第4回 生成AIウィークリーレポート
「生成AIウィークリーレポート」第4回へようこそ!!
生成AIの世界は日々目まぐるしく進化しており、そのスピードに追いつくのは容易ではありません。本レポートでは、最新動向を効率的に把握したい方に向けて、週単位で重要な情報をまとめてお届けする予定です。
画期的なサービスの紹介や、技術の登場だけに焦点を当てるのではなく、生成AIに関する権利問題やその解決策などにも対応して、幅広くまとめていこうと思います。
最新のトレンドを一緒にキャッチアップしましょう。
トピック1:SNSデータ活用の新時代 ― Xが示すプラットフォームビジネスの転換点
Xは2024年10月16日、プライバシーポリシーと利用規約の更新を発表し、11月15日より新しいポリシーが発効することを明らかにしました。今回の改定における最も重要な変更点は、ユーザーデータの第三者による利用範囲の拡大です。
具体的には、第3条の「情報の共有」において、第三者がXのユーザーデータを生成AIモデルのトレーニングに使用できることが明文化されました。この変更により、ユーザーがオプトアウトしない限り、サードパーティ企業がXのデータを独自のAIモデル開発に活用することが可能となります。
今回のXによる規約改定は、SNSプラットフォームにおけるビジネスモデルの大きな転換点を示唆しています。実際、2024年5月に発行された広告クリエイティブ生成AIの規約においても、AIモデルやアルゴリズムの改善のためにユーザーの入力データを活用する権利を明記しており、これは今後のトレンドになりつつあることがわかります。
このような動きは、SNSプラットフォームの収益構造に大きな変革をもたらす可能性があります。従来のSNSは「ユーザーの場」を提供し、そこに広告を掲載することで収益を得るモデルが主流でした。しかし、これからはユーザーが日々生成するデータそのものが、新たな価値を生み出すソースとなっていくのではないでしょうか。特に、AIモデルの開発・改善に活用できるデータは、プラットフォーム企業にとって重要な資産となっていくと考えられます。
ただし、この変化はユーザーにとって新たな注意点も生み出します。投稿内容が第三者の権利を侵害していないかの確認や、自身の投稿データがどのように活用されるのかについての理解が、これまで以上に重要になってくる可能性が考えられます。
トピック2:AI時代の声の権利保護へ ― 無断使用問題を契機に新たなルール作りの動き加速
声優業界において、AI音声の無断使用に関する問題が大きな注目を集めています。2024年10月15日、「ドラゴンボール」のフリーザ役で知られる中尾隆聖さんをはじめとする25名の声優が「NOMORE無断生成AI」という活動を開始しました。この活動では、YouTubeなどのプラットフォームで公開された21秒の動画を通じて、許可なく生成されるAI音声への警鐘を鳴らしています。
一方で、業界内では適切な形でのAI活用も始まっています。声優事務所の青二プロダクションは、AI音声プラットフォーム企業のCoeFontと協業を発表。野沢雅子さんや銀河万丈さんら所属声優の音声データを活用し、多言語展開やナビゲーションシステムなどへの展開を計画しています。ただし、アニメーションや映画の吹き替えなど「演技」の領域は除外し、明確な活用範囲の線引きを行っています。
現在の日本の法制度では、声そのものの保護は極めて限定的です。パブリシティ権による保護は可能なものの、急速に発展するAI技術に対しては十分とは言えない状況です。この課題に対して、アメリカのテネシー州では「エルビス法」を制定し、声を個人の財産として明確に保護する新たな取り組みを開始しています。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/chitekizaisan2024/0528_ai.pdf
日本においても、青二プロダクションとCoeFontの協業事例が示すように、適切な権利処理を前提としたAI活用の道筋が見え始めています。今後は、「NOMORE無断生成AI」の活動に見られるような、建設的な議論を通じた新しいルール作りが重要になるでしょう。
