キャッチボールを左右両方でやれるようになった

1年がかりで、利き腕でない腕でもボールが投げられるようにした。そしたらいろいろ発見があって面白くなってきたよって話。

話の概念的には別に野球である必要はないし、スポーツでなくても使いまわせるやつなのではないかと思う。例えば箸の持ち方から体の使い方を考えるとか。


うまさよりも機会の有無の方が大事

野球経験は小学生の頃、軟式野球の数年間だけ。しかもチームでいちばん下手だったし、有り体に言ってしまえば「下手の横好き」である。とはいえ、友人と軽くキャッチボールをするくらいなら別に困らない。

10年以上も時間が過ぎた後となると、上手/下手よりもそもそも遊びに付き合ってくれる友人がいるかどうかの方が大事になってくる。

キャッチボールをするようになったのは就職してしばらく時間が経ち、コロナ禍で外食にも制限がかかっていた頃。
友人と話していて、体が動かしたいな~という流れになり、近くの公園でやることになり、定期イベントみたいになった。時には複数人でやることもあった。

当時は月に数回くらい、今は多くても月に1回くらい。あまりに暑い時期とかは避けるので、梅雨前にやったと思ったら次はもう秋になっていました、みたいなこともある。

もともと僕は右投げで、肩もそれほど強くなく、コントロールも別に良くない。塁間のキャッチボールがなんとかできる程度。というか、そもそも小学生以来野球から離れていたので、ボールを投げたのが十数年ぶりだったし、それで上手いも下手もないだろう。

ただ、なまりきった体にキャッチボールは効果覿面で、いい運動にもなるし、気晴らしにもなる。短ければ30分以内、のんびり休みながらやるとしても1時間もあれば十分だ。

別に猛ダッシュするとか何百球も投げるとかではないし、そこまで激しい運動にもならない。ただ、そもそもやる相手がいないとどうしようもないので、その確保の方が問題かもしれない。

左投げに挑戦

コロナ禍真っ只中にキャッチボール自体を始めてから、すでに数年経過している。その中でふと思ったのが、普段投げる右投げではなく、左投げをやってみたらどうなるんだろう、という興味だった。

別に無理にやる必要などないし、なんか面白そうだなというだけ。そんなわけで、上野御徒町で左利き用(つまり右手にはめる)グローブを購入してみた。これが今から1年と数か月くらい前、2023年の秋の話である。

で、やってみたところ、実に難しい。右と同じように投げようとしているのに、全然同じようにならない。投げ慣れていないし、利き腕じゃないし。普段余裕で届く距離も全然届かない、なんか肩から変な音がした、それにボールを捕るのも難しい……という具合。

ただ、しばらく時間をかけながら続けてみたら、1年くらい経ってようやくまっすぐ投げられ、また相手になんとか届くようになってきた。それでもやっぱり思ってもみない方向にボールが逸れてしまうことはあるものの、一応それっぽい感じになっている。

ここまでがおおよその経緯である。

いろいろ発見があった

これが本題。気づいてしまえば「なにを当たり前のことを」という感じだけど、実際に体感してみるとうわあすげえぇ!!って思うあたりアハ体験みがある。

わかりやすいところだと、腕の振り方。利き腕(右)だと軽く振るだけで距離もコントロールもある程度正確に行くし、スピードも調整できるのに、左だと全然思うようにいかない。

そもそもスムーズに腕が振れない。びっくりした。「あれ?思うように力が入らなくね?」と。力の入り方も変で、とても不器用になったような。おかしい。こんなことは許されない。

他にも違和感だらけ。「違和感しかない」という言葉がしっくりくる。
腕の振りにくさ、足の踏み出しにくさ(油断すると右投げのときのステップになる)、捕る時もうっかり本来のように左手で捕ろうとしてしまう、ボールがうまく握れない。

