ぼんやりと見送っている。見送って。霊柩車を見つめる伴侶のように。ただ両手に骨壺を抱える。軽い、軽い、黒い抜け殻を抱えているかつての<わたし>。<わたし>を見つけることしかできない死んだ<わたし>。夜は静かで、それがとてもいけないと思った。このまま<わたし>が、何処かへいくとしたら? そう考えそうになって、そうではないとすぐにわかった。<わたし>からは離れられない。それは、<わたし>が日の光から逆に進むことよりも無意味な祈りだった。思考がだんだんと静謐に、低い温度を伴って、<わたし>のなかへと還ってくる。閑けさを取り戻すかつての<わたし>、<わたし>、霧散する<わたし>を捉まえることができない。いやに音が大きく聞こえる。かなしみのない夜がいいと思う。
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