『人を動かす 』2/2
1. 人を説得する十二原則
① 議論を避ける
② 誤りを指摘しない
③ 誤りを認める
④ 穏やかに話す
⑤ ”イエス”と答えられる問題を選ぶ
⑥ しゃべらせる
⑦ 思いつかせる
⑧ 人の身になる
⑨ 同情を寄せる
⑩ 美しい心情に呼びかける
⑪ 演出を考える
⑫ 対抗意識を刺激する
①の「議論を避ける」ことの真の目的として、相手の自尊心を傷つけずに憤慨させない、つまり、相手の気を悪くさせないことが目的である。仮に議論をしたとして、議論に負けた相手の気持ちはどうだろうか。納得のいかないまま事を進めても上手くいくことはないと考えられるので、やはりここでも『Win-Winを考える』べきである。お互いに納得のいく方法が見つかれば、効率も最終の結果も全てが想像を上回るであろう。
②も①と似ているが、誤りを指摘された人は、自分の考え方やプライドを傷つけられたと感じるはずである。そもそもだが、なぜ他人の誤りをわざわざ指摘する必要があるのだろうか。特に指摘する『環境』は非常に大切であると感じる。大勢の前で指摘されれば、それは恥をかかせるだけになってしまう。その為にも基本的には他人の間違いは指摘しない方が無難である。
③の「誤りを認める」とは、「Lose-Winの考え方」をしろということではなく、自分が素直に誤りを認めることで相手とは議論(口論)にならず、事を穏便に済ませることができるからである。
④は、相手に与える印象の問題である。例えば、喧嘩腰で相手に何かを注意したら相手の気持ちはどうだろうか。喧嘩を売られたと思い、不要な争いを生むだけの何とも生産性のない結果になってしまうことが考えられる。そのような事態を避けるためにも、穏やかな口調で話すことが必然である。
余談であるが、リンカーンの名言にこんな言葉がある。「バケツ一杯の苦渋よりも、一滴のハチミツの方が多くのハエが取れる」
⑤は、相手に一度「No」と言わせてしまうと、それを翻すことは容易ではない。②と同様に相手の自尊心を傷つけてしまう恐れがあるからだ。相手に「No」と言わせないためにも、先ず議論の内容として相手に「イエス」と答えさせて、お互いが同じ目的に向かって努力しているという事を相手にも理解してもらうことが大切である。
⑥は『相手を理解する』という点においては非常に重要である。人は自分の事を理解してもらおうとする余り、『自分の話ばかり』しがちである。それでいて、自分の話したいことだけを話終わると満足してしまい、相手の話を聞かない。それでは相手も自分の事を理解してくれないだろうし、相手の事も理解できないだろう。相手を理解する一番の方法として、『相手にしゃべらせる』ことである。言い換えれば、『聞き手にまわる』ことである。それが、相手を理解する上で一番重要なことであると考える。
⑦は、人は他人から押し付けられた意見よりも、『自らが思いついた意見』の方を大切に思う。人間の性として、他人に自分の希望を聞いてもらえること程嬉しいことはないのではないだろうか。つまり、相手に相談を持ち掛けて、相手の意見をできるだけ取り入れることで、相手は自分の発案であると思わせて協力を促すことが可能になる。
⑧これは『7つの習慣』の第5の習慣、『先ず理解する、そして理解される』ところの本質と同じである。その本質とは、相手を理解することから始まり、過程を重ねていく中で自分の事も理解されればWin-Winの関係を築くことができる。
※『7つの習慣』のまとめもしてあるので、ぜひご覧ください。
⑨この著書には、相手に善意を持たせて、自分の言う事を大人しく聞かせる『魔法の文句』として、次の言葉が書かれている。「あなたがそう思うのは、もっともです。もし私があなただったら、やはり、そう思うでしょう。」この言葉の本質には、『相手を認める』という真理が隠れている。人は、他人に認められると嬉しく感じるため、意見を聞いてもらいやすくなる。
⑩は、相手の考えを変えるには、美しい理由をつけたがる気持ちに働きかける(訴える)ことが有効である。つまり、人間は誰でも正直で、義務を果たしたいと思っている。不正を働きそうな人間でも相手に心から信頼され、正直な人物として扱われると不正が出来ないように、相手の美徳に訴えかけることが大切である。
