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消費者物価指数捏造!? 止まらない物価高

こんにちはやす( @YasLovesTech ) です。先週、東大ぱふぇっとさんのCPIが捏造されてる的なツィートがプチバズしてましたので、私の方でも取り上げてみようと思います。

まとめ

ダラダラ長くなると要点がブレるので、本日の内容をまとめると

  • 消費者物価指数の数字は本来もっと高い(政府に捏造されてる)

  • 捏造された数字に基づいて日銀も政府も判断してる可能性

  • 支援の期限切れ時の対応に注目

  • 少なくともインフレが一時的前提で動くべきでない

以上になります。1つ1つ見ていきます。

消費者物価指数の数字は本来もっと高い

 こちらが4月21日に発表された3月の消費者物価指数です。

消費者物価指数には3種類ありますが、上から総合+3.2%。そして生鮮食料品を除いたコアCPI+3.1%、さらにエネルギーを除いたコアコアCPI+3.8%となります。生鮮食料品とエネルギーは地政学要因や季節要因で上下するので、コアコアであれば本質的なCPIが測れるというものです。

いずれにせよ、+3%台で政府は2%を目標としているわけですから 、ちょっと高いかなくらいの数字です。また、政府・日銀の基本的な見解も「インフレは一時的で1年内に2%に戻る」という見解なので一般国民が受け取るメッセージとしては、少しインフレが高いが、一時的で戻るんだろうという感じになります。

しかし、このインフレは実はもっと高い。政府が22年4月からガソリン代の補助を開始したことと、23年の1月から電気代補助を開始したためです。これらの値は消費者物価指数には織り込まれていません。織り込まれてないというのは、補助金による値下げ分がそのまま物価として反映されています。

消費者物価指数(総合)の先月比変化の推移のグラフ

こちらが、昨年の3月から今年の3月まで総合CPIの先月比の推移を示したグラフです。概ね、+0.2%から+0.4%くらいで推移してます。政府は1月から電気代の補助を行なったため、それが2月に反映され2月は-0.6%と大きなデフレになっています(これは公式発表の中でも政府の補助により大きく下がったと注釈がついています)。この2月を除けば、平均的に毎月+0.33%ずつインフレしていたので本来であれば、3月のインフレ率は丁度4%程度になっているはずでした。しかし、燃料代補助のおかげ(せい?)で3.2%と実態以上に低く見積もられています。

実はこれだけではありません。あまり覚えてない人も多いと思いますが、22年の春からガソリン価格の補助も開始されています。

政府発表の燃料代補助の効果について : https://nenryo-gekihenkanwa.jp/

これは、ガソリン価格がインフレにならないように 抑制的に導入されたため、極端なデフレにならず気付きにくかったですが、政府の資料によればだいぶ価格が抑制されていたのがわかります。政策の是非は置いておいて、本来であれば世界的に原油価格が下がった今でさえも17円ほどの抑制効果が発揮されています。マーケット価格的よりも9%ほど安い値段でガソリンが提供されてます。これもおそらく消費者物価指数に織り込まれていないと思います。また、これらの電気・燃油代は様々な製品の製造や輸送による価格転嫁も低く抑えられてます。そうすると、3月のインフレ率の実態はおそらく4%〜4.5%ほどになってるのでは無いかと思います。さらに、あまり影響は大きくないですが「全国旅行支援」もインフレを人為的に押し下げる捏造要因の一つとして挙げられています。

当時から、なんで政府は給付ではなく、事業者への補助金直接投入にこだわったのかと不思議に思ってましたが、この消費者物価指数を直接下げて、悪く言えば捏造したいと考えていたのであれば非常に納得がいきます。特に電気代補助は何がなんでも統一地方選挙の前に導入したかったと考えます。でなければ、4%にも達するインフレで激しく批判されてたに間違いありません。

目の前の世論に振り回されているうちに、補助金をばら撒きまくった結果、本来のCPIとはかけ離れた数字が発表され、政府自身も本来の物価水準がどこにあるかわからない状態になってるのではないかと現状を非常に危惧しています。補助金は100歩譲ってしょうがないとしても、消費者物価指数だけは、補助金を加味しない本来の値も合わせて公表すべきだと思います。

