空調衛生設備は3種のラーメンである。【後編】
前記事「なぜ僕らは空調衛生設備にぶちぎれているのか。」では、空調衛生設備について全く理解できないことに対しての苛立ち、なぜ理解できないか、どこが理解できないかの解明が目的であった。
設備設計者の説明をいくつか読んでみても、(おしゃもじさんのchannelもその例にもれず)、体系的に理解したいという僕らの希求に対し、ついぞその希みはかなわなかった。
ひとつ注意したいのは、
この話は完全な初学者、イチから勉強する人には向かない可能性がある。
一橋大学教授の田中拓道氏がリベラルという言葉について調べた際、その使われ方の混乱ぶり驚いたというが、それと同じで空調衛生設備の煩雑さを理解したのち、その煩雑さに辟易した頃に、この記事を読んでいただけると何か役にたつのではないかなと、思う。
第四章では、空気調和設備について体系的に理解していただく。ここでは細かい説明は省略し、大きな捉え方(関西風に言うと"とらまえかた" 笑)を説明する。
第五章では、前の章では説明しきれない重要な説明をする。このnoteでは限界があるので、参考になるページを紹介することで補う。
第六章では、我々の理解を阻んできた箇所について明らかにし、煩雑な彼らを許し、明日の空が、今日よりも晴れることを約束する。
第四章 空気調和設備はラーメンである
結論から言うと、空気調和設備はラーメンと似ている。
急に何よ!と思われるかもしれないけど真面目です。(食べ物のラーメンのこと。ドイツ語で額縁を意味する"ラーメン"ではないよ。)
「ラーメン」について全く知らない外国人に、それを説明することを考えてみてほしい。
①まず麺類であることを説明し、麺(中華麺)と、スープと、具材(メンマ、など)などその材料を言うだろう。
②そして、ラーメンにも種類があって豚骨ラーメン、味噌ラーメン、塩ラーメン、醤油ラーメンなどがあることも説明するのであろう。
さて
問題の空調衛生設備を説明するときも上のようにラーメンの説明に合わせてその概念を説明することができる。
①空調衛生設備もそれを構成する材料があって。熱源設備、空気調和機、(熱搬送設備)、(換気設備)、で構成される。
②そして、空調衛生設備には種類があって、中央熱源と個別熱源に大別できるのさ。
はい。これ以上でもこれ以下でもない。
Actually, 個別熱源には熱源設備や空気調和機という言葉を使わないのだけど、そんなことは今はどうでもいい。いちいち難しくするな。
補足は第五章で書くとして、
空気調和設備はラーメンである。設備設計者が、我々に空気調和設備を説明しようとしたときに困る理由も、ここにある。
「ラーメン」の概念を全く知らない外国人に説明するの、難しいよね。いろんなラーメンがあるもんね。
では次。
第五章 ヘッダー
この章では、我々の結論「空気調和設備はラーメンである」を、我々自身が反証できるよう、そこに至る重要事項を羅列する。
まずは空気調和設備の全体像を示すメモを共有する。(筆者作成)
さて上記メモを見ると、
前章に書いた通りのことが書いてある。
①熱源設備、空気調和設備、(熱搬送設備)、(換気設備)で構成される。
②中央熱源と個別熱源に大別できる。
そして、下にはその具体的な内容についてのメモがある。
ここで注目してほしいのは、★が3つ付いていることである。
そして
「中央熱源」の下に2つの★があり、
「個別熱源」の下に1つの★がある。
まずはこれが重要である。2つと、1つ。合計3つだ。簡単だ。
中央熱源と個別熱源っていうのは「種類」なので、ラーメンでいうと「味噌ラーメン」「塩ラーメン」にあたるんだったよね。
このように、わからなくなったらすぐにラーメンの話に戻って考える。
ここまで話してから上の記事を読むと、すっと理解ができるのではないかな。と、思う。
さっき書いたように、空気調和設備って「2つと、1つ。合計3つ」なんだよ。だから上に貼ったページの説明でも、3種類の話をしてるでしょ?
