ドキュメント72時間
年末は特番が多くなる。普段テレビを観ないわたしも、実家に帰ったらテレビを見るほかにすることがない。祖母と並んでなんとなくみていたテレビで、いつのまにか始まっていた番組。それがドキュメント72時間の総集編だった。
ある場所を72時間、つまりまる3日間、密着取材というか、定点観察というか。そこに集う人々を見つめる番組である。
様々な回があった。都内の釣り堀や五島列島のフェリー乗り場、訪問看護師の現場や相席クラブ。
どの回にも様々な人間模様があって、気づけばあっという間に5時間が経っていた。どの人の人生にも誰のものでもないその人だけのストーリーがある、その当たり前の奇跡に何度も涙を流した。
今日すれ違っただけの人にもストーリーがあって、あの人も、あの人も、みんな悩みや生きづらさ、苦しさをかかえている。それでも生きていくために、趣味の場や集う仲間があって、励まし合いながら、勝手に励まされながら生きている。
わたしの感じているつらさや苦しさ、歯痒さやもどかしさを、同じように感じている人はいなくても、それぞれが何かをかかえて生きている。そう思うと1人じゃないと思えた。当たり前のことなのに、なかなか気づくことができなかった。
みんなそれほど重たいものは抱えていなくて、人生を楽に、楽しんでいるように見える。SNSを通して見ると、みんな別の世界の人に見える。自分だけが違っていて、どこにかはわからないが置いてかれるのかなと思う。
でも現実の世界には、それぞれがそれぞれの何かを抱えて生きて、死にたくても生きて、生きたくても生きられなくて。そんな不条理や理不尽とたたかいながら世界が回っていて、不幸は突然、偶然に訪れる。だからこそ、小さな幸せを日々の中に見つけて、懸命に生きなければと思った。そして、人に優しくしたいと心から願った。
優しくなれるだろうか、自分にも。