見出し画像

2050年以降の社会像ー講演内容版ー(2024年9月8日)

はじめに

日本機械学会年次大会2024市民フォーラム
「JSME メンバーが考える2050年の社会像実現に向けた技術ロードマップ」
で講演を行ったので、その内容をnoteします。
しゃべり足りなかったことを追記した
増補版は、こちらです

まずはじめに、本講演の2日前に届いた
人工知能2024年9月号」(人工知能学会)を手に取り、
小特集「超知能がある未来社会」コンテストの結果が掲載されていることを報告した。
人工知能学会では、2045年以前にシンギュラリティを迎え、2050年には超知能が当たり前に存在している前提で話が進んでいるため、
コンテスト入選作は示唆に富んだ内容になっていることを
前座として軽くお話しした。

はじめにー問題提起ー

日本経済新聞の記事より
1.2040年に介護職員数は2021年比で3割増、いっぽう生産年齢人口は2割減。このままでは人件費増で介護財政は破綻する。解決するには早急に合理化とロボット化を推し進める必要がある(2024年1月22日)
2.医療・介護費用が膨らむ中、改革は先送り。蓄えのある高齢者から医療・介護費用を徴収しないと制度が破綻する(2024年1月22日)
こんな真っ暗な未来しかないのでしょうか?
私は、こんな真っ暗な未来はイヤです
では、どうすればいいのでしょうか?

(本当は数分考えてもらい、ディスカッションしたかったのだが、時間がないので、すぐに私の考えを披露する)

フォアキャスティングとバックキャスティング

二つの記事は、現状の延長線上に未来がある前提に立っています。
そして、現在の延長線上の未来を改善する施策を考えます
これは、技術予測分野では「フォアキャスティング」と呼ばれる考え方です。

フォアキャスティングの考え方に対し、
技術分野では、「理想の未来社会」をまず考え、そこから現在に遡って、未来の理想社会を実現するためには、いま、何をするべきかを考えます。
これをバックキャスティングと呼びます

それぞれの手法には、長所と短所があります
フォアキャスティング手法
長所:将来像の実現可能性が高い
短所:将来の技術レベル(社会水準)が限定される
バックキャスティング手法
長所:現在と大きく異なる将来像が描ける
短所:技術の跳躍が必要で、実現が不確実

バックキャスティングで介護・医療問題を考える

バックキャスティングで介護・医療問題を考えると、このようになります
1.理想的な未来社会 要介護者ゼロ社会
2.理想的な未来社会に向かう経路 体力作り・若返り・予防医療の充実
3.現在行うべき施策 スポーツや温浴施設・健康維持に健康保険を適用する
昔、老人医療費が無料の時代がありました。
病院がお年寄りのたまり場になってしまい、医療が必要な人が治療を受けられないとの批判などの理由で廃止になりました。
温浴施設などは病院よりはるかに費用がかかりません。
こういう施設がたまり場になり、元気な人が増えると介護・医療費が減少するので健康保険のバランスは取れると考えます
これこそが、明るい未来ではないでしょうか
今回取り上げたのは介護・医療分野ですが、その他の分野でも、まず理想社会を考え、そこからバックキャストする考え方は重要だと考えています。
では、ここから未来社会を考えてみましょう

2050年のその先へー理想社会ー

2018年9月6日出版の「ホモ・デウス」において、ユヴァル・ノア・ハラリ氏は、人類誕生から西暦2000年までは、餓死・病死・戦死との闘いの歴史だった。しかし、2000年にこれらの死者は大幅に減少し、人類は新しい世紀の入り口にいる。新しい世紀では、人類は「不死・幸福・神性」を追求すると、述べています。
「神性」とは、神のように何でもできる能力を獲得することで、人類はGoogle検索で、情報の世界では「あらゆる情報を瞬時に手に入れることができる」神性を獲得しはじめています。

日本機械学会が考える2050年の社会

これは、私の前のスピーカーの方々にお話ししていただいた、以下の3項目になります
1.人間と自然,都市と地方,個人とコミュニティが長く共存される社会
2.多様性と包摂性が確保された次世代コミュニティによる総合地域社会
3.リアルとバーチャルの調和に基づく個人価値尊重と社会サステナビリティの融合社会
実は2017年、2018年と大冨委員長時代に合宿を行ってまとめた未来社会のイラストがあり、「グループA」が、これに近いのかなと思っています

