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卒業旅行でアメリカに行く言い訳

卒業旅行はアメリカに行こう、と決めた。

書き出しはかっこいいが、これは学部生を5年、修士課程を4年やってしまった怠惰な学生が、アメリカに行く理由を絞り出しただけの言い訳の書である。昨年から止まったままのパリ遊歩論については1度目をつむってほしい。
なお、表紙の写真は2019年にニューヨークに行った時のハーレムである。他意はない。



だらだらの8年間

"学生"と呼ばれていたこの8年半、多くの場所を訪れてきた。学部2年次にはヨーロッパ周遊に始まり、3年次の夏休みにはシルクロード横断と銘打って中国からイランまでを旅した。学部4年次には周りが就活で悩む中さらに長期間旅したいと思い、ロシアやパキスタン、そしてフランス旧植民地を周遊した。
何度も繰り返した旅は「ディズニーランドに就職したい」という単純すぎる(バカともいう)理由で大学受験に取り組み宿泊産業について学んで(遊んで)いた学部2年生を変え、イスラム教や移民に関心を持つ不安定な大学院生へと向かわせた。ただ、大学院生になってからも何かと言い訳をつけ研究をさぼり、フランス語やスペイン語、英仏植民地史や北アフリカ研究、地理思想や現象学、そして南部アメリカ史や京都都市研究といったあまり自分の研究に関係ない読書ばかりしていた。もちろん、生まれながらの本の虫ではないから読書ばかりしていたわけではない。「勉強」とか言いながら酒を飲んで騒いだり、デートしたり、旅行したりしていた。こうみると、自分もなかなかのクズである。

そんな大学院生活を3年半やっていたものの、終わりは来る、というか、資金が尽きそうになっている。妙に時給がいいアルバイトをしつつ、奨学金(優秀ではないので借金だ)を使って生活していたが、そんなごまかしの生活にもさよならを言わねばならなくなった。あまりカッコよくない終わり方だ。

アメリカに行く理由

だが、だらだらと勉強もどきの生活をしていたことで、独自の視点で旅ができるようになった自分がいるのもまた事実だと思う。

アメリカはそんな自分にぴったしの旅先なんだと思っている。勉強に取り組んだ長い学生生活を活かせる国はここが一番だ。私はアメリカを見たいし、アメリカを感じたいのだ。でも、それだけではよくわからないだろう。


少し学術的な書き方になってしまうけど、今はアメリカをこんな風にとらえている。突然だ。
要するに、このアメリカ旅行はこういう視点を持った学生による旅行記ですよってこと。私は都市空間、歴史、文学、地理、建築が好きで社会学とか哲学、観光学をちょっとかじった超中途半端な人間なのです。


・インディアンの土地を収奪し、奴隷制により成立した国家
・誇り高き理念と同時に傲慢な現実を突きつける国家
・近代世界システムの中、WASPという構造のもと、ヨーロッパ・ロシア・アジア・アフリカ・ラテンアメリカ・カリブ・中東(羅列するのは、重要だからだ)から移民を受け入れ成立する国家
・セグリゲーションに満ちた大都市(こういうのは移民国家の良さ)
・人種やエスニック(インディアン、非ーWASP、黒人、アジア人)、そしてジェンダー的な革命・運動を繰り返し、その度に変化する国家
・50の州から成立する、各々が独自の歴史・世界を持つ国家(これを頭に入れとけば、"トランプの意味がわからない"とはならないはずだし、ロサンゼルスとアトランタ、ニューヨークで人種構成が異なることの意味が理解できるはずだ)
・独自の文学を持つ国家

最後の項目については、私があまりアメリカの映画や音楽、小説に馴染んでこなかったせいであまり深いことが言えないのだ。ただ、ディキシーランド・ジャズにしろ、「風と共に去りぬ」にしろ、ディズニーランドにしろ、「ドゥー・ザ・ライト・シング」にしろ文学を通じてアメリカを読むことは面白い作業である。私は文学や芸術から作者の意思や風景・場所の意味を思考するのが好きなのだ(芸術との触れ合い方、というのもまた書きたいことの一つだ)。だから加えておいた。

こんな視点で旅ができるのはすごく楽しみだ。最近はこういう視点でばかり旅をしているせいか、そうではない旅がすごくやりにくくなっている気がするけれども(この苦しみについてはいつか書くつもりである)。

行き先

アメリカは広い。日本の周遊感覚で動こうとすると、途方もないことがわかる。だけど、自由に時間が使えるのもこの3月までだ。だが、借金とはいえ残額が多いわけでもない。このバランスが非常に難しい。


①ハワイ(オアフ島)
②ニューヨーク
③アトランタ
④ニューオーリンズ
⑤ロサンゼルス


この5都市に決めた。これは計画で、増えるかもしれない。時間と資金の関係でこうなりそうだが、本当はワシントンDCやシカゴ、メンフィスやチャールストンだって行きたいのだ。
あと、都市しかないのは、私が都市に関心があるということもあるが、「免許を持っていないから」だ。自動車免許を取る手間が面倒というのもあるが、基本的に都市住民として自動車自体が人間にとっても環境にとっても害悪であって、滅ぼすべきだと考えている(といえば聞こえはいいけど、免許代と時間を考えると本とか旅行とかに使ってしまう)。それ以上に、車でこの5都市を訪れるには8時間ドライブが普通になってしまう。私は旅が好きだが、「移動」そのものにはあまり重点をおかない。都市をベンヤミン的に歩き回るのが好きなのだ(人に話してもあまり理解されないので、これもいつか記事にしたいと思っている)。


最後になるが、なぜ急にこんな記事を書き始めたのか。アメリカの旅で思ったことを事細かに記録しておきたいからだ。アメリカに行く頃には4年かかった修士論文も提出しているだろうし、自由に書くことができると思っている。稚拙な文章が続くだろうけれども、ぜひとも許していただけると幸いである。







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