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群馬県太田市から学ぶ! 「ISO」導入成功事例

こんにちは。自治体とのお仕事を考えるチームのライターの緒先です。

前回の記事では多くの自治体が取得しているISO規格とは何かについて紹介させていただきました。もしもISOについてご存知ない時はこちらへ👇

今回はこのISOを行政サービスの向上に役立てている自治体として20年を超える経験を持つ群馬県太田市の取り組みをご紹介します。

1. きっかけー市民の不満と市長のイニシアチブ

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清水聖義(しみずまさよし)太田市長は2008年のインタビューで同級生からISOがサービスの質を向上させるのによいと聞いて、これを使って太田市を他の自治体から差別化できるかもしれないと思いついたと話しています。

いわば市長の鶴の一声でISO認証取得が目指されたわけです。しかし、実はISO導入を強力に後押ししたのは市民の行政に対する不満だったそうです。

「群馬県太田市は、かつての中島飛行機、今はスバルの車を作っている富士重工業を中心とした人口15万人程度のまちで、工業出荷額が北関東では1位の1兆5000億円という工業都市です。 

現在の市長は来年で2期目が終わるのですが、 その前に20年間やっていた市長が計画した21階 建て庁舎建設に、反対を表明して出馬し当選しました。当時、市民が市役所に抱いていた不満は、おおむね次のようなものだと思います。

・市役所の業務が市民に不透明である
・役所は動きが遅い
・予算至上主義である
・担当者によって事務処理に差がある
・「業務の品質」が外部から評価されていない
・市民は納税者であり顧客であるという意識が欠落している


 これらがISO導入前の不満で、こういったことに対応して役所を変えていこうということで取り組みが始まりました。」

と、当時の太田市企画部行政経営課の星野晁さんが2002年の講演会で話しています。

2. 市役所は中小企業ー何をどうしたのか?

経営感覚を行政の現場に持ち込みたかった清水市長は「市役所は中小企業」と例えました。中小企業では人数に限りがあるため一人何役もこなさなければならない。市役所でも同様に少ない人員でも業務を効率化し、少ないコストで最大の効果を得られる工夫をすべきだということです。

初めは行政改革の名の下に、まず市庁舎のトイレ掃除を業者に頼まず、職員で行うことにすることから始めたとのこと。これだけでも年間数千万円の予算が節約できたそうです。

いろいろな施策をしていくうちに、品質とサービスのマネージメントシステムであるISO9001に太田市は日本の自治体として初めて挑戦し、1999年に認証を取得しました。

「ISOでは設計開発というのですが、(市民=)お客さまの要望を得て新サービスを構築していきました。具体的には、例えば、隣の町と住民票の相互交付できるようにしたり、大型のショッピングセンターに市民窓口を設置したりました。」

今では割とあるモールの自治体窓口サービスですが、当時はとても先進的だったはずです。

また、市民の声を聞くことを重視して、市長室ファックスを設置し、市民が自由にメッセージを送り、直接市長が返事をするようにたり、その延長線上でフリーダイヤルの24時間苦情受付サービスが開始されました。この市民からの苦情は施策のアイディアの宝庫だったようです。

ISO9001は当初窓口サービス等に限られていましたが、市役所全体に波及させたいというニーズにより太田市は行政評価システムを導入しました。
それは、能動的にISO9001のクオリティ・マネージメントシステム、追って導入したISO14001の環境マネージメントシステムの実装に市役所全体で取り組むためでした。

ISOの要求事項、しなければいけないこと は規格等で決まっています。「仕事をきちんと」 行うための規格、かたや「環境にやさしく」仕事をするための規格として、それぞれをとらえながら業務を行っていくのです。これの是非や重要か満足かというところを、行政評価を使って確認していきます。

国際規格であるISO9001を使いながらサービスの継続と改善を行うために行政評価を取り入れた、太田市マネージメントシステムが現在は出来上がっています!

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おそらくみなさんもよくご存知のPDCA(PLAN-DO-CHECK-ACTION)
サイクルが出てきました。でも一つアルファベットが多いですね。

そうです。

SEE:市民の目線=ニーズが入っているんです!

これが自治体の経営にとって非常に重要な要素であることは、マネージメントシステムをうまく機能させた太田市のその後の取り組みに表れています。先の行政経営課の星野さんはこう言っています...

(先の)ショッピングセンター内のサービスセンターは、当初は市民課の出先として、住民票の発行、転入・転出の届け、保険証関係をやっていましたが、好評なのでもっと 業務の幅を広げてほしいという要望があり、税の証明の発行までやっています。

さらに広げて、 現年度分に限って納税もやっています。市民課の職員なのですが、税の仕事もするわけです。 そうすると、税の仕事のきちんとしたマニュアルがなければ、仕事ができません。

市民サービスの低下につながらないようにする
ためには、 この仕事をするために何が必要かということですから、関係部門と連絡を取り、サービスセンターにおける税の業務についてきちんと決めます。

それを業務指示書に落としていくわけですが、そういう作業によって、縦割りという感じは比較的薄らぎ、結構フラットにはなってきました。

(また)ISOにある内部監査という仕組みを使って、職員相互がシステムチェックをしており、これは規格の中にもあるのですが、定期的に、その職場以外の資格を与えられた人間が、 その課の目標どおりにきちんと仕事ができているかどうかをチェックするのです。そういう仕組みで、質が落ちないように維持をしています。

3. ISOのメリットと成果

太田市はISO認証をツールにして、行政サービスをだんだんと改善してきたようです。ISOと行政評価システムを運用してきたメリットと成果はどんなものだったのでしょうか。主だったものをリストします。

1. 行政における経営感覚の定着―例えば現場の部長に予算の裁量が
  与えられ経営目線で施策が実施できるようになった。
2. 業務への意識改革、市民はお客さまという感覚が定着してきた。
3. 無駄な仕事が減り、職員の適正配置が可能に。
4. ISOや行政評価システムによる組織的な教育訓練が可能に。
5. 縦割りではなく横串を通す市民のためのコミュニケーションが増加

また対外的な成果としては・・・

太田市のブランディングができていました。
市長は「ISOのまち太田」というスローガンを掲げています。

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太田市はものづくりのまち、みんなで品質を高めていこうということで、ISO推進協議会や中小企業ISO認証取得支援事業奨学金制度(2000年度から2006年度まで)をつくり、企業の意識を高めISO認証が取得しやすい環境づくりをしてきました。

何よりも大きな成果を聞かれて市長はこう言っています。

「市は市民に高品質なサービスを提供できるようになり、市民はNPOといった活動で積極的に市政に参加するパートナーの関係になれた。」

まとめ

太田市によるISOと行政評価を使った独自のマネージメントシステムの取り組みいかがでしたか。こんな👇ポイントが見えてきたかもしれません。

▷ 自治体は誰のために仕事をするのか ⇨ 市民の目線が一番重要! 
市民=お客さま目線で施策を考え、フィードバックいただき顧客の満足度を上げるために改善して行く。これは民間であろうとNPOであろとも変わらないことかもしれません。

ISOと行政評価システムは車の両輪 ⇨ 2つを上手く運用することで
市民のための課題解決を図り、行政サービスの果てしない向上が可能。

ISOシステムとその運用で市民と協動=パートナー関係を作りそれを進化させて行ける。

最後までお読みくださり、どうもありがとうございました。

それではまた次回にお会いしましょう!

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