捏造された数字に基づいて日銀も政府も判断してる可能性

さて先日、植田日銀総裁が初めての会合を行い金融緩和の継続を決定しましたが、簡単に内容をまとめると

  • 金融緩和は継続が適切(政策金利-0.1%据置、YCC維持)

  • インフレは1年以内に2%に戻る。むしろデフレに陥るリスクの方が高い

  • 賃金上昇をともなうインフレ率2%達成を目指す

こんな感じです。やすとしては、金融緩和継続に関していうと賛成という立場は改めて明確にしておきます。ただし、2%に戻るというのはやや楽観的すぎるのかなと考えてます。

The Commodity Research Bureau Index : 原油、食糧、貴金属などのコモデティ総合指数

確かに、世界的に原油価格そして食料(小麦等)を含むコモデティの価格は大きく落ちてきているので、何もしなければコロナ前までに値段が下がるというのは難しいですが、インフレ自体は落ち着く公算が高い。しかし、前述した通り、そもそもインフレは+0.6%ほど過小評価されています。本質的に言えばこの補助金は打ち切らなければなりません(+0.6%のインフレをどこかで許容する)。さらに後述しますが、すでに東京の4月のCPIは非常に高い、そんな中で2%に戻るのは大規模なデフレがない限り非常に楽観的な見通しかなと思います・

植田総裁であれば流石に政府の補助による捏造に気づいているとは思いますが、それこみで2%に戻るから大丈夫なんだという判断は危険ではないかと思います。政府および政治家もほとんどが消費者物価指数を深く見ずにヘッドラインしか見ないであろうから、4%を下回る捏造された消費者物価指数をベースに政策を決定しているのではないかと非常に危惧しています。

支援の期限切れ時の対応に注目

さて、注目は燃料代、電気代の支援が切れるタイミングです。正確に日時を覚えてませんが、確か1年から1年半ほどの限定支援だったと記憶しています。燃油緩和策は今年の9月に切れると政府が公式発表しています。いずれにせよ、遅かれ早かれ、この支援は切れることになります。その瞬間に電気代や燃料の価格は跳ね上がり、物価に+0.6%ほどの上昇を伴うのは間違いありません。

Crude Oil Prices : 世界で最も使用されてる原油指標の1つ

さて、本当の問題は政府がこの支援を本当に打ち切れるかどうかです。本質的に言えば、原油価格もだいぶ下落してきており。4月29日現在、1バレル=$76であり、過去10年くらいの価格と比べてやや高いものの、本質的には補助を続ける理由は微塵もなく、ただの甘やかしでしかありません。

しかし、原油価格がだいぶ落ち着いてきており、補助を続ける理由はないとはいえ、補助を打ち切れば値段が上昇するのは確実です。税金も高く、社会保障も高く、年金も少くなく、何より食料中心に値段が上昇している中で、補助金を打ち切れば国民の怒りが頂点に達するのは火を見るより明らかです。

地方統一選挙も終わり、衆議院の解散選挙もささやかれている中、岸田首相の任期は24年の9月に切れます。この辺りのスケジュールを考えれば、このタイミングで打ち切るのは勇気のいることでしょう。この状況下で、政府が補助金を打ち切れるかは非常に注目してます。流石に同レベルの補助にはならないと思いますが、段階的に縮小するという形で、また今年の秋に巨額の補正予算を組み、 国債を財源とした支援策を総裁任期切れの後まで続くように打ち出す可能性があるのではないかと考えています。本来必要のない支援を国債を財源として行うわけなので、もし支援続行を決めるのであれば必要のないインフレ対策にインフレ要因(国債)で対策するという最悪の悪手になりますが、本当に支援を打ち切れるかどうかを非常に注目してます。

少なくともインフレが一時的前提で動くべきでない

 先日、東京区部の4月の消費者物価指数の速報値が発表されました。消費者物価指数の先行指標となる指標ですが、内容は非常に高いものとなりました。(記事の冒頭に挙げたのは全国の3月です)

全国と同じように、総合+3.5%、コア+3.5%、コアコア+3.8%となってますが、電気代・燃料代によって押し下げられてます。注目すべき数字は、コアコアの先月比+0.6%という数字です。

インフレを正確に計る上で、前年比はあまり役に立ちません。極端に言えば12ヶ月前に2%インフレして、その後ずっと0%でも、前年比インフレ率は2%になりますから、前年比は正確にインフレの状況を表していません。

