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Disneylandを考察する~フロンティアランドの廃線跡~


Frontierlandにある廃線の謎

カリフォルニア州・アナハイムにあるディズニーランド・パーク。言わずと知れた、世界最古のディズニーランドである。「古いディズニー像」に関心を抱く私は、8年ぶり2度目のインパークにわくわくするとともにより細かい部分をよく見るべく、アトラクションもそこそこにぶらぶら歩いたり船や鉄道に乗ったりと贅沢な時間を過ごしていた。

帆船コロンビア号からニューオーリンズを臨む

偶然にも休業中と重なりMark Twain Riverboat(蒸気船マーク・トウェイン号)に乗れなかった私は、帆船コロンビア号に乗船し船尾で最古のパークに浸っていた。すると、不思議な光景に出くわしたのである。

それは、アメリカ河を航行するコロンビア号に乗船し、1周して下船する直前あたりである。船尾・進行方向に向かって左側である。線路やトンネルが見えるのだ。しかも、Disneyland RailroadやBig Thunder Mountain Railroadの線路ではない。岩や木で半分埋もれているのである。

そう、まちがいない。廃線だ。


木々に覆われているが、明らかに線路が通っている。(撮影:同行者)



線路はトンネルに向かっている。他の鉄道たちとは異なる。(撮影:同行者)
船尾から線路を見る
後ろにある尖った岩はGalaxy's Edgeだ。


廃線の脇には荷揚げ用場までご丁寧に残っている。

これはなんだろうか。このパークには無意味なようで本当に無意味なものは存在しない。
その答えはパークの歴史の中に残されていた。そう、過去のアトラクションの廃線である。

世界最古のパークに残された廃線

この記事を書いている2024年2月段階でカリフォルニアのディズニーランドは68周年である。既に還暦を越え、既にアメリカ史の遺産になりつつあると言ってもよいだろう。
歴史を持つということは、同時に数多くの変化を経験したということでもある。
それを証左するのが、パーク内のアトラクションの変遷である。2023年の地図と、開園当時の地図を見比べてみる。

2023年の地図(Magic Guideより)


1955年開園当時の地図(disneyavenueより)

1955年の地図がやたら簡素なのもあるが、全体的にスカスカなのが見て取れる。It's a small worldがなければ、Matterhorn Bobsledsもない。Tomorrowlandについても、Space Mountainがないのは少し寂しい。

もう一つ、ディズニーランドに欠かせないアトラクションが欠けている。それは、Big Thunder Mountain Railroad(BTMR)である。日本のパークも1983年開園当時はなかったのだが、アナハイム版も開業は1980年11月である。

現在のBTMRの位置には、異なるアトラクションがあった。それがRainbow Caverns Mine Trainである。1956年7月開業で、ちょうど開業1周年の時期である。このアトラクションは、1960年に拡張され、1960年にMine Train Through Nature's Wonderlandとなった。このアトラクションは砂漠地帯を列車で回る、小型のDisneyland Railroadのようなものだった。

Mine Train Through Nature's Wonderlandとは?

日本では聞き慣れないアトラクションだが、英語版Wikipediaにはいくつか情報があるので引用する。

このアトラクションでは、ゲストは架空の街Rainbow Ridgeから列車に乗り込み、Cascade Peak, Bear Country, Beaver Valley, the Living Desert, Devil's Paint Pots (multicolored geysers), and Rainbow Cavernsなどを通過する。
(Mine Train Through Nature's Wonderlandより)

アナハイムの歴代の写真を掲載する(夢のような)Yesterlandには、往年のMine Trainが多数掲載されているので、引用させていただく。
ここからMine Trainの写真を見ることができる。気になる読者の方はぜひ。


かつてのRainbow Ridgeの姿である。(Photo by Roger J. Runck, 1961, courtesy of Robin Runck)

このRainbow Ridgeというのは、現在もBTMRにて一部が再利用されているらしい。また、街の名前は虹色の尾根という意味だが、BTMRが乗車して最初に上昇する際左手に見える鍾乳洞が虹色に輝くのもそれに由来すると思われる。

現在のBTMR(筆者撮影)
現在のBTMR(筆者撮影)
このような形で、砂漠をめぐるアトラクションだった
(Photo by Roger J. Runck, 1961, courtesy of Robin Runck)

ちなみに、Main Street USAにあるDisney Galleryでは、100周年を記念しパーク内アトラクションの原画が飾られている。↓

Disney Galleryに飾ってある数々のイラスト。貴重。
筆者はこれを見るまでこのアトラクションの存在を知りませんでした。
1956年7月の地図。よく見ると、地図中Gの位置に線路が引かれている。

Mine Train Through Nature's Wonderlandは1977年にクローズ。その後にオープンしたのが、BTMRである。類似点も多く、スリル要素を追加したMine Train Through Nature's Wonderlandという感じがある。

ただ、BTMRがオープンした後も、Mine Train Through Nature's Wonderlandの一部は廃線として残り続けた。かつては線路だけでなく、ライドも放置された鉄道という形で残されていたようだ。
2017年のLos Angeles Daily Newsの記事によると、現在はWalt Disney Studio(本社)程近くにあるLos Angeles Live Steamers Railroad Museumに常設保存されている模様(参考記事はこちら)。

一時期は例の廃線上に残されていた。(写真はWikiより)


アメリカ河から見える廃線については、陸側からも痕跡を見ることができる。帆船を降りてBig Thunder Trail(ゲストが歩く道にも名前が付けられている)を左方向(Galaxy's Edge方向)に進む。
ちょうど岩山の高い部分の麓あたりで左を見ると、はっきりと残されている。

