見出し画像

[2月21日]モルスタ警告!株価26%下落のリスク

今日はモルガン・スタンレーが今後株価が26%下落するという記事が出ましたので、手短にその内容を書いていこうと思います。記事はこちらになります。

いつもなら、この手の記事なら「あーはいはい、また煽り記事ね」みたいな感じで、他のインフルエンサーが喜んで煽るのを横目にスルーするのですが、今回はEquity Risk Premiumが低すぎるという内容で有名な米国アカウントも少し騒いでるので、掘り下げて解説していこうと思います。今回は色々な計算が出てきますが、考え方の一つとして紹介してますので、実際の値はズレることもありますので、ご了承ください。また、ERPの話をしていきますが、私自身も完全に理解してないかもしれないので、もし間違いなどあればTwitterなどでコメントいただけるとありがたいです。

↓動画でも相場解説してます。YouTube登録していただけると嬉しいです↓

ERP(Equity Risk Premium)とは?

簡単に定義すると、リスク資産である株式の収益性が無リスク資産に比べてどれくらい収益性があるかという指標です。株式は価格が変動するリスク資産であり、リスクをとる以上、無リスク資産よりリターンがあって当然だようねという上回る幅のことを指します。

下のチャートは本日、色々なところで話題になってたのですが、そのERPが2007年以来最低水準になったとのことです。すなわち、今株式を買うこととと無リスク資産(国債など債券)を比較した場合、2%程度しかメリットがなく、リスクを考えたら株式より無リスク資産を買った方が合理的だよねということを指し示してます。リスクをとって株式を買う以上は3−4%のメリットが得られるべきというのが、このチャートで見た場合のここ20年くらいのトレンドです

この指標がどれくらい大事かという点に関しては、議論もあるかと思いますが、少なくとも22年の年初にこの指標が急に下落したときに株価の下落を予期した人は何人かいましたので、再びこの指標が注目を浴びてるのは警戒しべきでしょう。

なぜERPが急降下したか?

ERPの計算式は、一般的には株の益利回り-10年国債の金利で表せます。株式の益利回りとは、その株を買った時に年間どれくらいの利益(EPS)が生み出せるかという率を指します。

例えば、S&Pで言うならば、23年末のEPSの予測は223.77ですので、S&Pの2月21日時点の価格3997で考えるのであれば、益利回りは223.77/3997=5.5%ということになります。感の良い方は気づいてるかもしれませんが、これはPERの逆数になります。2月17日のPERは18.0になりますが、この場合の益利回りは1/18.0 = 5.5%とほぼ23年末のEPSベースと同じになります(これは一応偶然です)

さて、いずれにせよS&Pの益利回り、すなわちS&Pを3997で購入したとして、1年後に生み出せるEPSをベースにした利回りは5.5%になります。これに対して、2月17日時点での10年金利は3.8%になります。その差は1.7%しかありません。この差が意味するところは次で解説するとして、少なくともERPが急低下した理由は

1)1月に株価が急激に上昇しEPSに対する益利回りが低下したこと
2) 10年金利が急反発し3.3%から3.8%に急騰したこと

この二つの動きが急激にERPを低下させました。

ERPが小さくなるとどうなるか?

直感的な話をすれば、株式を買うぐらいであれば10年国債買った方が合理的ということになるので、株式の需要は大きく下落します。理論的な話をすれば、やはり株式は3%ほどのプレミアムがあるべきと市場が判断すれば、3%のプレミアムが乗っかるように株価が下落します。

現在の益利回り
223.77 / 3997 - 5.5%

現在のERP
5.5% - 3.8% = 1.7%

理想のERP(3%)を達成するための益利回りX
X - 3.8% = 3%
X = 6.8% ( PER = 14.7 )

6.8%を達成するためのS&Pの株価X
223.77 / X = 6.8%  
X = 3290

理想のERPに到達するまでの株価下落幅
3290 / 3997 = -17%

計算はごちゃごちゃ書きましたが、ERPは3%あるべきという考えに基けば株価は2月21日時点の株から-17%下落しないと、国債に対して魅力が出てきません。モルスタの-26%は流石に言い過ぎな感じはしますが、今の金利に対して理論的に3290まで下がるというのはあり得る話になります。

以前の記事でPERが高すぎるという話を何度かしました。上の計算式に小さく書きましたが、ERPが3%を保てるPERは14.7になります。過去に15近くまでPERが下落したことがあったので、今の株価から17%下落するというのは決して可能性がゼロの話ではないでしょう。

鍵を握るのは金利の動向

ここまで怖い話をしてきましたが、ERPの話が2022年の年初と同じように当てはまるといえば、それは少し前提が違うと思います。2月21日はPMIなどの指標が予想より上振れしたことにより、今後も金利が上がっていくのではないか?という思惑から長短金利が上昇していきました。前述したとおり、金利が上昇するとERPが縮小します。逆にいえば、金利が下がれば、相対的に無リスク資産の魅力が落ち、ERPが上昇し、株の魅力が増します。

去年と違うのはインフレは確実に曲がり角を超えてます。確かに、データは依然根強いインフレを指し示してますが、その道のりは去年のそれとは明らかに進捗してます。まだまだ時間はかかりますが、23年末にかけてインフレは収まっていくでしょう。インフレが収まればFRBも無理に高金利を続ける必要はなく、10年金利もやがて3%まで落ちてくるはずです。3%まで落ちれば、今の株価でもERPは2.5%になりますから、金利が落ちれば株式は相対的に魅力になるはずです。また24年はEPSは成長が見込まれてますので、それはさらに益利回りを押し上げ、下がった金利に対してさらに株式が魅力的なアセットとなります。

所感・今後の見通し

正直、金利がどうなるかはあまり読めません。明日22日はFOMCの議事録が発表され、3月の頭は雇用統計や消費者物価指数の発表。3月末には再度FOMCがあります。これらの内容次第ではさらに金利が上昇するリスクもあるでしょう。もし、金利が上昇すれば、ある程度は株式にマイナスの影響があるとは思います。

ただ、一方で2月は予想より高い数字が多く出たというだけで、各種指数などは絶対値として景況感の悪化を示してますし、インフレも去年ほどは酷くはなっていません。経済指標次第では再び金利が4%前後でピークを打って、下落し始める可能性もあります。金利が下がれば、一応これ以上株価が下落する理由はないと考えます。

QQQの投資チャンス

私自身は議事録や3月頭の経済指標次第ですが、金利が大きく下がるタイミングがあれば、その時にQQQを積み立ての一環として仕込もうかなと考えてます。長期的に見れば金利が下がりテック株が恩恵を受けると考えますので、引き続きQQQへの投資は期待できるのではないかなと思います。今までに購入した債券は基本的にホールドのままで考えてます。

投資は自己責任で

当Noteでは株式や債券などの様々な金融商品の紹介、解説を行っておりますが、これらの投資は元本を保証するものではございません。投資にあたってはそれぞれの金融商品における元本割れなどのリスクを十分に理解いただいた上で、自己責任にて投資を行ってください。当Noteでは可能な限り正確な情報を掲載するよう努めておりますが、情報が誤っている・情報が古くなっている可能性がございます。当チャネルに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

いいなと思ったら応援しよう!

やす 🇺🇸 ベンチャーキャピタル
いただいたサポートはより充実したシリコンバレーの情報などに使わせていただきます!