システム庁を考えて見ました

システム構築を生業としているものの見え方としての考えていることを書いてみます。

今新しい総理大臣となった菅さんがデジタル庁を構築しようとしているけど、基本的にその試みは賛成です。
いわゆる公務員と言われてる人たちと非常に長い間システム構築に関係する仕事をしてきた身としては、公務員の人達も非常に難解なシステムの管理という観点から解放されることにつながるのでとても良いことだと思っています。

なぜシステムは難解なのかというと、システム構築というものはここ数十年の間に一気に広まった新しい技術であり、その技術は毎年の様に進歩し、かつ大きく変化をし続けている状況であり、その内容を全体的に把握できている人はほぼいないと言っても過言では無い状況なんだよね。
マイクロソフトのビルゲイツ、アップルのジョブスなどを初めとしてITの巨人と言われいる人はGoogleとかFacebookにも沢山いるけど、彼らとてある側面でシステムというものに対して貢献しているだけなんだよね。まぁそれがあまりにも巨大な影響力を持っているのでそんな風には見えないとは思うけど。

いわゆるシステムというものをゲーム、ツール、OSなどの単品として定義する場合は、使い方とか使用する場面とかをシステムを構築する側が決めて、それをユーザが使用しやすいと思い、便利な機能が沢山あれば世界に通用するシステムになるんだけど、世の中にあるシステムの内でその様なものは一部のものでしかないというのが真実だと思う。販売される製品の価格とか使用している人数とか、それによるビジネスチャンスという観点で見たら桁違いのものとなっているんだけど、やはりそれらはシステムの一部分、特定の側面だと思うんだよね。


そもそもシステムというのは元々人が手作業で実施していたものを、正確で早く確実に何度でも実施できるプログラムという手続きをくみ上げることによって効率化していくものを差していると思うんだよね。それがより局所的に進歩して突出したものが多くはなっているけど、いわゆるシステムというのは人が何かを実現するための道具であるという定義には変化は無いと思うんだ。

だからシステムってプログラムとか仕組み単体ではなく、それを使用する人達、その後にあるルールなどを含めての総体がシステムなんだと思う。
狭義の意味でのシステムと広義の意味でもシステムの見え方、捉え方の違いかな。

で話を本題に戻して、今回のデジタル庁というものは狭義のシステム化という概念として捉えるのか、広義のシステム化という概念で捉えるのかということで大きく方向性が変わってくると思うんだ。
狭義の意味でのシステムというのであれば、所詮ツールであり、道具であり、使い勝手の良いもになれば良いんだけど、それだと行政改革には直結しないと思うし、短期的に開発をしてバグフィックスのための改版を繰り返すようなものになると思う。コロナの接触アプリのCOCOAがその代表例だよね。簡単に作ってとりあえず使ってもらいながらある側面の効率化を図るというもの。なので使いながらツールを育て上げるものであり、バグがあるのがダメだというような議論をするのはお門違いな指摘です。世の中のスマホのアプリがどれだけバグフィックスというものをアップデートという言葉でごまかしているのかをよく考えて見れば解ると思う。

でも、菅さんが言っているマイナンバーの導入とか行政の効率化ということを目指すという言葉からは広義の意味でのシステム化を目指しているのだと思うし、おいらもそのように進めて行くべきだと思っている。
そうすることで、縦割り行政の同じような書類を何枚も別々の場所に提出したりすることもなくなるし、本当の意味でのワンストップによる行政及び利用者の効率化ということが実現できることによるコスト削減と行政が本当に必要なことに対して取り組む時間を創成できるからね。システムを入れることによる単純な効率化だけでなく、本当に考える時間を創生できることによる波及効果も期待出来ることになるわけだ。

で、ここで一番問題となるのが「システムをどう作るのか」ということなのか?なんだろうか。
この考え方は完全に間違っている考え方です。これは断言出来ます。絶対にどうシステムを作るのかというところからスタートすると失敗します。
なぜかというと簡単です。
単純にシステム化をすると、縦割り行政の仕組みのままでシステムを構築してしまうことになるからです。現状のルールとか手作業をそのままシステムに載せてしまうと言うことになるわけです。
それが、今回のハーシスという保健所の情報を管理するためのシステム構築で実際に問題となっています。https://www.jsicm.org/news/upload/info_her-sys_200608.pdf
コロナ禍の中で保健所からの情報をFAXなどで連携するのは非効率であり、あちこちでデータ入力を行うのが問題だからという観点でハーシスというシステムを構築したんだけど、その内容が実に凄いことになっているようです。
色々な情報を集約したり取得したいがために、現場でもの凄い量の情報を入力する必要があるんです。しかもほぼ全てが必須入力項目で全てを入力しないと登録できない仕組みになっているみたいです。
確かに最終的には入力する情報は必要なのかもしれないけど、入力する医療機関とか保健所では、その情報を確実に入力しなければならないことになるんだけよね。普段でも忙しいところで大量の情報を入力しなければ医療機関との連携もできないし、濃厚接触者の追跡もできないような仕組みになっているために、それを行っている時間がないので結局はFAXによる連携を行ったり、適当な情報を入力することになってしまい、結果として統計として集めた情報の精度が不明確であり、それをうまく活用出来ない状況に陥っているというニュースが流れています。特に他の自治体との関係になった場合にはもの凄く面倒な手順が必要となるみたいです。
で、ハーシスを使用してもらうために結局入力する項目(必須項目)を圧倒的に減らす様なシステム改修を行っているみたいだけど、それだと必要な情報を収集することが出来ないことになってしまわないのかがとっても心配です。

これが現状のやり方をそのままシステムにした時に陥る典型的な失敗パターンです。
では、どうすれば良いのか。
とっても簡単ですが、とっても難しいんです。
何をすれば良いか、、、
それは業務の本質的な見直しです。既得権益とか過去の習慣とか前例とかに囚われずに、本来の目的に達するために一番最適な道を考えて、それに伴う組織改革と体制変更、予算の付け方の変更などの本質的な行政改革です。
これができて、手作業でも効率化でき、かつ有効となる業務運用手順ができたら、その中でどこの部分をシステムとして効率化していくのかということを考えてシステム構築をするというのが本来実施するべきやり方です。
これは総論賛成各論反対の議論が百出します。

なぜかというと、このやり方をすると今までそこの場所で仕事?作業?をしていた人が要らなくなってしまうからです。そこで使用している予算が大幅に減ってしまうことがあるからです。これが無くなると職場が無くなり、予算が少なくなるので、雇用を守ることと権力を行使するチャンスが奪われてしまいます。これは官庁にとっては非常に死活問題になってしまうわけです。予算が多いことがステータスになっているという事実は今の時代でも普遍的にあります。そこにいる人達は色々な理屈があるのかもしれないけど、結果としてはそうなっていると思います。

なので、システム庁を作るのは良いけれども、それが表面的にマイナンバーを色々な情報に紐付ければ良いというだけの結論になったり、システム構築の場所を一箇所にすれば良いみたいな安易な考えで臨むと大失敗すると思います。
この辺りのことを解っている人達は実は沢山いるんだけど、それは現場で苦労している人達の中にしかいないのでは無いかと思います。
その様な人達、適切な権限と責任を譲渡出来る勇気が為政者にあるのかどうか。
実務化である菅さんはその辺りのことは何となく感じているとは思うんだけど、本当にそこまで切り込むことができるのだろうか。

でも、是非とも取り組んで実施していって欲しい政策です。

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