アナログ恋愛備忘録
ラインもツイッターもメジャーじゃなかったころ。
メールの通知を好きな人だけ光と音を変えて、
静かにふける闇の中煌々と光るのを待った夜。
受信ボックスを分けて
彼とのやり取りだけをひたすら楽しんだ日々は多分もうこない。
おはよう おやすみ のメールや時々親に隠れてした電話は、もう隠れなくてもいい年齢になった。
いつどこにいても何をしているのかある程度わかるSNSは、とんでもなく発達した恋愛に見えてしまう。
とはいえ、SNS発達当初のように「〇〇なう」などと呟く人も少なくなったし、そもそもあまりにもプライベートじゃなくなってしまった。
ラインもツイッターもアイコン一つでその人がどんな状態かわかるくらいには、私たち鋭くなってしまったし、告白もしていないのに、SNSで失恋だってしてしまう。
メールは仕事以外で使うこともなく、人と関われば「Instagramやってる?」と聞くことで、直接的に連絡先を交換するときの破裂しそうな心臓の音は聞けない。
それでも、スマホが復旧しここまで便利になったのは私たちが望んだことだというのだから、こんなことを思うこと自体なんとも理不尽だと思う。
ちょっとだけ、本当は戻りたいと思う夜がある。
読まれてしまったメッセージを見つめながら。
返ってくることがないまま下の方へと隠れてしまう名前を切なく思いながら。
電話帳には増えない、ワイファイでつながれたワイヤレスなやり取りを見返しながら。
読んだか読んでいないかわからずに、やきもきして待ったあの夜はもうこない。
彼と自分のためだけに二人で契約した電話を持つ日々も、
お互いの言い分を信じるしかなかった、あのSNSのない時間はもう。
もうこないのだ。きっと。