YSS 第十一弾
【ドキドキラブストーリー】
デートと言うのは
そのストーリーにこそ意味がある
デート待ち合わせ時間は朝の11時
現在11時5分
待ち合わせ場所にたたずむ私の彼氏ハヤタ
それを遠くから見つめる私ミミカ
デートとは彼女が遅れてやってくるものである
私はタイミングを見計らいハヤタに近づく
「お待たせ!ごめん…待った?」
私史上渾身の上目遣いを彼氏に炸裂させる
「…あぁ…ううん、全然待ってない……えーっと、これ毎回やる必要ある?」
はい、カット!
「ちょっと、余計なこと言わないで、デートはストーリーが大事なの。わかる?ここは可愛い彼女が遅れてきたのを爽やかな笑顔で許す彼氏ってのが醍醐味なの!」
「はいはい、分かってるよ、何度も聞いてるから。」
「監督に口答えする役者は降板させるからね。」
「あ、今までお世話になりました。じゃあ。」
そう言いそそくさと帰ろうとするハヤタ
私はそれを必死に止める
「やだ!私のストーリーにはハヤタが必要!お願い帰らないで!」
必死に腕を掴み少し半泣きになりながら止める私を見て少しニヤつくハヤタ
「監督と主演俳優がズブズブのストーリーって中々だな。」
「私は監督兼主演女優だもん。主演俳優と主演女優がズブズブなのはよくあることよ。」
「あっそ。で?」
「ん?」
「デート。するの?しないの?」
「する〜!」
私は満面の笑みでハヤタの手を握り
デートへと走り出した
この時にはストーリーなど頭から抜け落ちていた
今日のデートは水族館
目的地に到着すると
私のストーリー脳が蘇ってくる
「よし、キラキラした魚がいる所に行こう。そしたら私がわぁ〜綺麗〜って言うから、ハヤタはミミカの方が綺麗だよって言うんだよ。」
「魚より綺麗って言われて嬉しいの?」
「違う!比較して綺麗じゃなくて、綺麗って言われることが大事なの!」
「ミミカはまだまだ可愛いお子ちゃまだよ。」
「あ!今のいけないんだ!せっかくデートのためにメイクもしてオシャレもして来てるのに!これは減点案件だ!」
「はいはい、行くぞ。」
問答無用で手を引かれ館内へ入っていく私たち
ストーリー通りにならなかった私は
少しぶすくれていた
水族館はよくできている
順路に沿って歩いていくと
ちゃんとストーリーが成り立っていた
そのストーリーに魅了されてか
私はいつの間にか笑顔になっていた
すると水槽を覗いていた私に
ハヤタが言葉を投げかける
「きれいだよ。」
「えっ!?なに急に!?」
「別に〜。」
そんなドキドキの状態のまま
水族館の順路が終わりを告げる
順路を終えると
ちょうど名物のアシカショーの
入場が始まろうとしていた
私のストーリー的には
客席の前らへんに座り
水しぶきを浴びる予定だったのだが
この時もストーリーの事は忘れて
普通に楽しんでいた
アシカショーを終えて
お土産コーナーにいる私たち
私は迷っていた
「うーん…うーん…。」
「…どっちにするの?」
「うーん…欲しいのはジンベイザメ…でもこのマンボウのブサカワ感も捨て難い…うーん…。」
「じゃあ、ミミカがジンベイザメで俺がマンボウ買うよ。」
「え!いいの?」
「うん。」
「やった!えへへへへ。」
「このマンボウ、ミミカに似てるし。」
「ちょっと!」
こうして水族館でのデートは幕を閉じた
お昼を食べるために
近くのファミレスに寄っていた
ハヤタはメニュー表と睨めっこをしていた
「うーん…うーん…。」
「…どうするの?」
「うーん…ドリアが美味しそうなんだよなぁ…でもパスタも美味しそうなんだよなぁ…うーん…。」
「じゃあ、半分こする?」
「え!いいの?」
「うん。」
「やった、えへへへへ。」
ハヤタは私の一つ年上