インフレの現状を測るには、先月比を見ることが何よりも重要になります。米国の消費者物価指数の発表では、まず先月比比較の推移のグラフが一番上に来るくらいです。

消費者物価指数東京(コアコア)の先月比の推移のグラフ

こちらが、東京のコアコア指数(生鮮食料品、エネルギーを除いた数値)の先月比の推移です。これを見ると、明らかに加速しているのがわかります。実際の前年比較の数字は3.8%となっていますが、それは昨年の4月から8月まで+0.2%という穏やかなインフレだったためで、直近のインフレ率先月比+0.6%が仮に12ヶ月続くと年率7%にも達する非常に高いインフレ率です。+0.6%という数字は「一時的だから大丈夫」というレベルを大きく上回る危機的な数字ということを改めて申し上げたいです。

前述した通り、小麦などの食料を含め世界的なコモデティの上昇はとっくに止まっています。実際に米国の食料のインフレは3月についに+0%になりました。政府や日銀の予測の通り、何もしなければこのインフレ率は緩やかに落ちてくる公算が高いです。しかし、保守的に考えればインフレが一時的という前提に基づいて政策決定すべきではないと思います。

その最たるものが、前述した燃料やガソリン代の支援です。いうまでもなく、昨今のインフレは円安が影響しています。インフレした、インフレしたというものの、ドルベースで見れば日本の物価はそれほど上昇してません。今回は深く書きませんが、22年4月から23年4月までのコアコアのインフレ率は+3.8%で、円安は+5.5%進んでますので、ドルベースでは$1で買えてたものが$0.97で買える計算になります。実際に牛丼とかの値段をドルベースで考えるとそれほど上昇してないのがよくわかると思います。

世界的なコスト上昇に加え、円安が輸入物価を引き上げてます。本来、放っておけば、落ちてくるインフレに対して、世論が騒いでいるから国債を増刷して補助金を出そうという政策を続けてしまえば、それはYCCを続けている以上、日銀国債引受に繋がり金融緩和的な結果につながります。金融緩和が続くと相場が考えれば、引締めをしているドルに対して相対的に量が増えますので、円安は継続・加速します。円安が継続すると更なる輸入物価高騰を招き、インフレが継続します。何もしなければ物価が落ち着くところが、下手に補助金を出してしまったため、円が減価してしまい、不必要なインフレを招きかねません。

よく言われますが、インフレに対してインフレ要因になりかねない補助金をばら撒いて対策をするのは愚策です。血で血を洗うような対応です。本来であれば勝手に落ちてくるはずのインフレですが、補助金からの円安のスパイラルが続けば、+0.6%(年率+7%)という高いインフレがそのまま定着する可能性が十分にあります。インフレは一時的だから大丈夫。一時的だからインフレが落ちてくるまで補助金をばら撒いて乗り切ろうなんて考えて政策運営していると年率7%にも及ぶとんでもないインフレに見舞われる可能性は少しずつ高くなっています。

私自身は何もしなければインフレが落ち着いてくると考えてはいますが、意味のない補助金などは打ち切ることが前提と考えてます。補助金ではなく、原発に投資するなど根本的な供給要因に積極的に投資すべきなのはいうまでもありません。少なくとも「インフレが一時的ではなく続くかもしれないな」くらいの危機意識を持って政治家や官僚の皆様には政策決定をしてほしいなと考えます。

こちら去年末の30兆円にも及ぶ補正予算ですが、電気代補助8兆円弱をはじめ、コロナ対策にまだ詰んでるなど、ほんと、中身はゴミだらけの予算です。確か、22兆円ほどが国債で賄われたと思います。当然、市中消化できないので、そのまま日銀が金利0.5%ほどで引き受けてゴミ政策の代わりに円が22兆円分減価しただけですね。

もはや、毎年秋に補正予算を組むのが恒例になってしまってます。電気代やガソリンに対して補助金を出すのは当然論外ですが、景気対策と銘打って、投資効果が低そうな支援団体にお金を配るのも愚策です。今まではそれでも良かったかもしれませんが、インフレが続くかもしれないということを考えると、意義の薄い巨額の補正予算や予算は更なる円安を招きかねません。更なる円安が続けば、インフレが続き、金融緩和が続けられるかどうかにも関わります。もし、金融緩和が続けられなくなった時は本当の地獄が待っています。

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