『モテキ』と『ヲタクに恋は難しい』の先の時代―『花束みたいな恋をした』のカウリスマキ新作デートが描き出すもの
10年前、映画『モテキ』(2011)が描き出したのは、アウトサイダーたちの表現手段だった「サブカルチャー」が、マイルドなオタク趣味を言い換えた「サブカル」という言葉に成り代わった時代である。そして、2010年代には、グラストンベリーなどの海外ロックフェスティバルを意識して始まったはずの国内ロックフェスが、徐々に鎖国的なラインナップへと傾倒していく。主人公たちがロックフェスで抱き合ってキスをするラストシーンが、日本中のシネコンで上映されたという事実は、90年代からロックやヒップホップを好んで聴くようになった筆者にとって、それなりに衝撃的だった。同時代のポップカルチャーさえ除外すれば、「セカンド童貞あるある」の域を出ない『モテキ』はしかし、ロックフェスが一般的に認知されたデートスポットに様変わりした記録映像として重要である。その点で、『モダンライフ・イズ・ラビッシュ〜ロンドンの泣き虫ギタリスト〜』(2017)に出てくるイギリスの、雨水と泥にまみれたロックフェスのテントを見ていると、牧歌的な気持ちにさせられたものだった。
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