少し距離が変わるだけで力加減がわからなくなる、それどころか同じ距離でも1球ごとに力の入り方がバラバラ、なんとか同じように投げようとしても低すぎたり高すぎたり。

ここから思い至ったことは「つまり、右投げでは全部無意識にできていた……?」、そして「ひとつずつ意識して取り組めば少しずつ良くなるのでは?」である。

左右で使い勝手が違う

早速着手したのが、投げるフォームの改善。右で投げやすい位置や運びと、左でやりやすいそれが違った。まるで別人の体を動かすみたい。全くの別物。

右投げと同じように左でやろうとすると、肩からゴキッという音がしたり、普段使わない筋肉に張りを感じたり。なので、右とは違う、左のためのフォームを作る必要があった。

尤も、1年経ってもまだフォームが固まっているわけではないのだけれども、ある程度スムーズにいく位置とかおおよその腕の振り方とか、そういうのがあった。

もしかしたら利き腕でも別に常に同じフォームで投げられているわけではなく、日々のコンディションによって体の動かしやすさが変わるのかもしれない。この点については、右で投げるときにも少し気を遣うようになった。

理科の実験みたい

日によってコンディションが変わる。しかも不慣れでまともに固まっていない段階、どこをどう直すか考えようという時点からずっとそう。

なので、せめてヒントのひとつでも欲しいと思い、キャッチボール当日には腕の振りやすさを確かめるために、ゆっくり振ってみたり、ストレッチをしながら伸び方を確かめたりするようになった。これのおかげで、利き腕である右投げでも動かしやすくなったりといった恩恵もあった。

ある日には投げているうちに同じようなコントロールミスが続いた。体の開き方の癖とか、ボールを離すタイミングとか、いくつかの要因がありそうだったのでひとつずつ意識的に取り組んでみた。すると、今度はまた違ったところにボールがいくコントロールミスをするようになり、「ひとつバグを直したと思ったらまた別のバグが発生した」みたいな状態になった。

かと思えばちょっと距離を遠くしたらなぜかうまく投げられたりして、「もしかして近すぎて力の入れ方がおかしくなってたのかな」と思い至って、今度は「じゃあ距離ごとにフォームも変わってるのかな、振り方調整してみよう」とかになってくる。まるで理科の実験みたいだ。

バッティングセンターでも

投げるだけでなく、打つ方でも体の使い方を意識するようになった。

もともと左打ちだったのが、ちょっとしたことで小学校の高学年になったくらいから右打ちに変えていたので、一応右でも左でも打つことができる。

とはいえフォームはやっぱり全然違うもので、それに応じてボールの捉え方も違う。こちらもやっぱり日によって打ちやすさが異なり、右だとちゃんと打てるのに左だと全然当たりすらしない日があったり、かと思えば左の方がうまく打てる日があったり。なんだか不思議な感じだ。

その中でも「昨日打ったとき、足の出方おかしくなかった?窮屈になっていたような……」などと思い至り、じゃあ今度行くときはそのあたり気を付けてみようとかいう感じで試行錯誤していく。しかしそれもまた、うまくいった日と同じやり方を別の日にすると全然うまくいかない、なんてこともあったりする。よくわからない。難しい。

体育でこれができたらなあ

これは今更感あることなのだけれども、中学高校の体育でこういう試行錯誤ができればなあ、と思うことも時々ある。

サッカーとかバスケとか。他の種目もそう。走り方のフォームを変えればどう変わるとか、体のしくみからすればこうした方がスムーズに回るとか、認知特性上どういう強みや弱点があるからどのポジションだとどういう動きにつながるとか。

そうは言っても、当時そんなことを言われたところでどうせろくに聞かないのでは、とも思う。今楽しめるように動かしているというだけでも十分なのかもしれない。

あとはランニングも時々しているので、そこでも走りやすいペースの維持だとか、フォーム、息を切らさないぎりぎりのライン、そういうあたりを調整したりも。体を動かすことを通じていろいろ探っていくの、面白いです。