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『オアシス:ネブワース1996』を観た話

「一番好きなバンドは何?」と聞かれたとき、自分は何と答えるだろうか。邦楽では様々な名が挙がるが、洋楽に限れば間違いなく『Oasis』と答えるだろう。そんなOasisが1996年8月10日、11日に開催したネブワース公演の舞台裏に迫ったドキュメンタリー映画『オアシス:ネブワース1996』が先日、公開された。

1.Oasisとは

「Oasisとはなんぞや?」という方のために説明すると、Oasisとはイギリスのマンチェスター出身のロック・バンドである。リアムとノエルのギャラガー兄弟を中心として1994年に『Definitely Maybe』でアルバム・デビューすると、当時のイギリスの最速セールスを記録した。1995年に発売されたアルバム『(What's The Story) Morning Glory?』は全世界で2500万枚以上を売り上げ、90年代イギリスの『クール・ブリタニア』を象徴するバンドの一つになった。2009年にバンドは解散するが、その影響力は未だに衰えておらず、多くのフォロワーを生み続けている。

2.ネブワース公演とは

Oasisはキャリア絶頂期の1996年8月10日、11日にイギリス・ハートフォードシャー州・ネブワースにて大規模な野外コンサートを行った。このコンサートは2日間で約25万人超を動員し、チケットには約250万件もの予約が殺到したそうだ。これは当時のイギリス人口の2%以上がチケットを購入しようとしたことになるから驚きだ。マンチェスターの公営住宅に住んでいた若者がデビューからたった2年で世界最大のバンドとなった。そのことは当時のイギリスの時代背景から考えても象徴的な出来事であったのは確かである。

3.映画を観ての感想

自分は2000年生まれのため、このネブワース公演をがどのようなモノであったかはインターネットの情報でしか知らなかった。それに加え、この公演は今まで公式からソフト化されていなかったため、断片的な映像やブート音源しか残されていなかった。それが2021年にクリアな映像と音で自分たちのもとへ届くというのは何とも不思議であり、まるで1996年にタイムスリップしたような感覚であった。てっきり当時のライブ映像のみで構成されていると思いきや、当時を知るファンのインタビューが多く挿入されている。純粋に音楽を聴きたい人にとっては肩透かしを食らったような感覚になるかもしれないが、自分には当時を知る貴重な証言であった。この映画は単純なライブドキュメンタリーではなくOasisとそのファンの物語であると感じた。

ネブワース公演はOasisのキャリア絶頂期で行われたため、バンドの演奏もノリに乗っている。特にリアムのボーカルはまさに全盛期である。ライブの終盤で演奏された『Champagne Supernova』はThe Stone Rosesを脱退したばかりのジョン・スクワイアが参加しており、このライブの名シーンの一つである。

昨年から続くこのコロナ禍で多くのライブやフェスが中止に追い込まれた。このタイミングで今年、ネブワース公演から25周年を迎え、ドキュメンタリー映画が公開されたのは何か運命的なものを感じずにはいられなかった。きっと劇場でこの映画を観た多くの方はマスク越しに心の中で1996年当時の観客とともに大合唱しただろう。イギリスでは徐々に大規模な野外フェスティバルが再開されつつある。リアムもソロとして多くのフェスに参加している。また日本でリアムとノエルを観ることができる日もそう遠くないのかもしれない。この映画を観て、その日が来るまで生き続けなきゃなぁとそんなことを強く思った。


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