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コロナ渦不染日記 #81
十二月十二日(土)
○昨日、出かける関係で行けなかった、どうぶつマッサージで揉まれてきた。
○帰宅し、映画『首都焼失』を見る。
電磁的なバリアを要する、謎の「雲」に覆われた首都・東京は、日本の他の地区と隔絶され、日本は首都機能を失った――というところからはじまるこの映画は、謎の「雲」に覆われた東京がどうなったかは語らず、東京を取り戻すためにあらゆる手段を講じる、人々の群像劇となっている。映画『シン・ゴジラ』などと似て、ある種の「お仕事映画」である。
と同時に、「首都機能を失った日本は、米ソの対立の中心でどうするべきか」といったシミュレーションが行われるのは、「米ソ冷戦」という時代の反映を抜きにすると、原作者・小松左京氏の追求するテーマがうかがえるような気がする。それは、「戦後日本はどこへゆくのか」という問いである。長編デビュー作『日本アパッチ族』は、戦後日本に実在した、「アパッチ族」と呼ばれた鉄くずなどを不法に回収する人々をモチーフに、鉄を食べて生きるミュータントが発生した、パラレルワールドの戦後を描いた。代表作のひとつである、『日本沈没』も、「沈没する日本」に「敗れた日本」が重なることは、想像に難くない。
このたびの災禍に思いを巡らせても、われわれの生活の基盤にあるものは、容易に失われうるし、それが失われたとしても、取り戻そうとするにしても取り戻せないと考えるにしても、いちど基盤を失った人生でも、否応なく先に続いていくのだ、ということがわかることである。
○本日の、全国の新規感染者数は、三〇三八人(前日比+三四一人)。
そのうち、東京は、六二一人(前日比+二六人)。
十二月十三日(日)
○午前中は、イナバさんとともに、東京は銀座の「アコメヤ銀座本店」にゆく。
「アコメヤ」は、食品、特に和食の食材を中心にあつかうセレクトショップであるが、「銀座本店」には、「厨房」がついている。ここでは、季節の小鉢御膳が提供されるのだが、セレクトショップならではの、こだわりの食材が調理され、炊きたてのご飯はおかわり自由である。
ぼくたちも、イナバさんも、この「厨房」がたいそう気に入って、たまにスペシャルな昼食をとりたいときには、一張羅ででかけていくのであるが、その「銀座本店」が、二〇二〇年いっぱいで閉店と聞き、足を運んだものである。
今日も、非常に手のこんだ、どれひとつとってもメインのおかずになりうる、おいしい小鉢が八つもついて、炊きたてご飯はつややか、それだけでもおかずになるうるうまさなのに、小鉢のおかずとあわせれば、これはまぎれもない「ごちそう」である。相棒の下品ラビットもイナバさんも、もちろんぼくも、ごはんを二杯、おかわりしてしまった。
○アコメヤは、関東に広く展開し、銀座本店しかない「厨房」に代わる「食堂」が、多数、出現している。「厨房」が、上記の小鉢御膳が二五〇〇円なのに対し、「食堂」は、定食がだいたい一五〇〇円前後であるから、どうしてもリーズナブルでちょうどいい「食堂」が増えていくのはやむを得ないことだ。だから、「厨房」が役割を終え、テナントの建て替えとともに業態を終了するのはしょうがないことだが、やはり、すこしさびしい。
○その後、池袋に移動し、映画『Fate/Grand Order 神聖円卓領域キャメロット』を見る。
原作ゲームのことは、ごくごく基本的なこと以外、なにも知らずに見たが、おなじく、原作のことをほとんど知らずに見た『鬼滅の刃 無限列車編』と比べると、あるいは、原作とした部分の分量の違いもあるのかもしれないが、キャラゲー的な制約に縛られすぎているような気がする。『~無限列車編』は、さして長くない範囲を切りとって、映画化しているように思われた。その分、さまざまな場面を、しっかり描くことができる。対して、『~神聖円卓領域キャメロット』は、描かなければいけない展開がおおく、出さねばならないキャラクターもおおかったのかもしれない。いずれにしても、隔靴掻痒の感ある映画化だった。
隔靴掻痒の核には、テーマの曖昧さがある。個人的には、「『目的のために手段を選ばないものたち』と、彼らに『平和のため』と切り捨てられたものたち、そして彼らに寄り添い、ともに立ち上がることで平和を目指そうとするものの対比」が、このエピソードのテーマであると考える。もしそうだとするならば、「平和」の美名の元に、力あるものたちに踏みにじられたものたちの姿を、もうすこし時間をかけて、丁寧に描いてもよかったはずだ。
○本日の、全国の新規感染者数は、二三八八人(前日比-六五〇人)。
そのうち、東京は、四八〇人(前日比-一四一人)。
一四一人が減じても、一日で四八〇人も新規感染者が報告されるのは、やはり異常事態である。しかし、緊急事態宣言は発出されないだろうし、休業や外出も「自粛を呼びかける」程度であろうから、経済的な援助もあるまい。となれば、おっかなびっくり外出し、それみたことかと感染することになろう。
引用・参考文献
イラスト
「ダ鳥獣戯画」(https://chojugiga.com/)
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