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東京アンデス登山日記
【週報】2017.07.24-30
ごあいさつ
こんにちは、うさぎ小天狗です。
暑かったりむしむししたり、急に雨が降ったりと、夏らしい気候になってきました。
ぼくたちうさぎは体温調節を耳で行うので、他の部分が熱すぎたり濡れ過ぎたりするのを好みません。大雨も炎天下も、うさぎには大敵です。
もちろん、ぼくたちが住んでいるうさぎ穴は、生存に適した快適な環境を整えてあります。エアコンもありますし、水出しアイスコーヒーを作るボトルと冷蔵庫もあります。なにより、一年かけても読み終えられないくらいの未読本が、ぼくと下品ラビットによって溜め込まれています。
ですが、いつまでもそこに引きこもってもいられない。野菜をかじるように、本をかじって生きていくことはできませんし、その本だってタダではありません。うき世の浮沈に関わる小舟は、泥ではなく金でできておらねばなりますまい。このnoteページを運営しているヤラカシタ・エンタテインメントは、あくまで非営利のサークル活動ですから、ここでお金を稼ぐことはできない。すると、うさぎ穴のベランダ栽培以外に、糧を求める仕事が必要になってくるわけです。
その仕事がなんであるかは、守秘義務があるので申せませんが、人間でなくてもできる仕事であることをお伝えしておきましょう。どったんばったん大騒ぎというほどでもないですが、人間と人間以外の動物が日々入り乱れて働いている職場です。
雨の日、アンデスへ
その仕事の関係で、ぼくは毎日あちこちへ移動しています。その日の現場は練馬でした。駅のホームに降りたときから、街が驟雨に烟っているのはみとめられていました。折りたたみ傘を持ち歩いてはいますが、雨の中をうろうろする必要もなければその気もない。
こんな時は喫茶店で一服するに限る……と、いつも練馬に来ている時に立ち寄る喫茶店に行こうとしましたが、ふと目に入ったのが駅前の喫茶店の窓。
「喫茶アンデス」の名前が白く書かれた窓の奥にうかがえる薄暗い店内には、テナントとして入っているビルと同じく、昭和なたたずまいの香りが漂っています。学生時代、よく通っていた町田の西洋鎧のある喫茶店「喫茶の殿堂 プリンス」を思い出し、好ましい気持ちになったので、いい機会だと入ってみました。
アンデスは本の峰
昭和なビルの階段を昇ると、入り口自動ドアの向こうに、壁一面の本棚が見えます。
「アンデス」の名の通り、ずらずらずらっ! と並ぶ本が峰となって立ち現れる。本好きの血が騒ぐ、この秘境めいた光景を見た瞬間に、魅入られたといっても過言ではないでしょう。
店内は薄暗く、丸電球のオレンジの明かりが各席を照らしています。雨のせいか、店内は七割くらい埋まっている。大学生くらいの若者集団から、近所の方と思しきお年寄りまで、年齢層は多様。地元の方々は気軽に立ち寄っているのかな。
それより本! 本! 本! 入り口で目に入ったのは文庫本の峰。店内に入ると、文庫本の峰の向かいにはマンガ本の峰があることに気づきます。本棚のところどころに、棚からはみ出た本が平置きにされているのが、神田の古本屋のようで、これまた好ましい。
あちらへどうぞ、と示された席は、本棚沿いの一人席。灰皿が置かれていたので、喫煙オッケーということがわかります。この辺りも昭和の喫茶店といった感じで嬉しい限り(禁煙席はちゃんとありました)。
メニューを見て、アイスコーヒーを注文。飲み物の値段は五百円しないくらい、食事はナポリタンを中心に千円しないくらい。オーセンティックな「昭和の喫茶店」の価格設定。
しかもコーヒーフレッシュが「スジャータ」! 子供の頃、週末の移動中に車のラジオでよく聴いた「スジャータ♪ スジャータ♪」の「スジャータ」! こんなところにも昭和の香り!(主観的な感想です)
これはアイフォンで音楽聴いてる場合ではないぞ……とイヤホンを外し、ついでに持ってきた本を置いて、店内のざわめきをBGMに、店内の本棚から本を抜き出します。
文庫本はミステリ、SF、時代劇……昭和のエンタテインメントが充実のラインナップ。エド・マクベインの「87分署」シリーズ(黒澤明監督の映画『天国と地獄』の原作)がハヤカワミステリ文庫で全巻揃ってたりします。マンガはあだち充氏の『タッチ』(あとで聞いて知ったのですが、あだち充氏はこのお店の常連で、『タッチ』の喫茶店のモデルはこのお店なのだそうです)を初め、『ワンピース』や『デスノート』もあるくらい。
その中から、ぼくが選んだのはこの一冊。
国書刊行会さんの「世界魔法大全」シリーズが箱入りであるなんて、昭和! オカルトブーム! 嬉しくなっちゃいます。
しかもこの『心霊的自己防衛』、筆者ダイアン・フォーチュン氏が、今で言う「パワハラ」を受けた経験から、心理的な抑圧に負けない自己を作り上げるために、かの魔術結社〈黄金の夜明け[ゴールデン・ドーン]〉に入社、本格的に魔術を学んだ上で記したものというから、読み物としての面白さも相当なもの。
雨の日の午後、昭和な香りの喫茶店で、丸電球のオレンジ光に照らされながら、コーヒーで喉を潤し、タバコを煙に変えながら、オカルト書籍を読みふける……うき世を離れ、神々の山嶺に至り、清浄な空気を味わう山登り。
これで仕事がなければ最高の午後じゃないか、と思ったものです。
うき世を離れて
読書の意味は人それぞれ、場合によりけりですが、こうしてうき世を離れる楽しみもその一つでしょう。この間足を運んだスパ同様、積極的な思考とは別の、いい意味で気の抜けた読書、無為の時間も、うき世を渡る船には必要なのだなあ、と思ったことでした。
喫茶「アンデス」、素敵なところです。あとになって調べてみたら、昭和なナポリタンが人気なんだとか。次に行ったら食べてみよう。きっと無為なリラックスができるんじゃないかしらん。
「喫茶アンデス」(https://tabelog.com/tokyo/A1321/A132102/13054285/)
(うさぎ小天狗)
イラスト
『ダ鳥獣戯画』(http://www.chojugiga.com/)
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