⑪は、『演出を考える』つまり、興行的な手法を用いることで人の注意を引くことができる。例として、石鹸や洗剤のCMでは、他社と比較した時に販売元の商品では他社が実現できなかった洗浄力を実現したという内容だったり、車のCMでは車の乗り心地やカーブをやすやすと曲がり抜ける性能に操縦者の笑顔が満足感を如実に表現している。
⑫人は、他人との競争を意識する傾向にある。それは、『優位を占めたい』という欲求に訴えることで対抗意識を燃やすということである。仕事が面白ければ、どんな人間であっても能動的に且つ完璧にやり遂げようと意欲を燃やす。
2. 人を変える九原則
① まず褒める
② 遠回しに注意を与える
③ 自分の過ちを話す
④ 命令をしない
⑤ 顔をつぶさない
⑥ わずかなことでも褒める
⑦ 期待をかける
⑧ 激励する
⑨ 喜んで協力させる
①人は最初に褒められると、その後に苦言を呈されてもあまり深く傷つかない。ある意味で、この『褒める』ことは麻酔の様な効果があり、その後の痛みは感じにくいのである。
②は、①と似ているが、人を褒めた後に苦言を呈する際に大切なのが、『どの接続詞を使うか』である。例えば、「君は短距離走がとても速いね。しかし、長距離走はとても遅いね。」この場合、最初に褒められても”しかし”という「逆説」が入ることで、褒められたことは批判をするための前置きでしかなかったのだと錯覚してしまい効果がなくなってしまう。それを避けるためにも、"そして"などの「順接」を用いることで、相手を注意しつつ配慮をした表現に変わり、相手も傷つきにくくなる。
③相手の考え方を変えるために、脅したり、放っておいたりという行動はほとんど効果がなく、それよりもその行動を取ったことで自分がどれだけ苦労したか、過去の過ちを話すと相手は話された体験談から自発的に変わろうと意識する。賞賛と謙遜は正しく応用することで、人に奇跡をもたらす。
④人は命令をされると従うどころか、寧ろ、命令に対して反抗したくなりがちである。ましてや、強い口調で命令されたら尚更である。その場合、どうしたら良いかと言うと、命令を質問に変換してお願いを持ちかけてみたらどうだろうか。言い換えると、『意見を求める』ということに近い。そうすれば、相手は命令されたと感じることなく、素直にお願いを聞き入れてくれるだろう。
⑤『人を動かす 1/2』でも記載したが、他人の誤りを指摘することは相手の尊厳を傷つけることと同義であると考えられる。相手の顔をつぶすということも、相手の尊厳を傷つけることになると考えられるため、相手の顔は立てるべきである。
⑥『人を動かす十二原則』の⑨に記載している通り、人は他人から評価され、認められたいという願望があり、認められると嬉しいものである。しかしながら、心無いうわべだけのお世辞には反発を覚えてしまう。批判によって、人間の能力はしぼみ、励ましによって花開く。
⑦シェイクスピアの言葉に、「徳はなくても、徳あるごとくふるまえ」という言葉がある。つまり、相手に美点を発揮させたければ、相手がその美点を備えていることを前提に公然と扱うべきであるということである。良い評判を立てることで、人はその期待を裏切らないように努めるであろう。
⑧相手に仕事をこなしてもらいたいがために注意しているはずなのに、それが罵りになってしまっては相手の向上心の芽を摘み取ってしまうことになる。そうではなく、相手を激励することで相手の能力を信じているとうことを伝えてあげることが大切である。あまり期待をかけすぎるとかえってプレッシャーになってしまう可能性があるので、その点に関しては注意が必要である。
⑨人は肩書や権威を与えられるとその位に見合った行動をやり遂げようと努力をする。そうしたことで、数パーセントでも成功の確立を高めることができたら、その分だけ他人を変える能力を高め得たことになる。そして、それこそが『利益』をもたらす。
3. 最後に
いかがだっただろうか。ぜひ、皆さんの学校のサークルやクラブ活動、職場などでこの著書の原則を試してほしい。
皆さんの多大なる成功をお祈り申し上げます。
やんまー