『人生の勝算』

1. はじめに

 皆さんは、幼くして不慮の事故で両親を亡くしたとしたら、その後の人生において生きていけるだろうか?
 恐らく、ほとんどの人は難しいのではないかと思う。その理由として、特に幼い頃というのは世の中を知らないため、両親は居て当たり前だと感じるし、自分と他の子の環境の違いに戸惑うことしかできないからである。加えて、親戚の家に引き取られたとして、運が悪ければ十分な愛情を得られずに人としての大事な成長過程を過ごすことになってしまうかもしれない。少なくとも、自分だったら無理だな~と感じた。
 『人生の勝算』の著者である、『前田氏』は8歳で両親を失い、生きていくために小学6年生で路上ライブを行い、そこでお金を稼ぐこと、つまり、『ビジネス』の本質を身に付けた。
 そんな彼が、苦悩と困難を乗り越え、ストリーミングサービス『SHOWROOM』を世に放つまでのストーリーがこの本には書かれている。ただ、彼のサクセスストーリーだけでなく、そのストーリーには『ビジネスの本質』が書かれているのでそれを簡単に感想を交えて紹介する。
 私自身、この本を読んですごく感銘を受けた。将来的には、前田氏と同様に起業して仲間たちとビジネスを展開していくことが『夢』なので、非常に面白く、勉強になった。
 前置きが長くなってしまったが、早速紹介していく。

2. 第1章『人は絆にお金を払う』

 はじめにの部分でも書いたが、前田氏は8歳という幼さで両親がいない環境になってしまった。父は物心ついたときにはおらず、最愛の母がいなくなってしまった世界で彼は絶望に打ちひしがれた。そんな時、『お金を稼ぎたい』、『自由になりたい』という想いが彼を『ビジネス』へと誘なう。
 親戚からもらったアコースティックギターを手に駅前の路上で『弾き語り』を始める。最初はオリジナルの曲を披露していたが、お客さんはほとんど足を止めなかった。そこで、オリジナル曲からみんなが知っているようなカバー曲に切り替えた。するとどうだろうか。なんと少しずつお客さんが足を止めてくれたらしい。そこには、『未知よりも既知』という法則に則り、見事に客の獲得に成功した。
 しかし、問題点が1つあり、ギターケースにはお金があまり貯まらなかった。そこで、更にお金を稼ぐために取った行動が、セレブの多い白金に『環境を変える』ことを決めた。ここでも、『未知よりも既知』の法則に従い、確実に客の関心を引いていった。その時にわかったことが、『濃い常連客』をつくることだと前田氏は書いている。
 私が考えるに、『濃い常連客』をつくるということは、『リピーターを増やすこと』と同義であると考えられる。リピーターというのは、次々に口コミを広げることで、自分が介入せずとも非常に多くの人に自分の存在をアピールすることが出来る。
 表題にある、『人は絆にお金を払う』ということが証明された瞬間だ。分かりやすい例で言うと、『アイドル』『アニメグッズ』にお金をかける人は非常に多いだろう。その理由として、そこには必ず『ファン』がいるからである。ファンはお金を消費することで、自分の推しメンやアニメの作品を応援する、つまり、『絆』を発生させているのだ。

3. 第2章『SHOWROOM』が作る新しいエンターテインメントのかたち


 前田氏は、SHOWROOMを立ち上げる以前から、エンターテインメント業界に次のような疑問を抱いていた言う。それは、『元々のルックスや、本質的な表現力とは関係のないコネなどでその運命のほとんどが決まり、努力や工夫で成り上がることが難しい。』
 このことから想像するに、前田氏は非常に不快感を覚えていたのではないかと考えられる。なぜなら、『前田氏自身が努力と工夫で逆境を乗り越えてきたから』である。環境やシチュエーションは違えど、同じ境遇を経験したことのある前田氏ならより一層そう感じてもおかしくないだろう。
 そこで、前田氏は芸能界を第4象限で表した。それが下の図である。

キャプチャ

A:駅前などでよく見かけるストリートミュージシャンなど。
B:ファンが多く、身近な存在に感じられるアイドルなど。
C:新垣結衣や石原さとみなど超大物芸能人など。
D:ファンも少なく、身近にも感じられない新人タレントなど。

 『会いに行けるアイドル』の売りで結成された『AKB48』をプロデュースした秋元康氏もBを意識していた為、アイドルというくくりでありながら、一般人が身近に感じられるためAKB48が爆発的な人気を誇っている。
 ここに注目した前田氏は『SHOWROOM』を発足することで、情報社会となっている今日において、より多くの人に『身近で質の高いエンターテインメントを提供する』ことを目的とした。そこには、もちろんビジネス的観点も盛り込まれており、自分がネットの世界に直接入り込むことは物理的に不可能なので、自分の分身である『アバター』を通すことで、人々は人気アイドルやアーティストとコミュニケーションを取ることが出来る。更に、『課金』をすることで相手にギフトをあげることが出来、ルームを盛り上げることもできる。

4. 第3章 『外資系投資銀行でも、求められたのは「思いやり」』

 
  前田氏は一時はDeNAに入社するものの、給料面から転職を決意する。そして、転職先である『UBS証券』で宇田川氏という超エリートと出会い、彼の人生を変える。
 前田氏が宇田川氏からもらったアドバイスは、『他人に好かれる』ことだった。彼は、宇田川氏が普通の人であればほとんどしないであろうUBS証券の受付嬢に挨拶を毎日のようにしていたという、エピソードを知って衝撃を受けた。
 当時、社内トップとして個人ができる限界を知ってしまった宇田川氏がその後に意識していたことには以下の2つがある。
 ・誰からも好かれてサポートしてもらえる環境をつくること。
 ・自分のこと以上に周りに時間を使って、周りを強く育てることで、チームとして最強になること。

