なすすべもなく星を見ていた日を思い返して

オリオンがまず見えて、そのわずか左にこいぬ座、下方におおいぬ座がある。冬の大三角形が見事に輝くのに負けない光がそこらじゅうに瞬いていた。流れ星もたくさん見たような気がする。ぐるりと首を回したら、視界全部に広がる星々の世界は水平線のようにまるくなく、かといって平面にも見えなくて、感覚はだんだんと吸い込まれるようにおかしくなって、それから二歩も進めばよろめいた。それでも、熱に浮かされたように、目の前の星図をなぞった。指先がシリウスをさがしてゆらめく。吐き出した息が白いのが無性にうれしかった。
星を三度見た。一度は衝動的に。二度目は星図を携帯で確認しながら。三度目は、もっと暗い場所ならよく見えると聞いて。

(2017-11-27)

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samatsu.
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