2050年のその先の理想社会

1.欲しいものが情報だけではなく、物理世界にあるものを含めてなんでも手に入る社会
2.物々交換の意味がなくなるので、貨幣経済が消失する。それに付随して知財権や著作権を主張する意味がなくなる。
3.全世界の人類(知能)が、クリエーターになる
「グループB」の、人類は他の惑星や恒星系にも進出していて、知的生命体および石などの無機物がすべて緊密につながり、共生している世界、宇宙全体が一つの大きな有機生命体のような世界を描いている「Connected Planets」が、これに近いのかなと思っています。

社会進歩の阻害要因

COVID19のような突発的出来事により、社会進歩が阻害される事態も考えられます。(促進された面もある)
カナダ政府は、2000本ものロードマップを用意して、あらゆる事態を想定してその対処法を検討しているそうです(NISTEPが開催した国際会議でのスピーチを記憶を頼りにお話ししているので、間違っているかもしれません)

2050年までに起こる確率が高そうな阻害要因を挙げてみます

1.疫病
2.恐慌
バブル崩壊などで、月に人類が降り立っていこう50年ものあいだ宇宙旅行は停滞
3.戦争
戦争は最大の地球環境汚染でもあります
4.大災害(南海トラフ地震など)
5.太陽フレア大爆発

2050年以降も含め、長期的視点で起きる可能性がある阻害要因

1.氷河期
2.小惑星衝突
3.異星人侵略
異星人侵略の例として、アニメ「正解するカド」を挙げておきます

2050年のその先へー技術予測ー

10個の技術項目について、2050年に実現している内容と
2050年以降に実現する内容に分けて駆け足でお話ししました。

1.自動車・交通分野

2050年に実現

1.走れば走るほど環境を浄化する車

2.燃料電池/太陽電池+モータ

水素ステーションが足りない。
太陽電池で発電し、水素を蓄えれば水素ステーションは要らない!

3.完全自動運転車

車が現在の形からそう変わっていないなど
ツッコミどころ満載ではあるが、こんな感じ

4.ドローン/地下物流網(人の移動と物の移動を完全分離)

5.信号機が存在しない交通管制

6.ライドシェアで駐車場スペースが不要

2050年のその先へ

1.人間自身が羽ばたきと噴射による飛翔・高速移動能力を持つ

すでに自在肢が実現している

自転車のように身体になじむ乗り物「メーヴェ」が飛んでいる

翅ではないが、高速飛行は実現している

2.成層圏/宇宙空間移動に適応する身体になる

動物は、陸に上がるときに、体内に水を蓄えた。
同様に、宇宙に行くときは体内に空気を蓄える。
エネルギーは光合成、移動は宇宙空間に漂う微粒子のジェット噴射を用いると考えている。
上記のように、ある程度の移動は自身の肉体で行い、惑星間、恒星間、時間およびパラレル宇宙間移動時のみ乗り物を利用すると考えます


2.製造技術分野

2050年に実現

飛行機、自動車、集合住宅など長尺物の3D複合材プリンティング

生体プリンティング

食糧プリンティング

マイクロマニファクチャリング

トラックの荷台にマイクロ工場と素材を積み込み、移動中に品物を生産する。顧客に到着と同時に商品が完成する

面接触のみでの接着技術

接着面が鏡面で、かつ酸化などで表面が変質していない場合、同じ材料は分子間力でくっつき、一体化する。

タンパク質や糖鎖のゲノムによる生成

ガラス金属やアモルファス金属など新材料の活用

力学的非対称物質

完全結晶物質

セルロースナノ材料

グラフェン

2050年のその先へ

自己組織化材料(DNA情報により成長する)と自己修復材料

材料自身が内部に包含する設計情報に従って目的物に組み上がる。
当然自己修復能力および環境に応じて変質する能力を併せ持つ。
「合成生物学」によると、米国では合成生物コンテストが行われていて、高校生も参加している。
材料が内包する情報により目的物に育つのは当たり前の時代、
現在の、「壊れたら人手で修理する」ことに驚かれるかもしれない

トポロジカル物質の活用

絶縁体の研究から始まったトポロジカル物質だが、超伝導をはじめとして、そのファミリーがどんどん発見されている

3.ロボット分野

2050年に実現

汎用ロボットの普及

東日本大震災で中止になったが、2010年末にはすでに歌って踊るヒューマノイドロボットが実現していた!

