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ファンヒーターのにおい
久しぶりに実家に帰った。22時過ぎ、家に着くなり母から「お風呂沸いとるよ。」そう言われ、すぐに風呂に入ることにした。冷たい廊下の先、脱衣所の扉を開けると、あたたかい空気とともにファンヒーターのにおいがする。
風呂上がりが寒いだろうからと、少し前にファンヒーターをつけておいてくれたのだろう。このファンヒーターのにおいが、過去の日常に当たり前にあったことを思い出しながら、実家でしか嗅ぐことのないにおいに懐かしさを覚えた。
一人暮らしはもう7年。脱衣所は当たり前に冷たいもので、お風呂上がりは湯冷めしないよう、早々と自室に戻るのがこの時期は当たり前のこと。そんな空間を、誰かがあたためておいてくれることの優しさや思いやりに触れ、誰かと一緒に暮らすことの素晴らしさと有り難さを実感した。
一人暮らしがあと何年続くかわからないが、その先の見えない将来に不安を覚えることはまだない。ただ、ふいに懐かしさや優しさに触れるとき、それが当たり前にない日常のことを思って、寂しさを感じる。
うちへ帰って誰かに優しくしたい、そんな風に思う。あとは単純に、猫のいる家はいい。
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