見出し画像

甘美なる屈辱と隷属する主体 From Incest to Lesbian 

“見ろ……レスボスの女(レスビアン)が潜在的に恐れているROD(男根)だ……”
(『キャサワリー』ゴルゴ13 第13巻収録 発表1972年4月)

Emilyはレズビアンである。Emilyはwe(町の人々)にレズビアンだと知られないためにHomer Barronを砒素で殺した。Emilyは死んでもなおレズビアンを隠し通した。we(町の人々)にHomer Barronを殺してまでも彼を愛していたという偽りの痕跡を残して、Emilyは死んだ。 Homer Barronと交際するようになったのも彼がゲイであり、インポテンツ(性的不能者)だったからではないだろうか。では、なぜEmilyがレズビアンだとわかるのか、なぜHomer Barronがインポテンツだとわかるのか、なぜA Rose for Emilyというタイトルなのか、なぜEmilyの母が一切登場しないのか、といった様々な疑問に私独自の解釈と原文を照らし合わせて考えていきたい。

1.Emilyはレズビアンか? Homosexual and Heterosexual

She fitted up a studio in one of the downstairs rooms, where the daughters and granddaughters of Colonel Sartoris’ contemporaries were sent to her with the same regularity and in the same spirit that they were sent to church on Sundays with a twenty-five cent piece for the collection plate.

Emilyは階下の一室を画室 につくりかえてまで、陶器の下絵書きの教授をしたかった。サートリス大佐と同年輩の人たちの娘や孫娘に陶器の下絵書きを教授しながら、視姦(Stared)していたのだった。Emilyは彼女たちを視姦(Stared)するためだけに彼女は陶器の下絵書きを教授していた。しかし、Emilyは彼女たちに一切手を出さなかった。レズビアンを隠し通すことがEmilyの宿命だったからだ。

This behind their hands ; rustling of craned silk and satin behind jalousies closed upon the sun of Sunday afternoon as the thin , swift clop-clop-crop of the matched team passed:
“Poor Emily”.

婦人たちは日除けのうしろで首を長くのばしてEmilyとHomer Barronのドライブをのぞき見していた。しかし、覗かれていたのはEmilyではなく、婦人たちだった。ここでもまたEmilyは彼女たちを視姦(Stared)していたのだった。

2.去勢された北部と無垢なる南部 Homer Barron and Emily Grierson

―he liked men, and it was known that he drank with the younger men in the Elk’s club-

“reins and whip in a yellow” 黄色い手袋をはめた手に手綱と鞭

Homer Barronはゲイでありインポテンツである。彼は独身主義者だと公言していた。ゲイは結婚できない。yellowには劣ったという意味がある。手綱と鞭は男性器を象徴している。劣った男性器とは、つまりインポテンツのことである。

3.隠喩(メタファー)の勝利 A Pussy for Emily

なぜ、A Rose for Emilyというタイトルなのか。薔薇は女性器の象徴である。タイトルからもEmilyがレズビアンだとわかる。pussyは可算名詞で女性器または性交相手の女性を意味する。Emilyのモデルだといわれるエミリー・ディキンソンもレズビアンだったといわれている。フォークナーは真実の愛を見出せなかったEmilyにせめてもの温情としてタイトルをA Rose for Emilyにしたのではないだろうか。

4.精神的処女と物質的処女 The Incest

She told them that her father was not dead.

Emilyの破瓜はいつだろうか。私は初潮前だと思う。相手は父親である。初体験はお父さんだったのだ。しかし、Emilyにその記憶はない。初潮前にみた父のerectした男性器はあまりにも衝撃的だった。その潜在的記憶から、彼女はレズビアンになったのだ。そして、彼女は生涯を通して(精神的)処女だった。彼女は生涯を通してレズビアンを隠したのだった。では、なぜ母が一切登場しないのか。母性を出さないことで一層この父と娘の奇妙な関係を強調しようとしたのではないか。母性の喪失から私は近親相姦を抽出した。

5.Emilyという共同幻想 For RYUMEI Yoshimoto

この小説はEmilyの壮大なるレズビアン偽装の物語だったのではないか。Emilyは私たちの、この物語の登場人物の、あるいはフォークナーの共同幻想だったのではないだろうか。存在しているように見えても、単なる幻想にしかすぎないのだ。この世界、そして私も。

あえて言おうEmilyはレズビアンであると。


いいなと思ったら応援しよう!