 
 もう一人、前田氏の人生を変える人物に出会う。それは宇田川氏の一番弟子であり、前田氏のメンターであった藤井氏である。
 ある日、社内で営業の業績発表があり、前田氏は43/45とほぼ最下位だった。お客さんに電話を掛けどもなかな出てくれない前田氏に対し、藤井氏は電話を掛けたお客さんに必ず出てもらえるぐらいの信頼があった。切羽詰まっていた前田氏は藤井氏にアドバイスをもらいに行く。そこで一緒にお客さんの接待やクラブでの接待をして、藤井氏から『電話を取りたくなるような人物とはどんな人物か』という視点が欠けていたことに気づかされる。その後はアドバイスを実践し、業績を上げていった。
 ここからわかるのは、『相手に好かれる人間になること』、『相手が何を望んでいるか』を見極めることが大切である。これはビジネスにおいては必ず必要なスキルになるだろう。

5. 第4章『ニューヨーク奮闘記』

 アメリカに転勤した後も、日本にいた頃と変わらないスタイルでトップの業績を成し遂げた。そんなある日、小学生の頃にギターをくれた親戚のお兄さんの訃報が届く。これを機に前田氏は、「いつ死ぬかわからないのだから、生きているうちに新しい価値を創出したい。僕が死んだ後も、世界の人たちに幸せや付加価値を提供し続けられる、影響を与え続けられる何かを生み出すことに、エネルギーを投じたい。」という想いが込み上げ、日本に帰国し、SHOWROOMというプロジェクトを立ち上げる。
 この時の前田氏の様に、人が頑張れる動機となるのは、やはり何かを成し遂げようとする『野望』なのではないかと感じた。言い換えれば、『欲求』である。人は欲があるからこそ、無限の可能性を生み出せるのではないかと考えている。

6. 第5章『SHOWROOM起業』

 日本に帰国後、DeNA創業者の南場氏から連絡があり、一緒にご飯に行くことになり、そこで前田氏は自分のiPadを取り出し、事業内容をプレゼンしたが南場氏には刺さらなかった。そこで、南場氏からDeNAでの修行を提案され、DeNAに入社する。
 ニューヨークでの投資銀行時代に中国最大級のライブストリーミングサイトである、『YY直播』に出会った。ここで、前田氏にひらめきが宿る。そう、かつて行っていた弾き語り時代のことを思い出し、人間的なつながりや絆が存在し、演者と視聴者がお互いに抗議の承認欲求を満たしあうサービスを提供すればよいのでは?そう考えた前田氏に衝撃が走り、無我夢中でプレゼン資料を作成したそうだ。
 しかし、このサービスは最初は全く上手くいかず、『自分たちは必ず成功する』と根拠のない思いを抱きながら、ただ暗闇の中を走り抜けていたという。嫌味を言われることもあったが、それでも突き進んでいった結果、『アイドル』というコンテンツに出会う。最初に見た、地下アイドルのライブは、ファンが少ないながらも、汗だくになりながら踊るアイドルとそれに全力で呼応するファンの一体感が前田氏に衝撃を与えた。
 そこからSHOWROOMで配信してもらうためにアイドルのキャスティングをするが、人脈もお金もなかったため、地道に地下アイドルのマネージャに猛アタックし、結果として約160グループ、約500人の地下アイドルに配信をしてもらえるまでになったそうだ。
 さらに、事業を拡大するためにはSランクの『AKB48』『モーニング娘。』などのアイドルにもキャスティングをしなければならなかった。そんなある日、AKB48のプロデューサーである秋元康氏と会うことに。南場氏の紹介で一度会っただけだったが、その後何度か会う機会があり、何度もプレゼンを試みるが上手くいかず。約2年後に秋元氏がアメリカに行くという情報を得た前田氏は急いで同じタイミングで渡米した。情報をくれた方の計らいで会食を機に改めてSHOWROOMの魅力を説明。そこには、秋元氏の価値観を上乗せした今までにないオリジナルであった。そこで初めて秋元氏の好感を得、その後「一緒に仕事をしよう」と言って認められた。
 前田氏のひたむきな想いと、愚直なまでの努力が素晴らしいと感じた。ここで見習うべきは、前田氏は移動の機内で秋元氏が書かれた企画力や恋愛にまつわる書籍を読み漁り、秋元氏の『価値観』を学んだ。それをプレゼンに織り込むことで『相手が欲しいもの、やりたい事』を提案でき、相手の心をつかむことができたのだ。実現させたい事ほど、『相手の望むこと』を見極め努力することが非常に大事であると再認識することができた。

7. 第6章『SHOWROOMの未来』

 mixiがFaceBookに取って代わったように、パソコンからスマートフォンに移り変わったようにSNSに取って代わるものは『ライブストリーミング』であると前田氏は述べている。そして、そこにはSNS以上のコミュニケーションが存在し、有名アイドルであってもより身近に感じることができる。
 そこには前田氏の『人生のコンパス』が描かれており、世間がその方向に向かっていなかったとしても、SHOWROOMはライブストリーミング配信サイトで『世界一』を取っているだろう。

8. 『この本から学んだこと』

 私がこの本から学んだことは、
・好きなことをやり抜く努力
・他人に好かれる人間になる
・人生にコンパスを持つ

主にこの3つである。それ以上に沢山の事をこの本からは学ぶことができたが、上位3つを抜き出してみた。
 今後の将来、この学んだことを行動に落とし込み、将来の夢に向かって努力していくことを決めた。

やんまー

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