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猫ハリ治療録B「原因不明の両脚麻痺の子猫マロタン」


マロンちゃんは、現在4歳のサビ柄の女の子です。私のお友達のお姉さんのお家で暮らしています。表紙の写真に見えるように、元気なねこになりました。

かなり美人さんに育ちました。もう誰もこの猫が両足がなえて、大変な怪我をしていたなんてわからないでしょうね。ご家族でも普段はすっかり忘れているとか。。。


初めて連絡が入ったのは、2020年9月12日のことでした。お姉ちゃんの旦那さんが駐車場で子猫を拾ったけど、足が動かないうえに、うんちが止まらない。どうにかなるだろうか。というような話だったように思う。

連れてきてもらうと、獣医さんでお腹を縫ってもらったという。連れてきたのが友人だったために、どういう経緯で今の状態になっているのか、よくわからなかった。

問診で聞き取った状況をまとめると、

1、拾ったあと、病院へ行った。腸が出ていたので、お腹を切って中に入れ込んだ。2回ほど開腹手術をした。(この話からでは、腸が肛門からでていたのか、腹の傷から出ていたのかわからなかった。)

2、肛門から軟便、下痢に近い便が少しずつ漏れ出てきている。

3、両脚に力がきちんと入っていなくて、特に右足がだらんと伸びたままになっている。この時点で、自分の力で座ることはできた。

開腹手術のあとが痛々しい。肛門が赤くただれているように見える。多分いつも便が漏れているから、お尻が炎症を起こしているのかな、と思った。お腹を上にして抱えているのに、右脚がだらんと垂れたままだ。普通の猫は、脚がキュッとお腹の方へ縮むものだ。左足は右に比べると、少し力があるが、この写真では、私の手に引っかけて止めている。


とりあえず、テイ針で全身をさすってやって、元気になるように体を温め、血流が良くなるような針をした。そのあと、腰や尻尾の付け根あたりに、セイリン02番針をした。前回の治療録Aと同様。

⚫︎足と肛門の状態を確認する動画【閲覧注意】


⚫︎カゴの中で針をされている動画


家で足や腰のマッサージをしてもらうようにお願いして、帰ってもらいました。家族で懸命にマッサージしてくれたようです。

⚫︎マッサージの実演動画

治療時間は全部で10分程度。内訳はテイシンが3分くらい、豪針を置鍼(チシン:針を刺したまま置いておくこと)5分程度。

その2日後、9月14日。

両脚とも、少し力が出てきて、膝の位置で正常な屈曲に近い感じになっている。踵はまだ伸びたままだ。
お家では、家族で懸命に脚のマッサージをしてあげた、とのこと。


⚫︎この日のテイシン治療の様子の動画。

お腹の傷がきちんとくっついているので、足のマッサージに加えて、運動させてやるように指導した。

⚫︎説明の実演動画。


この時期は、毎日か、2日ごとの頻度で治療をしていた。治療の量は最初と同じ。うちではマッサージと運動を続けてもらっていた。


9月18日。足をきちんとたたみ込んで、正しく座れるようになった。

左足。
右足がよくひっくり返る、とこの頃から飼い主さんが話していた。もともと右足の方が麻痺が強かった。そのせいで、足の甲を床につけていることが多いらしい。この時点で、右足の甲が少し浮腫んでいる。


9月22日。初診から10日。

⚫︎針をおとなしく受けている動画

⚫︎足の裏にテイシンをしている動画


10月6日。23日目。

足をぶらぶらさせて脚の収縮具合を確認している動画。うんちはこの時点ですでにきちんと止まっていた。便が止まらないと、生活が苦労です。止まってよかった。足の状態を確認している動画。


左足は正常な緊張が戻っている。膝も踵もきちんと収縮してきた。
右足はだいぶ良いが、まだ力が入りにくそう。足の甲が毛がはげて、浮腫んでいる。多分感覚の麻痺が多少あって、右足の甲を足首あたりからひっくり返して、足の甲を踏みつけて足の裏のようにして歩いていても気にならないらしい。

しかし、これは問題だと私は考えていた。もし、このまま足の麻痺(運動麻痺、感覚麻痺)がきちんと治らず、足をひっくり返して歩き続けるとやがて足の皮がめくれてきて傷ができ、そこが感染を起こして、足が使えなくなり、最悪、足を切ったり手術になるかもしれない。どうにか針治療で足の裏できちんと歩けるまで持って行かねければならないと考えていた。

ご家族は、ウンチが漏れなくなっただけで、もう万歳!という感じであったが、以上のことを説明して、もうしばらく治療を受けてほしいと伝えて、同意をいただいた。


⚫︎10月12日。足が逆にならずに走っている動画。

一カ月後です。お家の中で足の甲を踏まずに、走るようになったと連絡あり。
もう飼い主さんは、十分と考えていたようですが、足は足裏で完全にきちんと歩くようになるまで、治療しようと話し、週に一回か2回程度で継続。

さらに一カ月後。11月13日。初診から二カ月。治療台の上で、両脚とも足裏できちんと歩けるようになった。動画あり。


この頃、ほぼ足のための治療はしなくなりました。
ただこの頃から、便秘になって便が出ず、そのせいで食欲が出ないという問題が出てきた。獣医さんで緩下剤を処方してもらうも、出ないで苦しむときがあったため、
テイシン針でウンチが出るように治療することがありました。

飼い主さんと友人の話によると、腰の骨に骨折のあとがあると、便秘を見てくれる獣医師の先生から説明があったとのこと。
保護したころ、高い所から落下したか、車にはねられたかなどの外傷を負っていたのではないか。それが、足の麻痺、大便の漏れ、そして便秘の原因になったかと、あとになって考えてみた。

針治療が効果があったとするなら、その骨折部位の神経や筋肉へ作用し、血流が増加することで回復が促されたのかと思う。


⚫︎ずいぶん成長したマロンちゃん。歩行の確認動画。


2022年9月。2歳の写真。
この頃になると便秘は、なんとかなるようになったとのこと。

2024年8月
治療録の作成と公開について、了解をいただくために連絡を取りました。ついでに、現在の写真をいただきました。立派な大人猫になりました。健康に生活しているとのこと。よかったです!

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