おやすみLAID BACK OCEAN
僕の大好きなバンド『LAID BACK OCEAN』(以下:LBO)が10月8日で解散することになった。
解散の理由は音楽の方向性の違いやメンバー間の不和ではなく、「彼らの(特にVo.の)美学を貫き通せなくなったこと」にある。
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LBOは活動して10年が経つが、全然売れていないバンドだ。
元々『jelly→』というパンクバンドだったがメンバーの不祥事で解散し、LBOとしてピアノロックバンドに形を変えてリスタートした経緯がある。
僕にとってjelly→は「パンクロックを好きになったきっかけのバンド」で、彼らを知った中学2年の時から今まで20年間ほとんど追いかけてきた。
新曲のリリース毎に前作から雰囲気が変わっていて「あれ?(なんか違う…)」って首をひねる。でも時間をかけて繰り返し聞くうちにポジティブな「あれ?(なんか良くない?)」に変わっていき、気づいたら沼にハマっている。何故か大体いつもそんな感じだった。
Vo.がカッコつけたがりなところがあって、そこが僕にとってはすごく愛くるしい部分で「しょうがないなぁこの人は…(笑)」ってニヤニヤして、結局彼の言動を逐一チェックしていた。
いつも実験的で、もがきながら楽しんだり、熟考しながら暴れたり、泣きそうになりながら仁王立ちしたりするような、そんな多面性を持ったところが大好きだった。
振り返って思えば、ストーリーで追いかけないと魅力が伝わりづらいバンドだったのかもしれない。
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そんな彼らは数あるバンドの中でも、割と数奇な運命を辿ってきた方だと思う。その歴史を以下にざっと紹介してみたい。
jelly→は「黒夢の清春プロデュース」という大々的な触れ込みのもとで華々しいメジャーデビューを飾り、1stアルバムはオリコンTOP10に入るほどの快調なスタートを切った。
しかし何の因果か、それ以後の彼らの活動はずっと音楽の神様から見放され続けてきた。
2ndアルバムをリリースして活動をこれから加速させていくぞという最中、Vo.がライブ中にステージから落下し両脚を骨折。活動休止を余儀なくされ、そのままメジャー契約を切られてしまう。
復活後はインディーからの下剋上を目指しリリースを重ね、7thアルバムにしてようやくメジャーシーンに復帰、いよいよこれから逆襲が始まろうとしたときにメンバーが不祥事を起こして解散。
3年の沈黙の後、不祥事を起こしたメンバーの入れ替え+ピアノの加入という形でLBOを誕生させ活動を再開する。
パンクからピアノロックへと音楽の方向性を変えた影響か度々メンバーチェンジを行いながらスローペースでmini albumをリリースしていた。
活動5年目にしてようやくメジャーデビュー出来る目途が立ちライブでアナウンスするが、何かしらの事情でデビューはポシャってしまう。
それでも8年目にしてようやく1st full albumをリリースし、活動の本格化を宣言した矢先にメンバーが電撃脱退してしまう。
そして2019年末、解散したjelly→が生誕20年を迎えることから、きちんとバンドを終わらせるためにVo.が中心になり1年の期限付きでjelly→を再始動したところでコロナにより活動は中断。
また、並行して企画していたLBOの「CD購入希望者全員にメンバーが直接CDを届ける」というプロジェクトも当然白紙に。
そんな中でLBOは2021年で「活動10周年」というひとつの節目に立ったとき、さまざまなことを叶えられないまま、彼らは自らの活動に終止符を打つことにした。
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このタイミングでの解散に「コロナで食っていけなくなったから」と理由をつけるのはきっと多くのバンドに当てはまることだろし、売れない彼らにとっても直撃した問題ではあるだろうが、それは間接的な要因だった。
LBOは前身のjelly→からずっと、社会に抗いながら音楽活動をしてきた。抗い方がちょっと青っぽかったりしたのもあったんだけど、とにかく彼らの中では筋を通してきた。
でも、コロナで生活がリアルに苦しくなって補助金をもらわないと音楽も生活も成り立たなくなる現実を突き付けられた。
"仮に補助金をもらった上で社会に中指を立てたとして、その中指には信念が宿るだろうか?"
「貫いてきた理念を終わらせる」か、それとも「音楽活動を終わらせる」かの二つの間で揺れに揺れて考えた末に、彼らは後者を選択した。
…以上の解散までの経緯は、最新の楽曲に綴られた言葉からの推測が多分に含まれるけど、概ねこういうことなのだと思う。
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レベル感は全然比べようもないけど、僕自身も小市民なりに肩書きや資産よりも美学を優先して生活している。美学を殺して生活をしていた時期もあるし、どっちつかずだった時期もある。
だからこそ、美学を重んじて生きている人たちが、生きていく上でそれを天秤に乗せなければならなくなってしまった時の辛さは理解できるつもりでいる。
故に、彼らが下した大きな決断に対して、僕は何かあれやこれやと言うだけの権利はないし言うつもりもない。
ただその決断は受け入れつつも、近い未来にくっきり刻まれたピリオドが僕に様々なことを思案させてきて、時おり視界が涙でにじんでしまう。
でも、その涙の温度は温かい。
それが僕にとって救いである。
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これまでの20年間、僕を何度となく勇気づけてくれた彼らと彼らの音楽たちへ。
今までどうもありがとう。本当にどうもありがとう。
あなたたちの次の人生が、どうか引き続きあなたたちらしくありますように。
そして、あなたたちから受け取ったメッセージを僕はずっと忘れない。バンドは形を無くすかもしれないけれども、あなたたちのソウルを僕は宿し続ける。
10月8日の解散ライブ、笑顔でお別れが出来るといいな。(そのためにはまずチケットの抽選に当たらなきゃなんだけど)
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と、こんなことを35歳のおじさんが涙目でつらつら書いてるっていうのは、客観的にみると結構キモい。
キモいけど、そうせざるを得なかった。
あ、せっかくなら1曲だけでもLBOの歌、聴いていってください。