このような動きは、AI時代における知的財産権保護の在り方を考える上で重要な先例となり、声優業界に限らず、クリエイター全体の権利保護にも影響を与える可能性があります。
トピック3:生成AIの品質評価結果が公開 ― 大きな性能差が浮き彫りに
大手AI企業の生成AIモデルに対する包括的な評価テストが実施され、注目すべき結果が明らかになりました。
このテストでは、性別や人種による差別の有無、悪意のあるプロンプトへの耐性などが評価されました。最高スコアを記録したのはAnthropicのClaude 3 Opusで、平均0.89を達成。一方で、OpenAIのGPT3.5 Turboは0.46、アリババ・クラウドのQwen1.5は0.37、MetaのLlama 2は0.42と、比較的低いスコアにとどまりました。
テストを実施したラティスフローは、この評価システムを開発者向けに無料提供する予定です。欧州委員会はこの取り組みを、AI法の技術要件への具体的な一歩として歓迎する姿勢を示しています。
生成AIの私たちの生活への浸透は、もはや止められない潮流となっています。ビジネスからプライベートまで、AIとの共生は当たり前の時代へと突入しつつあります。
しかし、今回の評価テストが示すように、生成AIモデル間には大きな性能差が存在します。特に日本では、このような包括的な評価基準が未整備な状況です。偏見や差別的な内容を含む回答、悪意のある攻撃への脆弱性は、社会に深刻な影響を及ぼす可能性があり、何らかの評価基準の確立は急務と言えます。
一方で、AIの規制や評価基準に全てを委ねるのではなく、私たち一人一人がAIの出力を適切に判断できる目を持つことも重要です。生成AIは強力なツールですが、あくまでも補助的な存在であり、最終的な判断は人間が行うべきなのではないでしょうか。
トピック4:AIと人間の協業で成功 ― パッケージデザインをAIと作る
パッケージデザインの分野で画期的なAI活用事例が生まれています。デザイン専門会社のプラグは、独自開発したAIシステムを用いて伊藤園「お~いお茶」のパッケージデザインを手がけ、リニューアル後の初月で前年比1.6倍の売上を達成しました。
このシステムは、数百件のデザイン案を数分で生成し、1020万人分の消費者調査データを基に評価を行います。その結果、従来6ヶ月かかっていた制作期間を2~3ヶ月に短縮。さらに、人間では思いつかないような斬新なアイデアを提案し、選定プロセスでのコミュニケーションも活性化させています。
デジタル技術の導入では、しばしば人間の仕事をAIで完全に置き換えようとする議論が行われがちです。しかし、今回のプラグの事例は、AIと人間の効果的な分業の重要性を示唆しています。
AIは大量のデザイン案を短時間で生成し、人間の想像を超える発想を提案できる一方で、著作権の問題や細部の品質管理には課題があります。プラグはAIの強みを活かしつつ、最終的な調整は人間が担当するというバランスの取れたアプローチを実現しています。
さらに注目すべきは、段階的なAI導入のプロセスです。評価AIの開発から始まり、生成AIの活用へと徐々に範囲を広げていった方法は、多くの企業にとって参考になるでしょう。このような段階的なアプローチにより、AIの課題を適切にコントロールしながら、業務改革を実現することが可能となります。
さいごに
第4回 生成AIウィークリーレポートはいかがでしたでしょうか。
今回のトピックも、生成AIの技術革新と、それに伴う社会的・法的課題のバランスを考える上で重要な要素になるのではないでしょうか。
来週も新たな情報と洞察をお届けしますので、ぜひ楽しみにしていてください。生成AIの世界は日々進化しており、私たちはその最前線の動きをお伝えしていきます。
最後に、Generightでは画像生成AIの権利課題を解決できるソリューションを展開しています。AIと著作権の問題に関心をお持ちの方、あるいはこの分野でのソリューションをお探しの方は、ぜひご連絡ください。皆様のニーズに合わせたサポートを提供させていただきます。
今後とも、生成AIウィークリーレポートをよろしくお願いいたします
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