【市民的コモンズに関する読書会】『人が集まる場所をつくる-サードプレイスと街の再生-』
著者 国分裕正
街制作室株式会社代表取締役社長。1962年、北海道・歌志内市生まれ。自身が代表を務める街制作室では「風土の継承」「コミュニティの創造」「自然との共生」を軸に、地域文化が根づく街づくりを手がける。これまで国内外での街づくり、都市再開発、地場文化発信拠点、屋台村など、約30年間で500カ所以上の街づくりや施設づくりに携わっている。
目次
はじめに
第1章 気仙沼の「壁」はなぜつくられたのか
第2章 文化や景観を無視した街づくり
第3章 いつまでも捨てきれない東京化という幻想
第4章 サードプレイスとは何か?
第5章 サードプレイス的街づくりの実例
第6章 サードプレイスにみる街づくりの未来
おわりに
概要
サードプレイス(第三の場所)とは、地域ならではの魅力に着目し、人々が自然と集まるような街づくりの拠点を指す。現在地域の再開発にあたり、安易に大型商業施設や駅ビルを建設することで、歴史や風土が破壊されている。この本ではそうした「東京志向化」や「スクラップ・アンド・ビルド型の街づくり」に警鐘を鳴らし、風土の継承・コミュニティの創造・自然との共生という3つの要素を元に、地域の魅力を活かした街づくりに活路を見出す。
市民的コモンズに関する内容
第1章 気仙沼の「壁」はなぜつくられたのか?
-補助金による街づくりの功罪-
行政の補助金は年度ごとに支出されるため、3年~5年かかる再開発はどうしても作業工程に遅れが出て、かかる費用も増えてくる。かといって自社の利益を最優先する民間企業に街づくりの主体を任せるわけにもいかない。方向性を共有し、手綱を握るのは地域住民の役割である。
第3章 いつまでも捨てきれない、東京化という幻想
-ミニ東京化する地方都市-
地方都市に駅ビルや商業施設が建設され、「ミニ東京化」することが発展であるという考え方が浸透してしまっている。都会を追うのではなく、地方独自の魅力を追求することが求められる。
第4章 サードプレイスとは何か?
サードプレイスはアイルランドのパブがベースになっており、相互に交流できるのが特徴である。現在の日本の心地よいとされる空間は、1人で落ち着けるような「マイプレイス」的な空間が多く、都市化による孤立に加え、もともとコミュニケーションを得意としない日本人にとって孤立問題は深刻である。商空間やカフェなどは、買い物や食事などそれそのものを目的とするのではなく、コミュニケーションを目的として集う場所としてあってもよい。
第6章 サードプレイスにみる街づくりの未来
-確度の高いチャレンジに必要なこと-
確度の高いチャレンジに必要なのは、リサーチすること、歴史を調べること、現状を見ること、人の話を聞くことで、街の魅力を掘り起こすこと。東京のものであふれた地方都市に、地元のものを増やしていく。
⇒隠れているだけで、街の魅力がないことなんてない!
その他面白い内容
第2章 景観を無視した街づくり
-文化が失われた地域とテーマパーク化する古都-
京都と金沢の2つの観光地を比較すると、京都は人を呼び込み開発が進みすぎた結果、古都としての趣が欠けてしまっている。一方で金沢は、文化や景観を守るために厳しい制約で固め、生活感に欠けたテーマパークのような空間を演出してしまっている。文化と生活感の両方を残すには、地元の人に愛される地域づくりをすることが重要である。地域に愛される場所には必ず人が集まる。
感想
観光地はどこか日常とは切り離された空間として捉えていたが、街の主人公はあくまで地域住民であり、過度に観光地化しすぎず、地域に愛されることが外部の観光客を呼び込むという考えは逆説的でおもしろかった。しかし、人々が非日常を味わうために観光地に訪れているとすると、観光地に生活感は本当に必要なのか本当にう。そういった観光地に対する価値観から変えていくことが大事なのだろうか。それともすでにそのような変化が生じているのだろうか。さらに調べていきたい。
(S. F)