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クリプトの時価総額2種類(希薄後時価総額,Fully Dilution Market Capとは?)

0. あいさつ

スタートアップ村におります「やす」と申します。
最近はクリプト領域を中心に調べたり、仕事させていだいたりしてます。
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1. 時価総額とは?

一般的な株式時価総額とは、以下になります。

時価総額、株式時価総額とは、ある上場企業の株価に発行済株式数を掛けたものであり、企業価値や規模を評価する際の指標である。 時価総額が大きいということは、業績だけではなく将来の成長に対する期待も大きいことを意味する。(Wikipediaより)

株式会社と同じ様にクリプトでも時価総額の計算を行います。
その際用いられる変数は、「トークンの単価」と「発行済みトークン数」でそれらをかけ合わせたものが時価総額だと言えるでしょう。

ただ、クリプトでは2種類の時価総額という指標を用いることが多く、よくわからないという人も多いかと思います。

2. クリプトで多用される時価総額2種類(時価総額と希薄後時価総額)

クリプトでは、よく用いられる時価総額は2種類あります。

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①時価総額(Market Cap, Valuation)
・計算式:「トークンの単価 × 発行済みトークン数」
・備考:CoinGeckoやCoin Market Capの時価総額ランキングの数字はこれ
②希薄化後時価総額(Fully Diluted Market Cap, Fully Diluted Valuation)
・計算式:「トークンの単価 × 総発行枚数(完全希薄化後の供給量)」

トークンはCliff Vestingで創業者や初期投資化分がロックされていたり、そもそもTokenomicsの都合上未発行のものもあるので、そういったものを足し合わせたものが総発行枚数(完全希薄化後の供給量)です。
その総発行枚数で計算した時価総額を、希薄化後時価総額(Fully Diluted Market Cap, Fully Diluted Valuation)と呼びます。

「希薄化後/希釈後」という言葉の意味は、英語でのDilution(ダイリューション)という希釈という意味の日本語訳です。一般的に株式会社で増資などを行う際に新株発行することで株式の価値が薄まる際に用いられるワードです。

3. 株式会社よりも希薄化後時価総額が重宝される理由

スタートアップがエクイティで資金調達する際に資本政策を引くかと思いますが、その際SO(ストックオプション)などを含むかどうかで「顕在のみ発行済株式数」と「潜在込の株式数」などの名目で2種類の時価総額を計算すると思います。考え方はあれと同じです。(SOはあらかじめ決められた価格で未来に株式を購入することができる権利のことで、権利行使をすると株に変わるので潜在という表現をします。)

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ただ株式の場合、
①未上場なら資金調達の際の投資家とのコミュニケーションで用いられる程度
②上場してからは潜在分が顕在化する機会は限定的
③ストックオプション(SOプール)は10〜20%とある程度相場が決まってるので、雑に1.1倍したら潜在込時価総額は概ね計算できるわみたいな温度感
という暗黙の理由から、普段からスタートアップ/VC/株クラスタの人で潜在込で時価総額を計算している人はあまり居ないと思います。

一方、クリプトの場合は、
・日々新しいトークンがすられ続けたり
・創業者分などがロックが解除されていく(Vestingなら毎月,毎年スパン)
・Tokenomicsがバラバラなので、ロック分がプロトコルによってまちまち
という理由で、クリプトでは株式会社の潜在込時価総額を考えるプライオリティは高いわけです。もちろんそれでも使う機会は限定的です。

4. 時価総額2種類の使い分け

トークンやプロトコルの単純比較を行う際は、概ね時価総額(Market Cap)の方を用いて計算するのがベターかと思います。

というのも、本当は希薄後時価総額(Fully Diluted Market Cap)で計算するのが確かに実質のように思われるものですが、プロトコルによっては総発行枚数の99%が未発行というものや、そもそも総発行枚数が決まっていないものもあり、公平性にもとるためです。

前者でいうとたとえば、1ドルのトークン1枚発行して、総発行枚数1兆枚だと希薄後時価総額は1兆ドルになるなど、虚像がすぐ作れてしまいます。

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なお、そう聞くとそもそも希薄化後時価総額という概念を指標にすること自体がナンセンスに思えてきますが、

①創業者やVCなどロックされている人がキャピタルゲインを試算する際
(個人投資家の方でも大口のロック解除イベントと思うと他人事ではありません。基本一気に解除はしないので知らん間に終わってますが…)
②アップサイドを見たい時のざっくり計算の際

に、Fully Diluted Market Capを用いると良いと思っております。

5. 面白い実例(FLOW)

おまけとして、具体的にどうやってトークンディストリビューションが行われていくのか、それによってどう時価総額が変わるのかをFLOWというパブリックブロックチェーンのプロジェクトにおけるネイティブトークン「FLOW」で見てみます。

以下の画像はFLOWというトークンの発行済みトークン数(顕在のみ)総発行枚数(潜在込)との推移です。下から2行目「Total Supply」が総発行枚数で、下から3行目の「Total Circulating Supply」が現在の流通量です。

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見方としては、横軸がローンチからの経過月で、それに応じたトークンディストリビューションを下2,3行で見る形です。例えば「12ヶ月目で一気にトークンが4.3倍増えました」みたいな見方をします。

因みに2021年10月がこの流通量4.3倍ダイリューションイベントが行われたのですが、その際CoinGecko/CoinMarketCapにて面白い現象が起きました。(画像)

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https://twitter.com/wonderlagoon/status/1449715602726146051?s=21

トークンの価格は多少下がったものの、流通量が4.3倍になったので、結果的に時価総額(Market Cap)が4倍になり、その結果、時価総額ランキングが一夜で4倍に急騰。意味わからんですね。

こういう事例を見た際、時価総額(Market Cap)の存在価値にも疑問が生まれてしまうのですが、そもそもそういったふわっとした概念として受け取るのが吉かもしれません。

時価総額の評価を多くのクリプト民は日々行うのですが、その際ほぼ間違いなくCoinGecko/CoinMarketCapを用います。こういったトークンディストリビューションの変化を工夫することでCoinGecko/CoinMarketCapをハックし、プロジェクトを強く魅せるというのは一つのクリプトIR(Investor Relations)では重要なスキルだと思ってます。

6. おまけ

ちなみにですが、ホルダー数が数千人いないとCoinGecnko/Coin Market Capにはリスティング出来ないので、ただでさえこれらにリスティングされているものすべての希薄化後時価総額を測るのでもかなり大きなある意味虚構の数字が出来てしまうのに、ブロックチェーンに刻まれたものもすべて総計するとこの何十倍大きな虚構の数字が生まれるかわかりません。

7. つづき

この知識をもって以下のnote読むと面白いかもしれません(露骨な勧誘)
是非読んで感想ください!


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