息子くんと私の終わらない訓練。
息子が古本屋で漫画本を16冊購入してきました。私は満足げにホクホクした息子を「家が潰れるだろ!このバカ息子!!」と叱りつけました。なぜなら今週、合わせて20冊の本を購入していたらからです。
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知的障害の息子ですが、もう何年も「お金の使い方」を勉強しています。障害者の事業所でささやかな自分のお給料を得た日からこの訓練がスタートしました。
「障害者の親は、子どもの欲しいものを先回りして渡しがちです。ですから自分の欲しいものを手に入れる喜びを知らせ、そこから労働意欲につなげます。欲に火をつけるので大変だと思いますが頑張っていきましょう。」
信頼できる事業所を探し見つけたのは私です。そしてその事業所で頑張るのは息子です。私は担当者からの言葉に覚悟を持って挑むことになりました。
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事業所では工賃支給日に給料を袋分けに仕分けします。お弁当代や交流会の参加料などを袋分けにします。少ないけれど家への生活費の袋もあります。そして残りの工賃で1ヶ月のお小遣いが支給されるのです。
当時の息子は物欲が乏しく、「これはどうか」と聞いても、首を振り「いらない」と意思表示をするばかりでした。しかし自分の財布から買うものに私がクチバシを挟まないようにしていると、ようやく「好きな本」を買うようになりました。
しばらくするとお小遣いをもらった途端に、全てを使い果たすようになりました。そして残りの日々では、欲しいものが買えないとイラつき、私に「金をくれ」と財布を覗くようになりました。
その都度。事業所と相談しながら指導を繰り返しました。事業所では良く働きますが、帰宅すると欲しいものが買えないと私に八つ当たりをするのです。
そこで工賃を1週間ごとに支給するようにしてもらいました。古本屋の存在を教えました。それでもお金を使い果たすのでその度に大げんかを繰り返しました。
それでも長い時間を費やし、ようやく私にお金をせびることが少なくなってきまいした。しかし毎年、表紙が変わる度に新しいアンパンマン大百科を購入するのにはうんざりします。車や恐竜の大百科事典シリーズを各種買い求めるのです。それでも小遣いは自分の給料だからと黙認しました。
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息子は多趣味で、武者甲冑、忍者、世界のお面、妖怪、水木しげる、車、バイク、サッカー、ラグビー、野球と幅広い本を買い求めます。ガンダム、アンパンマン、プリキュア・・・把握しきれないほどの漫画やアニメが好きです。
いろいろなジャンルの本を購入するので今度は本棚のキャパ問題が出てきました。息子専用の本棚がありますが、本棚の上段に本を置くのは禁じています。どう考えても本が多すぎて危険です。年に何度か息子と本を整理して廃棄する本を選ばせますが、すぐに新しい本を持ち込むのです。
昨年は事業所と相談し、スタッフが指導のために家庭訪問して頂き、その場で指導をしながら、みんなで本を片付けました。このように家庭と事業所で密に連絡を取りながら、お金の学習と整理整頓を学習しているのです。
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そこへ息子が16冊の漫画本を持ち込んだのです。私が怒ることは予想もしないのは息子の浅はかさです。要するに息子はバカタレです。もちろん私は怒りたおしました。息子は黙って本棚を整理して、16冊の本を押し込んでいました。
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息子の行状は、支援計画担当者にも知らせています。事業所の3者面談も近いです。家での守銭奴ぶりや横暴さを思いっきり報告するつもりです。
ガイドヘルパーさんも「帰宅した時に靴を片付けることは出来るようになったようなので、次は外出の準備を本人だけにさせてみましょう。」私がするのが当たり前だったことも、やらせてみるようにと言ってくれます。
「お母さん諦めてはいけませんよ。まだまだいけます。彼は出来るようになります。」そう言って声をかけてくれるのです。その度に私は気づいたり反省したりします。
このように息子にとって生活のすべてが訓練です。そして未熟者で人間が出来ていない私にとって息子にキレない、諦めないという訓練なのです。
私と息子は終わらない訓練に取り組みながら生きています。