"ABANDONED MINE"、もはやそのまま「廃坑」である。途切れた線路にこだわりを感じさせる。
なお、このトンネルとBig Thunder Trailの間には水が張られておりトンネルに近づくことはできないが、足元は中規模の石で覆われていることから、かつて線路があったことを示している。

足元を見る。ここだけ石の材質が違う。
下の白いのは筆者の靴です。

もう少し歩みを進めると、先ほどアメリカ河から見えたトンネルの反対側を見ることができる。

こちらに至ってはそこそこ距離があり、しかも木に覆われているため注意していないと気付かない。筆者もアメリカ河で廃線を見つけたことでようやく認識することになった。
これは、上述したYesterlandによると、アトラクションの一部であったBeaver Valleyの跡のようだ。
洞窟の形状から、往年の写真が残されている。
写真はThe orange country registerより引用。

ブログだとBeaver Valleyとあるが、クマが左下に映っていることから
Bear Countryの写真と思われる。

この廃線エリアを上空から見るとどのようになっているのだろうか。
Google Mapで示してみた。面白いことに、これが結構広いのである。

左の矢印は帆船・蒸気船の進行方向
A:廃線
B:蒸気船乗り場
C:洞窟(かつてのBeaver Valleyあたり?)

地図から違いを見極めてみる

写真を見るだけではイマイチ伝わってこないこともあるので、かつての地図と見比べながら比較してみた。
まずは、先ほど引用したサイト、disneyavenueからかつての地図を広げてみよう。

1962年の地図

1962年のマップだ。1955年よりだいぶ質・量ともに充実してきた感がある。左上を見ると、アメリカ河の東側に湖(池?)のようなものが見えよう。

1976年の地図

1976年、こちらはMine Train Through Nature's Wonderlandがクローズする直前である。正直なところ、トムソーヤ島やアメリカ河の東部にあったことしかわからない。

どうしようもないので、次は空撮に頼ってみる。
Google Mapとこのブログで何度もお世話になっているYesterland(様様)による1960年6月の空撮写真を並べてみた。

左が現代、右が1960年である。

説明のため、線を描いてみた。手書きにつき、汚いのは申し訳ない。

黄色線がアメリカ河(内側の線はトムソーヤ島である)
青で囲ったのが、それぞれBTMRとMine Train Through Nature's Wonderlandである。

アメリカ河は付け替えが行われているのである。これは現在のGalaxy's Edge建設に伴うものだと思われるが、Beaver ValleyやBear Countryの部分だけ残されているのは興味深い。一部のエリアだけが中途半端に残されたまま、アメリカ河とBTMRの間に孤島のように浮かんでいるのだ。

この絵だとBear CountryやBeaver Valleyは結構広いが、実際はそこまででもないようだ。
↓の写真程度の広さである。


現在のBear Country

ちなみに、アメリカ河の付け替え工事については、この記事が詳しい。D-post様。
「すべてはスター・ウォーズ拡張のために――本家アメリカ河、新たな姿のアートが公開(2016年)」


気になるポイント


調べる中で気になる点がいくつかあった。まずは、"ABANDONED MINE"と書かれていたトンネルである。Google Mapで改めて見返した画像がこちらである。

Google Mapより

"ABANDONED MINE"の文字がないのだ。2017年8月とあるが、いつつけられたのだろうか?
なお、石で修復された柵は今のままである。かつてはここに線路が通っていたのだろうか・・・。

もう一つは、なぜ廃線が残ったままなのだろうか、という点だ。線路はともかく、アメリカ河に島のごとく(ゲストの歩道と水で切り離されているため、本当に島なのかもしれない)残されたこの空間は正直もったいないような気がする。特に、パークの敷地面積が小さいアナハイムのことなので別の用途に用いることもできそうだが・・・。

例のエリアを鳥瞰すると、Big Thunder Mountain程の広さがあることがわかる


方角を変えてみる。後部にはGalaxy's Edgeが見える。
青線で囲った部分に廃線が残されている。


仮説として、なんらかのバックステージである、もしくはバックステージを隠すためとも考えられるものの、特に隠す必要がありそうなものが周囲に存在しないので謎が深まるばかりである。強いて言うなら、黄色線上部にあるインディアン居留地の背景とも言えなくはないが、先ほど示したトンネル↓の様子を見るに、放置されているだけのではないか?という気もする。
ここ数年世界のパークで進む大開発の思想に飲まれているだけなのかもしれない。「空き地はすべて使わねばならない」わけではないのだ・・。


インディアン居留地。後ろに映る赤いのはDisneyland Railroadである。
演出でトンネルが残されているなら素晴らしいが・・。

結論

もやもやした感じで終わってしまったが、分かったことがいくつかある。

①アメリカ河東部には、かつて存在したアトラクションMine Train Through Nature's Wonderlandの一部が残っている。

②それは廃線、トンネルという形で残されている。

③なぜ残ったままなのか、利用しないのか?については今のところ不明。今後の調査とする。

追記

この旅行のついでに、サンフランシスコにあるWalt Disney Family Museumに訪問。なんと、アナハイムのディズニーランドの模型があった。

後ろに映りこんでいる子供と比較しても、デカい。

この模型のフロンティアランドには、Mine Train Through Nature's Wonderlandが残っているのだ!

写真上部の鉄道が水上を走っているあたり、ここが現在もパーク内に残っているBear Countey
こうやってみると、Mine Train Through Nature's Wonderlandはだいぶ開けているのがわかる。


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