友達ロボットの普及

バイオハッキングの普及

体内に放射線センサや筋力増強アクチュエータなどさまざまな機器を埋め込む「バイオハッキング」。
日本では体内に異物を埋め込むことに抵抗がある人が多いが、米国では体内に異物を埋め込んで能力を拡張することが当たり前に行われている。

バイオミメティクスロボットが普及する

生機一体化

2050年のその先へ

生体模倣から生体拡張へ

8文字DNA

GATCの4塩基に人工的な4塩基を追加した8塩基DNAが作成され、4塩基が特殊な塩基ではないことが明らかになっている。

生体が使用しない重元素の活用

生体は、周期律表の初めの方の元素しか利用していない。
元素番号が大きな元素はトポロジカル物質の候補になるなど元素番号が小さな元素とは全く異なる振る舞いをする。
炭素だけでも膨大な化合物が存在するが、重元素まで視野を広げたとき、どのようなトンデモ性質の物質が開発できるのか。
選択肢が広がる未来が待っている。


4.人工知能分野

2050年に実現

推論が可能になる

ロボット技術と融合し、AIが身体性を獲得する

脳と同等のエネルギー効率

2050年のその先へ

感情の獲得

(アニメ「ATRI-MyDearMoments-」を例として挙げました)

時間がない方は9話だけでもぜひ視聴してね

人類と共存し、導く

文化/文明の急加速


5.計算機分野

2050年に実現

量子コンピュータ

現在は量子コンピュータの黎明期。
量子ビットを表現可能な現象はなんでも利用可能なのだ。
光量子ビットは常温で演算可能なため注目されているが、
未だ決め手になる現象は確立されていない

量子暗号による通信

通信は量子暗号にとって代わられる。

2050年のその先へ

ニューロンを模倣し,メモリと演算の機能を兼ね備えたコンピューター

脳と非接触接続


6.医療分野

2050年に実現

iPS細胞による治療が一般的

人工臓器の移植が普及

遺伝子解析による発症予測,余命予測

光遺伝学により、脳を計測および制御可能になる

人工冬眠が普及する

病院や介護施設がなくなる

日常生活を送りながら治療が可能になる
したがって、入院施設が不要になる

2050年のその先へ

合成生物学による機能拡張

生物が使用していない元素による合成臓器


7.教育分野

2050年に実現

ビッグデータ解析による個人に最適化された教育プログラム

ギフテッドの早期発見

全人類がクリエーターになる

2050年のその先へ

脳接続による体験学習


8.エネルギー分野

2050年に実現

自然エネルギー
循環型エネルギー
核融合
常温超伝導
バイオミメティクスアクチュエータ
バイオミメティクス情報処理

2050年のその先へ

光エネルギー
スピン流
カシミール効果
情報・量子もつれ・エネルギーの自由変換
カルダシェフ・スケール(惑星文明/恒星文明/銀河文明)


9.宇宙分野

2050年に実現

宇宙エレベーター
火星移住
火星観光
地球外生命体の確認

2050年のその先へ

他の恒星系に移住・ステーション建設
地球外生命体との交流


10.メタバース分野

2050年に実現

ブレインマシンインターフェイスによる五感と身体拡張

物理空間の制約からの解放

いくつもの自己を演じることが可能

物理空間の肉体維持管理方法の確立

2050年のその先へ

五感以外の感覚創造

時空を超越した往来

物理変数を自由に設定可能

仮想空間を物理空間に射影

おわりに

30分、駆け足で走り抜けることができました。


本noteは私の備忘録ですが、自由に読んでください サポートは、興味を持ったnote投稿の購読に使用させていただきます