ディープラーニングで解決できる課題とは何か
今流行の「ディープラーニング」。
名前は聞いたことあるけど、実際はどこに使われているのかわからないという方も多いのではないのでしょうか。
私もそんな一人でしたが、『ディープラーニング活用の教科書』を読むことで実社会のどこで応用されているのかを理解することができました。
今回は、『ディープラーニング活用の教科書』を読んで、面白いと思った事例を紹介します。さらに、実際の事例の共通点から私が考えるディープラーニングを用いてできる業務改善についても書きました。
プロフィール
八百 俊哉(やお しゅんや)
株式会社フィードフォース 2020年入社 新卒1年目
データ分析チーム 駆け出し機械学習エンジニア
大学では機械学習を専攻(画像処理)
読んだ本の概要
ディープラーニング活用の教科書
AIは研究から実用フェーズへ――
急速に広がるディープラーニング活用の今と未来がわかる!
国内35社の事例を体系的に取り上げ、先駆者が苦労したポイントを解説
読み始めた背景
私は、大学ではディープラーニングを専門に勉強していました。大学での研究は、新しいネットワークを構築すること(YOLOv2の改良提案)を専門にしていた。
しかし、実際にそれらがどのように応用され、顧客に利用されているのかは知りませんでした。
大学でディープラーニングを学んだけれど実務は未経験な人が、実務とディープラーニングを結びつけるために読みました。
実際にディープラーニングはこんなところで使われていました
本書では、実際にディープラーニングが活用されている事例がいくつも掲載されています。その中でも特に興味深いと感じた事例を2つ紹介したいと思います。
事例1 エルアンドエー「福岡のクリーニング店が50万円で「無人AI受付」を作れたワケ」
福岡県田川市にあるクリーニング店が2018年7月にAIを活用した無人受付を開始しました。利用者は、タブレットを用いて会員登録を行い、テーブル上に設置されたカメラの下にクリーニングに出したい洋服を置きます。そうすると、テーブルにあるiPadの画面にカメラの映像が表示され、その下に「ズボン」「コート」など自動的に識別された洋服の種類が表示されるようになっています。学習データは自社で用意するため、洋服の写真を撮影したものに専用のソフトを使い、約1ヶ月間かかったといいます。
クリーニング店のAI無人受付システムを開発したエルアンドエー副社長の田原氏は、2005年に家業のクリーニング会社を継ぐことになった際に、「日本の高齢化と人手不足を考えるとクリーニング店は変わらないといけない」と痛感したため、「クリーニングの無人店舗」を考えるようになったそうです。
田原氏はこのシステムを導入するのに新しく購入したのは、Macbook Proや店頭に置くiPadなどで合計50万円も満たないそうです。ディープラーニングは、人材、投資額、地域間の情報格差などが活用の難しさの要因と語られるが、熱意と行動力でその大半は解決できるということを、田原氏の取り組みから理解できると思います。
事例2 武蔵精密工業「ホンダ系自動車部品メーカー、不良品の自動検知システムを試作」
ホンダ系自動車部品メーカーの武蔵精密工業はAIスタートアップ企業のABEJAと共同で、ディープラーニング活用による製造不良の自動検知システムのプロトタイプを試作・実験に取り組んでいます。これまで人による目視で実施してきた検査を自動化しようという取り組みです。
対象部品は、ベベルギアというもので、傷などの不良があると、車への影響が異音、焼き付き、破損といった形で出るため、出荷検査がとても重要なプロセスとなっています。
ただし、目視検査の場合は、検出が人の五感頼りで習熟度にバラ付きがあり、長時間にわたる高負荷作業だといいます。武蔵精密工業では、これをオートエンコーダーという技術を用いて自動化を試みました。
その結果、2017年11月の時点で人の目視検査に近い精度をほぼ実現できたといいます。現在は、プロトタイプ機1号を試作して、実証実験に取り組んでいます。
生産現場におけるディープラーニングの活用は、実証実験にとどまったままで実運用に移行するケースがまだまだ少ないです。武蔵精密工業は専攻事例を作るべく自社の生産現場で実証実験を行いながら、ディープラーニングの活用を目指しています。
これらの事例の共通点から実際に業務に導入する上で大切なことを考えてみます。
ディープラーニングを導入することで業務改善できることとは?
これら2つの事例には共通項がありました。それは「人が一定時間をかけて作業を行っている」ということです。
今回紹介しきれなかった多くの事例の中にも、人が一定時間をかけて作業を行っていた企業がありました。そして、それらをディープラーニングを用いて解決することができていました。
この共通項を解消することで「習熟度によって結果が左右されない」や「人材不足」などの様々な課題解決に向かうことが考えられます。
現在、人が行っている作業になんらかの特徴や共通点がある時、ディープラーニングを用いることで、人が行うことと同じ精度またはそれを超えた精度で素早く行うことができるのです。
しかしながら、ディープラーニングが全ての「人が一定時間をかけて作業を行っている」作業を代用できるわけではありません。
解決できない課題とは?
ディープラーニングを用いる上で最も大切になるのものが、「データ」です。
ネットワークの構造などは検索すれば、たくさん出てきますが、データはそうではないです。
特に、今回紹介したエルアンドエーさんや武蔵精密工業さんのような例だと、自社で用意しなければならないです。自社で用意する場合だと、教師あり学習の場合は、正解データも作らなければなりません。データ作成を疎かに行ってしまうといくら素晴らしいネットワークを作成したとしても、結果はついてこないです。いかに学習が進みやすいデータを集めるかが成功の鍵を握っています。
データが集まらない、または集まりにくい分野に関しては、ディープラーニングでの課題解決は難しいです。
何を入力として何を出力にしたいのかを考えることで、必然的に必要なデータは導き出されます。それらのデータが集められるかを検討することがディープラーニング導入の第一歩になります。
結果はすぐに出てこない
データが用意できて、いざ実装してみたけれどもうまくいかない。ということは、よくあることです。
実践してみてうまくいく場合もあるし、うまくいかない場合もあります。うまくいかない場合は、その原因がデータにあるのかネットワークになるのかも実践してみないとわからないことが多いのです。
本書でも以下のように紹介されています。
AIのシステム開発は、要件定義からテストまでの段取りを踏んだ「ウォーターフォール開発」とは異なり、最終成果を約束することが難しく「システム開発一括見積もり」を出すことが困難
実装して結果がすぐに出た場合は、幸運で予算も少なく済みます。しかし、結果が出ない場合は、そこから原因を見つけ出して、改善していく必要があります。
ここから結果が出るところまで修正を繰り返すところが本番です。
せっかくデータを用意したのに最初の結果がうまくいかなかったからと言って諦めずに改善を進めることが大切だと思います。
さいごに
『ディープラーニング活用の教科書』にある事例を元に実社会に導入し、業務改善を行うのに大切なことについて考えてみました。
まとめとして「ディープラーニングで解決できる課題」とは、
人が一定時間をかけて作業を行っており、その作業に特徴や共通点が見出せそうなこと
学習データが十分に用意でき、それらの質が高いこと
『ディープラーニング活用の教科書』には、もっと多くの事例が掲載されています。もっとみてみたいという方は、ぜひ読んでみてください。
また、私自身駆け出しの機械学習エンジニアですので、もっと大事なことあると思われた方は、ぜひTwitterに連絡ください!!
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