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連載小説『八百万かみさま列車、たゆたう』第13話
二月六日は初午(はつうま)の日。お稲荷さんの総本宮「伏見稲荷大社」では稲荷山に稲荷大神さまがご鎮座なさった日ということで、大祭が開催される。今年も春が来て、山から田の神さまが里に降りてきてくださり、農業がはじまる。五穀豊穣&商売繁盛。
食堂車でお稲荷さんを食べているのは、田の神さまと空海さん。眷属のキツネ様もいらっしゃる。
田「この間はお湯屋さんで背中を流してくださってありがとう!空海さん」
空「いやいやなにをおっしゃいます。東寺ができた頃からお世話になっておりますからな。またぜひお背中をお流しさせてください。しかし美味しいお稲荷さんですな!」
狐「ええ、ほんとに。眷属として忙しく働いていますが、この甘いお稲荷さんを頂くのが楽しみなんですよ」
田「狐さんの大好物だからの!お!れんこんの酢漬けと柚子が入っていますよ!」
空「そうそう、最近はお稲荷さんの具材もアレンジが増えてね。コンビニでおにぎりコーナーをのぞくのが楽しみでね」
狐「私はカリカリ梅と大葉と白ごまと山わさびが入ったお稲荷さんが好きですよ。最近は山椒と山わさびをすし酢たっぷり目で食べるのも好きです」
田「わしは農繁期になると、お昼はカップラーメンのきつねうどんをよく食べますぞ。甘いお揚げが最高なんじゃ」
空「わしもすきです!あのお揚げは絶品ですよね。油っぽくなく、お出汁が効いていて美味ですな!」
狐「私はきつね蕎麦もよく食べますよ。あまりないメニューなんですがね、かけそばに甘いお揚げのマリアージュは最高ですよ」
空「わしは四国出身だからうどん派ですな」
田「わしはどっちも好きじゃ!」
空「わっはっはっ。確かに!」
田「これから、花が続々と咲いてきますな」
空「梅→桃→桜の順に咲いていきますぞ」
狐「そうそう、2月限定発売の"椿餅"を食べてみたいんですよ」
田「なんでも、源氏物語にも書かれていたそうですな」
空「和菓子の老舗さんが今でも作り続けているそうですな」
狐「うーん。食べたい!店舗にぴゅっと行ってこようかな…」
田「椿は春の木と書きますからな。いい名前ですな」
空「ほんとに。自生の北限は青森県の夏泊半島だそうですよ」
狐「寒くても立派に育っていますよね」
田「椿油と言えば"東の大島、西の五島"と言うようですよ」
空「伊豆大島と五島列島ですな。どちらも海と空がきれいな良い場所ですな!」
狐「そろそろ梅の開花がはじまるので、梅まつりも楽しみですよ」
田「太宰府さん、北野天満宮さん、行きたい場所がたくさんありますよ」
空「この列車でも神さま勢揃いで梅見の宴をひらきましょうかな」
狐「ぜひ!ぜひ!」
立春寒波で寒さがぶり返しているけれど、これから三寒四温を繰り返して春になっていきますね。ちょっとそわそわしている八百万の神さま列車の車内でした。
つづく…