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ばーちゃんが伝えようとしてたこと🌱②

わたしは小さい頃、ばーちゃんと一緒に暮らしていた。
正確にはひいばあちゃん。曾祖母ね。

わたしが生まれた時には、おじいちゃんとおばあちゃんは亡くなってた。
父さんと母さんはいつも仕事で家にいなかったから、わたしはいつもばーちゃんと一緒。

ばーちゃんの言葉は生きていく力

こんなこともある。
わたしは人を羨ましく思う時がたまにある。

ほんとは結構ある。

誰とも仲良くできていいなとか、すごく効率よくお金を稼いで羨ましいなとか。
お上品でセンスあふれて素敵だなとか、それずっと欲しかったけど高くて買えなかったんだよなとか。
もう例を挙げたらキリがない。

羨ましがりの権化。

でもそんなときに出てきてくれる。
ばーちゃんが。
胸の中からばーちゃんの言葉が。

ばーちゃんと都会へお出かけ

私は田舎町に住んでた。今住んでるところも田舎だけど、もうちょっと田舎。
ポツポツと新築住宅の塊りが山や、田んぼだったところに作られるようなところ。

小学1年生か2年生の時、ばーちゃんに連れられて大きな街まで電車でお出かけした。

母さんからお出かけの話をされたとき、それだけでわたしはシクシク泣いてたらしい。
怖い嫌だと。
ばーちゃんは絶対にわたしを連れていくってひかず、半ば無理やりに連れてったんだって。

何の用事で出かけたのかも憶えてないけど、帰りに駅で父さんと待ち合わせすることになってた。
父さんが一緒に行ったら良いのに。

駅の中にある大きな柱に寄り掛かりながら、ばーちゃんと一緒に父さんを待ってた。

わたしは人見知りのくせに、気になるちょっと個性的な人の行動をジッと見つめて目を離さない癖があった。
今もある🌱

その時のわたしは、若くて細いお兄さんに大声を出してからむ派手な服装のおっかないおじさんに夢中だった。

お兄さんは困った顔して、恐らく悪くもないのにすみませんでしたって感じでその場を去っていった。

わたしが興味津々に見てるから、ちょっと危険なそのおじさんは「なに見てんだ」みたいな感じのこと言いながらヘコヘコした歩き方で近づいてきた。
その光景はすごく憶えてる。
「おおお。きた。こっちきた…」って。

おっかないとかの感覚はなかった気がする。なんなんだこの人は、わけわからんって状態だったと思う。

ばーちゃんの力

そのときにばーちゃん。
やっぱりばーちゃん。

ばーちゃんはわたしの頭の上からファサッと顔も隠れるように風呂敷をかぶせてくれた。
暗かったけど、これは取っちゃいけないやつだってことは子供のわたしでもわかった。

これはうろ覚え。
でもこんな感じなこと言ってた。

「この子に見せてやりたいもんを見せたくて今日ここにきた」

「あんたみたいなんを、大人になったら見たくなくても見ることになる」

「あんたみたいのを見せるのは今じゃない」

「この子のためになることをもっと見せてやりたい」

みたいな感じ。
すごい大きい声だったと記憶してたけど、ばーちゃんはそんな大きな声出してないって後から言ってた。

その後の細かいやりとりがどんなだったかは覚えてない。

やりとりの最後にはおじさんが「悪かった」みたいなこと言ってたと思う。
ここもうろ覚え。
なんかの映画と混ざっちゃってるかも。

風呂敷は誰が外したかわかんないけど、外されたらすぐにわたしはばーちゃんに抱き付いて泣いた。
ばーちゃん殺されるって思ってたからね。

何も見ないようにずっとばーちゃんに顔をうずめてた。

ばーちゃんに抱きついてシクシク泣いてるとき、「おじょうちゃん!おじょうちゃん!」って呼ばれてたけど無視した。
怖いし。

でも、ばーちゃんが「見てみなさい」って言うからちょっとだけチラッと見たんだよね。

遠くで例の危険なおじさんが知らないおじいちゃんのカバン持って、「こちらへどうぞ」みたいなポーズと変な笑顔見せてた。

恐らくあのおじさんなりの良い人像をがんばって演じてたんだと思う。

やっぱりなんかの映画と混ざってるかも。

ばーちゃんも怖いときは怖い

わたしは大きくなってから、その時のことをばーちゃんとお話ししたことがある。

ばーちゃんは、
「声も震えるし、手も足もガタガタしておっかねかった」
って言ってた。
ばーちゃんも怖いもんあるんだねって笑った。

母さんの何でそんな危ないことしたのよ?みたいな問いにも、
「あんときは頭に血がのぼってたから、なんでかわかんね」って。

帰り道、ばーちゃんは足がガクガクしちゃって、駅員さんに頼んで借りた車椅子に乗って父さんに押してもらいながら帰ったんだって。
そこは全然憶えてない。

ばーちゃんに怖いもんあんの?って聞いたことがある。
「雷さんと、ボケていろんなこと忘れること」って言ってた。

ばーちゃんは最後はみんなの名前も忘れちゃった。施設から病院に移って静かに亡くなった。

父さん母さんのことはわからなくても、わたしの名前だけは思い出してくれてた日もあった。

そんな日は、またわたしのこと忘れられちゃうかもって思って、ばーちゃんの前でポロポロ泣いた。

ばーちゃんはいろんなこと忘れちゃうことが怖い。
ばーちゃんが今、内緒で我慢してるかもって思うとすごく辛くて涙止まんなかった。

ばーちゃん怖い?って肩ヒックヒックさせながら聞いとき目を閉じたまま、
「なんもさ」
って答えてくれた。

「怖いことなんてない」
「あんたもいるから大丈夫」

この言葉は宝物。
この言葉を聞いたとき、病室で膝ガクーンて折れた。
体のどこにも力が入らないし、周りなんてなんも見えなくて、全力でワンワン泣いた。
きっとご迷惑だった🌱

この言葉はわたしが生涯持っていられる宝。
誰にもあげないわたしだけのもの。

こんな嬉しくてありがたい言葉ない。

いまこうして文字にしても涙出る。
ばーちゃんに会いたい。

今見るべきもの

思い返して文字にしても涙でるね。
まだ胸の上のほう熱い。

今見るべきものはそれじゃない

この言葉は今も胸の中にドドンと居座ってる。それはそれは堂々と。
鎮座って表現があってると思う。
すごく強い。

人を羨ましく思ったり、あまり言いたくないけど妬んだりしそうになったとき、自分にその言葉をかけてやるようにしてる🌱

わたしがわたしに言うという感じではなくて、なんか勝手にでてくる。
そういう機能がついてるから胸の中から湧いてくる。

今やろうとしてること、やりたいこと。
これと今わたしが羨ましいって思ったことはぜんぜん関係ないぞ。

今見るべきことってなに?
今感じなければならないことってなんだ?

これで大体気持ちは持ち直す🌱
意外とすんなり。

すごい力をもった言葉
ばーちゃんはすごい。

人と比べたらほとんど負けてる。
9割は負けっぱなし。もっとだね。

負けてる要素なんてすぐ見つけ出せる。

でもそこじゃない。
今みるべきものはそれじゃない。
感じなければいけないことはそれじゃない。

今みるべきこと。
感じるべきこと、想うべきこと。

間違わないように。
今わたしがみるべき大切なことを。

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