VCR GTA3に心を奪われる ~小さな恋の物語~ 後編
葛葉さんととおこさんの「小さな恋の物語」ロールについて思うところを書いていきます。
まず驚いたのが同時視聴をしていた文芸トライブの多さ。そう、とおこさんが葛葉さんに「月めっちゃきれいですよ」と言ったとき、「夏目漱石」にちなんだコメントが多数ついたのです。
文芸を愛する人(文芸トライブ)には有名な逸話なのですが、夏目漱石が学校の先生だったころ、生徒が「I love you」を「あなたを愛しています」と訳したところ、「そんなに直接的な言葉で日本人は愛を伝えますか? ここは『月がきれいですね』くらいに訳しておきなさい」と言った、という逸話があります。
気をつけなければならないのはこれはあくまで逸話で本当に漱石がそう教えたかは疑問視されていて、今で言う都市伝説みたいなモノだと考えてください。
ただ、この逸話の出来があまりにもいいので、漱石がそう教えたと今でも語り継がれているのです。ですがが、あくまで真偽不明なので伝説のたぐいだとお考えください。
しかしながらもはやネットミームのようになっているので、「月がきれいですね」と異性に言うと、それは「わたしはあなたを愛しています」という意味に受け取る人も多数いるのです。
そして実際のところ、「月がきれいですね」と言いたくなる異性は、好意を寄せる異性なのではないのでしょうか。
自分のレベルで考えてください。嫌いな人からいきましょうか。その人とたまたま月がかかる夜、二人で一緒にいるときに「月がきれいですね」って言いますか?
わたしは言いません。
レベルをあげていきましょう。仲の良い友だちだと思っている異性と二人でいるとき、同じシチュエーションで「月がきれいですね」っていいますか?
微妙ですね。言うかもしれませんが言わないかもしれません。
最後に同じシチュエーションで好意を寄せる異性に「月がきれいですね」って言いますか?
わたしは言いますね。言いましたし。
このようにこの漱石の伝説はほんとうによく出来ているのですよ。
和歌でも恋愛のモチーフとして月が多様されています。1000年以上の時を超えて、月は恋愛と密接な関係を持っていると言えると思います。
今回、このVCRGTA3「小さな恋の物語」においても月は重要なモチーフとなっています。これについては後述します。
この物語は女性の恋愛観についてたいへん学びが多いモノとなりました。
よく男性の恋愛経験は別名で保存され、女性の恋愛経験は上書き保存だと言われます。男性は初恋から現在にいたるまでの恋愛遍歴を引きずります。女性は違う相手と巡り会った瞬間上書きされるので昔のパートナーとの記憶を消し去ります。「女々しい」という言葉ありますがこれ逆ですね。女々しいのは男のほうです。だから今のパートナーの過去なんかも知りたくなるのです。女性は男性の過去など気にしません。今に生きるのが女性だと思います。
これ、どうしてそうなのかと思っていましたが、とおこさん演じる救急スタッフの女性の動きを見てひとつの仮説が立てられました。
女性の恋愛は情報量が多すぎる。
男性の恋愛にたいする情報量はUSBメモリに入るくらいなのですが女性はHDDやクラウドストレージを使わないといけないくらいの情報量があると感じました。
恋愛にたいする単位が細かい。男性はデジタル時計の時間くらいの単位ですが女性は1/10秒まで計測できるストップウォッチくらいのきめの細かさがあるなと感じました。これだけの情報量があるのです。恋愛するたびにストレージに別名保存する余裕などありません。上書き保存するしかありません。しかし男性はたったの数メガしか情報量がないのでどんどん別名保存できてしまいます。
「今日はなんの記念日か知ってる」という悪魔のような質問をするのは女性です。男性はどんぶり勘定でしか記憶していないのでそんなの覚えている訳がありません。
今回の「小さな恋いの物語」においても、とおこさんは葛葉さん、そしてリスナーに対して細かい符丁(隠されたメッセージ)を送ってくれていました。
気がついたところだけを書いていきます。もしかしたらほかにも符丁が眠っているのかもしれません。