しかし、たまにこう言う
子供っぽいところが可愛い
誰に似たことやら
そして頼んだメニューが届きご飯を平らげる
そして本日のデートのメインへと向かう
向かったのは映画館
今日は今話題の恋愛ラブストーリーを
見に来たのである
周りはカップルだらけ
もうドキドキが止まらない
「カップル多いな。」
「私達もでしょ?」
「…そうだな。」
私達はネットでチケットを購入していたため
あとは発券するだけだった
映画の定番と言えばポップコーン
しかし、お腹を満たしてきたため
私たちには必要なかった
「飲み物どうする?」
「俺はいいや、途中でトイレ行きたくなるのやだし。」
「あぁ、確かに。じゃあ私もいいや。行こ!」
私達は手を繋いで
自分たちが見る映画のスクリーンに向かった
映画の内容は超が付くほどの純愛物
惹かれ合う男女にふりかかる試練
その試練を乗り越え更なる愛を掴み幸せになる2人
映画のラスト、主人公とヒロインが
キスするシーンでは私は泣いていた
やはり恋愛はストーリーなのである
映画を見終わったあと
私とハヤタは散歩をしていた
今日のデートで回った水族館や映画の感想を
話しながら和気藹々と歩いていた
「いやぁ、良かったね!」
「あぁ、映画?」
「そう!もう本当に良かった!いいよね!自分の思いが相手にちゃんと伝わって、最後には結ばれる!定番って言えば定番だけど、現実だとなかなかそんな定番ないもんねぇ〜。」
「まぁそうだな。」
「…なんか反応薄くない?」
「ん?」
「ちゃんと見てた?」
「見てたよ。羨ましいなぁって。」
「あら、私との恋愛はつまんないってこと?」
「そんなわけないじゃん。ただ…。」
「ん?」
「ミミカも羨ましいなとは思ったろ?」
「…まぁ…そうだけど…。」
ハヤタとの会話に言葉を詰まらせる私
あからさまに落ち込んだ私にハヤタが声をかける
「ちょっとそこのベンチ座ろうか。」
「え?う、うん。」
二人掛けのベンチに腰掛ける私達
すると、ハヤタがポケットから箱を取りだした
そして中身を私に見せるように差し出す
「え?これって…。」
「その…指輪…。」
「うそ!もしかして、プロポーズ!?やだ、嬉しいけど、私達まだ付き合ってちょっとだし、それにまだ結婚できる年じゃないし…。」
私は身体をくねらせながら
嬉しさを全面に溢れださせていた
「いや違うよ。」
この言葉で身体をくねらすのはやめた
しかし、私の嬉しさは次のハヤタの言葉で
更に溢れ出すこととなった
「違う…けど…でも、結婚したいくらいに俺はミミカのことが好きだ。それだけは分かってもらいたくて…。」
「…嬉しい。ありがとう!私もハヤタの事大好きだよ!」
「…ありがとう。」
私達はお互いの愛の確認をすると
暫く見つめ合い、静かに唇を重ね合わせた
距離が離れるとお互いに微笑み合い
私はハヤタから貰った指輪を指にはめ
二人で手を繋ぎ帰路へと着いた
こうして私たちのデートは幕を閉じた
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「ただいまー。」
「ただいま。」
私とハヤタはそう言いながら
同じ家へと入っていく
すると中から私の母親が出てくる
「あらおかえり。晩御飯できてるよ。二人とも手洗っておいで。」
私とハヤタは洗面所に向かい
手を洗いうがいをする
そして、ハヤタは2階へと
私はリビングへと向かった
するとリビングで晩御飯の準備をしていた
母に話しかけられた
「あら、ミミカ嬉しそうね。今日のお兄ちゃんとの映画そんなに楽しかったの?」
「うん!すっごく楽しかった!」
私達の恋愛は私達だけの秘密
私達のラブストーリーは
常にドキドキに溢れているのである
ーFinー