#066 あなたの脳はアートで癒える
photo:岐阜県多治見市のモザイクタイルミュージアムにて。
忙しすぎる現代人たち
先日、どこかでこんな記事を読んだ。以下、抜粋。
ここ10年間は、特にスマホの普及、行き過ぎた効率性重視の風潮がさらに「生きづらさ」拍車をかけているようだ。
僕を襲った謎の症状
僕自身、ここ10年間ほど割とキツい社会的プレッシャーにさらされてきたような気がしている。33歳以降が特に暗黒の7年間であった(笑)。
※2022年11月現在、40歳)。
この期間、僕はプロジェクトベースで学問や仕事をしており、常に時間とタスクに追われていた。常に焦燥感と闘っていた。キレキレの頭脳を持っているわけではない僕のようなサラリーマンは、プロジェクトを前に進めるため、長時間労働で仕事のクオリティーをなんとか基準以上に保つ、という戦略をとりがちである。
こんな感じで30代を一気に駆け抜けたおかげで、多くの経験値とスキルが身についたことは確かであるが、僕にある異変起きていた。それは、
燃え尽きやすくなってしまった自分。
である。プロジェクトベースで働く方々にはよくあることなのかもしれないが、僕の場合はそれよりも深刻かもしれない。プロジェクトが完了した後に「やりたいことができなくなる」という症状が現れる。
プロジェクトがひと段落したらやろうと思っていたことが、全く手につかないのである。それをやっている自分を想像するとワクワクするのに、だ。
これは、長時間労働により心身に負担をかけたことが一因なので、上司に相談して業務量を減らしてもらうなどの方法で、ある程度は回復する。
ただ、この記事では仕事以外の外部因子に触れてみたいと思う。
芸術に触れることの効能
そこで、この記事のタイトルである、「芸術に触れる機会の減少」ということを書いてみようと思った。
今から7年ほど前、大学院生の時に研究計画書がなかなか書けず、指導教官にそれを相談したことがある。そうしたら、意外なアドバイスが返ってきたのだ。
理系の教授が最も言いそうにないアドバイスをもらい、僕は正直、目がテンになった。きっと教授は、煮詰まっている僕を対話の中で見抜いたのだろう。
僕は言われた通り、市の美術館に行ってみることにした。美術館、いつ振りだろう?なんて思いながら。正直、その後どんなアートを鑑賞し、何を感じたかとかは全く覚えていない。
ただ、美術館に行った後に当時のスランプを乗り越えることができたことは確かだ。
後日、教授に聞いてみた。「なぜ僕にあんなアドバイスをしてくださったのですか?」と。教授もアメリカの大学で博士号の取得を目指していたときに、教官から同じアドバイスをされたそうだ。それ以上、多くは語らなかったが、きっと当時の教授も同じように行き詰っていたのだろう。
脳を能動的に休ませる
思考する力を継続的に発揮するためには、「非生産的な活動」を挟むことが必要なのだと僕は考えている。美術館でなくとも、海に行く、登山をする、キャンプやヨガなど、なんでもよいと思う。
これは僕の個人的な考えだが、映画やテレビなどは却って逆効果になると思っている。スマホをダラ見するなんてもってのほかだ。禁忌である。
必要なのは、ボーっとする時間だ。
僕の経験から言うと、自分の部屋の空間を見つめてぼーっとしたところで効果は薄い。なるべく、美しいものに触れた方がいい。あと、デジタルよりはアナログが良いし、できればイイ香りのする場所がよい。そして静かであること。屋内であれば、照明が落ち着いているところがベストだ。美術館はこれらの条件にすべて当てはまる。
博物館や水族館、動物園でもよいが、子供が集まって騒がしくなってしまう場所は避けたいところだ。
僕は折に触れて、アートを見に行く時間をとるようになった。紅葉を見に山に行くことだって、自然のアート鑑賞である。ジョギングなどの運動も続けているのだが、なんというか、脳を休ませるためには、何かをボーっと眺めるという活動が僕には必要らしいのだ。
20代、30代と違い、40代に突入すると社会的責任が大きくなる。この情報ストレス社会を乗り切るひとつの処方箋が、「アートに触れる」ことだと提案したい。忙しくてなかなか屋外に出られないのであれば、自宅でアロマオイルを焚きながら、ちょっといいスピーカーでクラシックを鑑賞するのも良いだろう。JやKポップ、ロックなどはやめた方がいい。
さらに付け加えるならば、部屋を可能な限り暗くすることをお勧めする。白い蛍光灯は禁忌。LED白熱球に総取り換えすべし。
いま、多忙とプレッシャーで大変な皆様にひと言。
あなたの脳はいま、とっても疲れています。
睡眠だけでは回復しないでしょう。
何かをぼーーーーっと鑑賞する時間があなたを救うかもしれません。
思い切って、目の前の雑事を一旦とめてみませんか?
66日目 おわり。