まず大前提これはVCRGTA3において演じられた物語です。葛葉さんととおこさんファンの中にはこの物語について言及されることに忌避感を感じられる方もいらっしゃるでしょう。いますぐブラウザバックしてください。読まなくてもOKです。
では順におっていきます。
【 #VCRGTA3 】 烏合の若い衆 【 ストリーマーグラセフ 】
2:10:03
VCRGTA3の3日目です。
葛葉さんとおこさん人質チャレンジ開始(1stチャレンジ)
ここで大事なのは葛葉さんが用意したトークデッキですね。
1 好きな食べ物カード
2 好きな季節カード
好きな食べ物は カレー
好きな季節は 冬
というカードが返されました。
2枚目のとおこさんから返されたカード、「冬」はこの物語のベース、または主旋律となりました。
同じくVCRGTA3の3日目。2ndチャレンジが行われます。
ここで、葛葉さんととおこさんは西海岸を車で行き来します。
ここでとおこさんの「月がきれいですね」トリガーがひかれます。
とおこ
「月めっちゃきれいですよ」
画像を見ていただければおわかりだと思いますがここは最終日のライブ会場の上にかかる月を見ているのです。
最終日
ライブ会場にテレポートするとおこ。
会場を見て
「ここかぁ」
07:23:25あたり
このときとおこさんは3日目の葛葉さんとのドライブを思い出していたと解釈します。とおこさんはしばらくこの場所に滞在し、写真を撮っています。葛葉さんとの想い出に思いを馳せていたのだと思います。なぜ仲間が待つ会場にすぐに走っていかなかったのか。その答えがこれだと思います。
【 #VCRGTA3 】 新生カラスゼア 【 ストリーマーグラセフ 】
2:39:20 あたり
とおこさん たまたま私服を着ている(伏線?)。
気を利かせた先生がとおこさんを人質としてつかまえたとき、たまたまとおこさんは私服を着ていました。
最終日、ライブ会場へと向かうとおこさんは私服にわざわざ着替えました。
そう、最後に葛葉さんと出会った姿に着替えたのです。
と読むこともできますがもっとマシな解釈があります。
その前にこの先生がとおこさんを誘拐してきたとき、前打ち合わせがあったのではないかという疑念があります。わたしが見逃しているからだけかもしれませんが。
なんか二人のやりとりが変です。先生はとおこさんをむかえにいくことを予告していませんか? もう一回見直しますか。
もし予告していたとするならば、とおこさんが私服だったことに意味が出て来ます。
無事銀行強盗は終わり、病院までとおこさんを送る車内はもう阿鼻叫喚で葛葉さんと先生がとおこさんを詰問する流れだったのですが、このときとおこさんが「雪だるま」について言及します。すると葛葉さんのトーンが下がり「覚えてくれていたんですね」とモードがやさしくかわります。
これをとおこさんは認識しました。意中の男性は自分との思い出に対して繊細に反応することを。
病院にとおこさんを送り届けた後、葛葉さんはとおさんに、
「また ね」と言います。
そして最終日。物語はいよいよ終盤です。
ライブを待つ会場でとおこさんはやや挙動不審でした。救護チームの輪から離れ、単独行動をしていました。
お着替えをして、恋する男性と同じ時間を過ごしたかったのだとわたしは解釈しました。
葛葉さんはたびたびとおこさんに「医療チームは大変ですね」「お仕事がんばっているんですもんね」と言っています。それは葛葉さんがとおこさんの時間を奪っているという引け目から出た言葉でしょう。申し訳ないと。
これを受けてとおこさんが私服に着替えたのだとわたしは解釈しています。つまり、
「今わたしはオフですよ」という符丁を葛葉さんに伝えるために。
葛葉さん視点ではほとんどとおこさんを目で追っていません。こういうところなんですよね…。とおこさんはあきらめたのか医療チームの制服に着替えてしまいます。悲しかった。
物語の最終盤、とおこさんは渾身のメッセージを葛葉さんに送っています。
最強になったのを見れて良かったです。お疲れ様でした。とても楽しい時間でした。
ギャングの皆さんもえらいです。お疲れ様でした、ボスさん。
雪だるま見れてよかったです。また。ね。です!