ただ、3つを並列に並べているのが、甚だ問題だ。そこがわかりにくくしている原因でもある。
★の3つは並列ではないですよ。「2つと、1つ。合計3つ」です。
一回で理解する必要はない。
何回も読んでほしい。
次に、中央熱源と個別熱源って何が違うの?という話。それを明確に説明しているのが、YouTuberの「おしゃもじ」さんだ。前回の記事で少しディスってしまったが、ごめんなさい。
「中央式空調 part①」たのしい設備講座 第2回
という動画の中央熱源の説明が秀逸ですので見てほしいです。
この動画に出てくる、「機器を組み合わせて大きな一つのシステムをつくる」というフレーズは重要で、理解の助けになる。また、なぜそのようなことができるかというと、水を冷媒として使っているためである。(5分35秒~)
また、ヘッダーの概念を説明してれたことがとてもわかりやすい。
ヘッダーとは金属製のタンクであり、下記に写真を載せる。一次側で作った冷温水をここでまとめて、2次側に送るのである。
この章では、空気調和設備の概要についてのメモを共有した。また、補足として2つの参考ページを共有した。ヘッダーの概念が重要であることを示し、中央熱源方式は「機器を組み合わせて大きな一つのシステムをつくる」という特徴があることを説明した。
空気調和設備はラーメンである。
もっと言うと、空気調和設備は3種のラーメンである。
そのラーメンには名前がついていて、下のように覚えておけば十分である。
★単一ダクト
★ファンコイルユニット
+
★空冷ヒートポンプパッケージ
第六章 明日の空気調和設備
ここまでで、空気調和設備の説明は終わりである。
難しくなかったでしょ?
簡単だったしょ?
なぜこのような簡単になるかというと、この記事ではかなりブラックボックス化している部分が大きい。前編で書いたように、必要に応じてブラックボックス化して説明することが優しさだと考えている。
長期記憶にするためには、簡単なワードから知識を引っ張ってこれることが重要だと考える。
大学の時分に、相対性理論についての授業があったんだけど、そのときに仲座栄三先生が呪文のように唱えていた言葉がある。
「相対性理論とは、4つの式である。」
仲座先生は相対性理論について「4つの式です」という簡単なワードだけで説明していた。ここは私も、仲座先生に続けと言って、ここに、唱えよう。
「空気調和設備とは、3種のラーメンである。」
そしてここからはみんな各々が調ればよい。
今回ブラックボックス化し、詳しく説明しなかったキーワードを下記に並べるので、参考にしていただければと思う。
・外調機
・DHC(地域熱供給)
・全熱交換器
・床置ダクト接続型
・空冷ヒートポンプチラー
・冷媒-フロン
・第3種換気
最後に、もう一度メモをよく見てみると、
①②③と3度も空気調和設備(空気調和機)という言葉が出てきている。
設備設計者が空気調和設備(空気調和機)と言うとき、この3つのどれかを指していると思っていい。このことを知っていないと、会話が成り立たなくて大変なことになる。
どれを指しているかは文脈による。
AHUのことを指しているのかもしれないし、二次側の総称として使ってるときもあるだろう。あるいは熱源や換気設備も含めたすべてを指しているかもしれない。ここに注意しながら他の方があげている解説を読むと、混乱せずに理解できると思う。
まとめると、
①空気調和設備は中央熱源と個別熱源に大別され、中央熱源のなかに2種、個別熱源のなかに1種、合計3種と覚えておくこと。
②中央熱源は機器を組み合わせて大きな一つのシステムをつくり、1次側と2次側の間には「ヘッダー」と呼ばれる金属製のタンクがあること。
③空気調和設備(空気調和機)という言葉は複数の使われ方があるから注意すること。
簡単だが、空気調和設備についての解説を終わりにしたいと思う。
空気調和設備とは、3種のラーメンである。