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北米フリンジの魅力①

こんにちは!バタバタしていたらうっかり4ヶ月も経っていました!
なんということでしょう。
しかし、3月にはアシテジ世界大会にて小心ズの「The Gardener」公演を行うことができ、また4月には大阪は堺に誕生した堺フリンジ国際演劇祭にて小心ズの代表作「ミスしゃっくりの幸せな一日」を上演させていただきました。
いつまでもいつまでも緊急事態宣言が続くなか、こうしてわずかながらも舞台に立てるということが、ますます「有り難く」貴重です。
また、健康診断ついでに人生初のガン検診も受け、医師から「98点!」との判定をいただきました。さんきゅう、身体!
健やかに生き延びていきたいです。

さて、今回も北米フリンジの魅力についてお伝えしたいと思います。
ちなみに今年2021年5月、私の愛するオーランド・フリンジ(アメリカ・フロリダ州)は、有観客での開催を実現しました!アメリカでは多くの友人たちがワクチン接種を受け、徐々に日常を取り戻しつつあるようです。
甚大な被害を受けたアメリカにフリンジが戻って来るようすには、やはり希望を感じます。

(この記事はマネトラガールにて2020年に連載したコラムに加筆したものです。)

北米フリンジ

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ヤノミa.k.a.ケセランパサラン、モントリールの地下鉄車内にて 
photo: Richard Hanna

カナダとアメリカには北米フリンジ連盟という組織があり、そこに登録されているフリンジが各地で春から秋にかけて順番に開催されます。

その数なんと30を超えるのです!

地元のフリンジにのみ参加するカンパニーもいれば、およそ5ヶ月をかけて北米中のフリンジをツアーして生計を立てているツアーアーティストも存在します。

このツアーは「フリンジ・サーキット」と呼ばれており、非常にダイナミックであり、過酷でもあり、そして人生が変わるほど豊かなものでもあります。

私が人生初のフリンジ・サーキットを経験したのは2010年、また人生初のソロツアーでもありました。

4ヶ月半にわたるそのツアーで、かけがえのない友人たちに出会い、5つのアワード(賞)と数々のレビュー(批評)をもらい、そしてお金がなくてまともに食べられず、空腹の日々でもありました。

その後も2012年、2013年、2015年とツアーを行います。

たとえば私の2015年のツアーはこんな感じでした。

・オーランド(ディズニーワールドで有名)
・シンシナティ(オハイオ州だけど、河を渡るとケンタッキー州)
・モントリオール(北米のパリ。シルクドソレイユ本拠地)
・レジャイナ(とっても小さな町。16演目が上演される小さなフリンジ)
・ウィニペグ(真冬はマイナス40度にもなる)
・カルガリー(1988年 冬季オリンピック開催地)
・エドモントン(北米最古のフリンジ。規模も大きい)
・ビクトリア(花であふれる夢のような島)
・バンクーバー(2010年 冬季オリンピック開催地)

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びっしりと並ぶポスターたち。2015年ウィニペグ

憧れのブルーマンと共演!

この年の思い出のひとつは、オーランドでブルーマンのショーを観たことです。
ブルーマンは世界中で大人気の青い顔の男3人のパフォーマンスで、無言劇。小心ズは初期の頃からブルーマンに憧れていました。

私はなんと客上げという栄誉にあずかり、ステージ上にあげられてブルーマンと共演させられ、客席から大爆笑を受けたのでした。

彼らのショーはそれはもう完成度が高く、観客をステージに上げたネタにも多くのトリックがあり、ちょっとやそっとではない凝り方なのです!
私はステージを降りたあとも、客席の通路や終演後のロビーでたくさんの子どもや大人に話しかけられ、「あんた!自分がどんなに面白かったか、わかってないだろう!」とまで言われました。
しかしそれは言うまでもなく、プロフェッショナルの集団であるブルーマンたちの実力によるものなのでした。

終演後、ロビーにいたブルーマンの一人にお礼を言って、写真を撮影して良いか尋ねると、彼は黙って頷きました。ブルーマンは喋らず、笑わないのです。
しかし私がスマホのカメラを向けると、彼は黙って首を振り、私のスマホをそっと手に取ってインカメにし、私に一緒に写るように促したのです。

そしてブルーマンが辺りを見回し、子どもたちや他の観客がいないことを確かめたのち、声をひそめてささやいたのです。

「君のショーをこないだ観たよ。素晴らしかった!」

なんと、彼はフリンジで私の作品「ケセランパサラン」を観てくれていたのです!

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画質は悪いけれど、宝物の一枚

思いもよらない奇跡のようなことが起きる、フリンジ・サーキット。

舞台の道具と衣装とメイク道具、ほんの少しの私服、パソコン、カメラなどなど、ツアーの際の私の荷物は、

・スーツケース(23kg)2つ、
・バックパック(10kg)
・規格外の舞台道具

でした。

移動につぐ移動で、この当時、腰と背中と膝が限界を超えておりました。

ツアー中はハプニングだらけ!

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2015年ツアーの荷物。それぞれに名前があります。
左から、黒じい、ヘンテコリッパ、雁パック、これに加えてさらに規格外の大きな舞台道具がひとつありました!

さて、ツアー中は、野性の勘や、サバイバル能力がとても大切です。

ちなみに私は見知らぬ土地ではコンパスも使います。

連盟に加盟している多くのフリンジでは、似たようなシステムが採用されていて、それが「すべてのアーティストに表現の機会を与える」という自由で平等なフリンジ・スピリットを実現しています。たとえば、

・出演の権利は抽選で決まる(作品の審査も検閲もない)
・各作品の上演時間は60分(例外もあり)
・各カンパニーに5〜7回の公演が与えられる
・チケット収益は100%アーティストに還元

アーティスト側が支払う一律の参加費は良心的な価格で、以下のものが保証されます。

・上演会場=venue ベニュー(劇場のほか、体育館や教会やバーや会議室などの場合もある)
・音響照明スタッフ=tech テク(たいてい1人で両方やってくれる)
・プログラム掲載(フリンジが正式に発行する全演目のカタログ)
・ホームステイ先=billet ビレット(フリンジ事務局が斡旋してくれる)

これまでに延べ何十軒という他人のお宅に滞在してきた私。

「ビレット」と呼ばれるホームステイ先のあちらこちらで、それはもうたくさんの面白い出来事や感動や、困ったことがありました。

…が、それはまた次回に。
今回もおつきあいありがとうございました。
まもなく梅雨がやって来ますね。できる限り、ごきげんに!


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