逆噴射プラクティス解題 #2
目次
ごあいさつ
こんにちは、うさぎ小天狗です。
この記事は、二〇一八年十月八日から三十一日の間に開催された「逆噴射小説大賞」の投稿作品の自主解題です。
何を考えて書いたか?
どんなイメージなのか?
今後の展開の予定は?
などを、簡潔に語る予定です(たくさん語るなら続きを書いたほうがいいですからね)。
各回ごとに四作品ずつ解題していきます。
今回は投稿第一作目から第四作目を扱います。
なお、皿洗いに飽きたらしい下品ラビットがコメントを書き込みたいと言っているので、彼のコメントも併せてお楽しみくださいませ。
それでは参りましょう。
No.01 「二十一より先の数」
墓地の場所、削り取られた暮石、そしてタイトルから、感のいい人はこれが西部の伝説的なガンマンに関するファンタジーだとお気づきになるかと思います(もっとも、タイトルバナーにモロにその人の写真と言われている画像を使っているのですが)。
今後の展開としては、四人の「ばちあたり」をどうにかした「おれ」が、墓を暴かせた「黒幕」の元へ向かうことになるでしょう。それを示唆するのが「日付」だったりします。彼が生きているのを一番恐れるのは誰か……もうあなたはお気付きですね?
下品ラビット:
「21」って数字は、「彼」の人生の数であるとともに、ダンカン・マクドゥーガルが語った「魂の重さ」の具体的な数字でもあるよな。「それ以上」ってのはどういうことなんだろうな。
ジャンル
伝奇、ウェスタン
参考・引用文献
『ビリー・ザ・キッド 21歳の生涯』(監督:サム・ペキンパー/出演:クリス・クリストファーソン、ジェームズ・コバーン、ボブ・ディラン)
No.02 「トバイアス・モービウス」
事後からの語り直しは「現象」を語る際の常套手段。「その男」は確実になにか恐ろしい事態を引き起こすことでしょう。
もっとも、そのすべてが明かされるとは限りません。なぜなら、一人称の語りとは、視点人物の知らないことは語られないはずだからです。曖昧とした事実から真実が導き出されるか、それともそういう思い込みすらフェイクなのか。個人的に先の見えない、楽しみな出だしです。
下品ラビット:
思わせぶりなタイトルは、たぶんサキ「スレドニ・ヴァシュタール」にでもインスパイアされたんじゃないかな。
ジャンル
サスペンス、奇妙な味
参考・引用文献
特になし。
No.03 「頭上の侏儒アゲイン」
謎の男の語る事件の顛末……はやくもNo.02とネタ被りかと思われますが、今度は語り手があきらかに怪しい。本文にあきらかにおかしな一部分があることからも、それは察せられたのでないでしょうか。
実はこの話、ある有名なパルプ小説の本歌取りを目指しております。元ネタでは「頭上の侏儒」は主人公にしかないものでしたが、こちらでは……。転がし方によっては元ネタと同じサスペンスホラーにも、SFにも展開させられるようにしてあります。さてどうしようか……。
下品ラビット:
元ネタは、原題を「Enoch」という。『旧約聖書』に現れる預言者の名前で、意味は「従うもの」。おれは、この作品が、あの『ツイン・ピークス』の元ネタの一つになったと睨んでいるが、小天狗の本歌取りはどうなるんだろうな。
ジャンル
サスペンス、ホラー、SF、奇妙な味
参考・引用文献
「頭上の侏儒」(ロバート・ブロック/『楽しい悪夢』ハヤカワ文庫NV)
No.04 「いのちのセルフィー」
悪意のある話が好きです。ぼくはどんな物語も、それが書かれた社会や時代と不可分でないと思っていて、なおかつ、それが読まれるためには、社会や時代を超えた「人の心の機微」が描かれているべきだと思っています。そして、そうした「人の心」の中でも、特に個人が目を背けがちな、「自分の中に潜む悪意/醜さ/自分でも気づいていない滑稽さ」と向き合う手助けをするのが、でかいくくりでの「文学」の意義である……と、これはほとんど坂口安吾「文学のふるさと」の受け売り。
主人公のねじけた心を、いかに普遍性あるものとして描けるか、受け取ってもらえるか。それを目指す話になるはずです。
下品ラビット:
説教くさい話になるのだけは勘弁な。
ジャンル
ホラー、サスペンス、ノワール、ブラックコメディ
参考・引用文献
特になし
以上、投稿第一作目から第四作目の解題でした。
(うさぎ小天狗)
イラスト
『ダ鳥獣戯画』(http://www.chojugiga.com/)
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