おわかりでしょうか。最後の最後にとおこさんは、「わたしはあなたと過ごした時間をよく覚えていますよ」という符丁を投げかけます。雪だるまのことも書き、符丁の重ね書きまでとおこさんはしています。
葛葉さんはとおこさんの「また。ね。」に気がつかなかったのかもしれません。6日目に葛葉さんがとおこさんに投げかけた言葉、「また ね」を復唱していることに。
それはとおこさんの「葛葉さんとの出来事を大切に覚えていますよ」、という符丁であったと解釈します。
同時に葛葉さんが「雪だるま」のことを覚えていたと言ったら喜んでくれたから、また葛葉さんが喜んでくれるかな、という思いものせて。
葛葉さんがそれに気がついたかどうはわかりませんが、葛葉さんはとおこさんに会うために走り出します。おそらくとおこさんが葛葉さんに送った雪の写真がトリガーとなったのでしょうけど。
最終日、とおこさんは単独行動をしています。そこで月を見上げる印象的なシーンがあります。ここでとおこさんはリスナーに対してなにも語りません。ただ月を見上げるだけです。
もう十分ですよね。このときとおこさんは葛葉さんと見上げた月を回想していたと解釈します。なんとロマンチックな。
偶然なのですがこのとき葛葉さんも同じ月を見ていました。素敵な物語です。
若き医療スタッフにめばえた小さな恋の物語。とおこさんが実行したのは「あなたと過ごした時間はとても楽しいものでした」と伝えることのみ。葛葉さんがそれを喜んでくれたから。おそらく彼女のプランの中に、ライブ会場において私服に着替えてきました的なメッセージを伝えたかったのかも。そんな直接的な言葉をとおこさんは選ばないと思いますが。たとえば「あ、今着ている服、最後に葛葉さんに誘拐されたときの服と一緒だ!」とか。そのプランは実現することはありませんでした。
取り交わされる言葉の上ではそうかもしれませんが本心は、
「わたしは今、オフですよ」でしょうね。
舞台袖でひっそりと着替えるとおこさんにわたしは涙しました。葛葉さんをひとりで連れ出す勇気。もちろんないですよね。そこにキューピットでもいれば、なにかアクシデントが起こりたまたま二人きりになる情況があったとすれば。とおこさんはそれに賭けたのかもしれません。いや葛葉さんがとおこさんの服装の変化に気がつくような男やったらなぁ。でもまあ女性の方々、男ってこんなもんでしょ。なんにも気がついてない。ヘアスタイル変えてもなんにも言ってこないパートナー、いたでしょ。または現在進行形でいるでしょ。気がつかないんですよ。男性が持っている「恋愛物差し」のメモリは10m刻みくらいですよ。女性のメモリは1mm刻みくらいありますが。ここで葛葉さんを責めることはわたしにはできません。責めたけど。わたしは「あーもう葛葉気がつけ!!」と思っていました。でこっそり着替えてしまうとおこさんの姿に涙。
とおこさんは意を決したのか雪景色の写真を葛葉さんに送ります。
とおこさんは雪景色を写真におさめていましたからもっと前に葛葉さんに送れたはず。でも最後の最後になって写真を送るのです。あきらめたのでしょうね。切ない。早く気がつけバカ葛葉。
そこからの解釈はいりませんよね。
ようやく葛葉さんはとおこさんと交わした約束を思い出し、走り出します。
とてもとても繊細な物語でした。ヒロイン・ヒーローとも多くは語らない行間がたっぷり空いた物語でした。だから解釈のしがいがあり、文学的ですらありました。
とおこさん視点でばかり書きましたが葛葉さんについても指摘をしておきたい点があります。もうどこかはメモしていませんが、1stチャレンジ時に交わした好きな食べ物と好きな季節については葛葉さんは覚えていて、どこかの日で葛葉さんはカレーがうまいって仲間たちに言っています。また、同じくとおこさんと交わした免疫の話も、メンバーたちとの会話の中で発言しています。葛葉さんもとおこさんとかわした話の内容を「印象的」に覚えていたのです。
これは「鴉」の若きボスが、医療チームの若きスタッフにわずかではあっても恋心があったのだと解釈できるとわたしは思っています。
文学的といえば、
6日目
【 #VCRGTA3 】 新生カラスゼア 【 ストリーマーグラセフ 】におけるイブラヒムさんとの即興劇は、
ローレンさんは駆けつけたが間に合わず、セバスは死んでしまった。
ローレンさんは現場に急行していたのだ。
というものでした。
この「鴉」0の物語が綺麗に「小さな恋の物語」のメタファーとなっています。現場に間に合わなかったローレンさんは、最後の葛葉さんの姿とダブります。即興劇の神様が描いたメタファーですね。これもまた文学的でした。
VCRGTA4において、ことあるごとにお二人はこの「小さな恋の物語」について言及されるでしょう。でもお二人はそれを気にしつつも新たなロールを演じられると思います。
おそらく、この二人の物語には続きはないでしょう。このまま終章でいいと思っています。美しい物語でした。
葛葉さん、とおこさん、ありがとうございました。
この稿の終わりはお二人のお言葉をお借りしましょう。
「また。ね。」