鴨胸肉のロースト オレンジとエスプレッソ珈琲のソース
昔、ほんの少しだけ大学の学食で働いていたことがありました。ろくに学生が来ない大学で、仕事と言ったら大学で寮生活をしている卓球部の学生に朝昼晩の食事をつくることでした。
私以外に二人調理師がいまして、1人は青山や麻布のイタリア料理店でシェフを歴任して、テレビ番組「料理の鉄人 デザート対決」でイタリア人とペアで出演した方、もう1人はフランスの三ツ星レストラン「ラムロワーズ」で部門シェフを歴任された方。
食事も自家製のベーコンを使ったり、トロットロのスクランブルエッグだったり、ポトフにサルサベルデが添えてあったりと手間隙かけたものでしたが、学生は平気で残す!そして、学校の理事長が「こんなもん出すな」とクレームをいれてくる…そんなモチベーションのまったく上がらない職場でした。こんなことになったのも、そこそこ有名な実業家(Wikipediaにも載っている)のせいなんですが、その話はまた別の機会に。
そんな中で、三ツ星フレンチ出身の方がパーティー用につくっていた料理が「一本まるごとローストした子羊モモ肉、オレンジとエスプレッソ珈琲のソース、じゃが芋のピューレ添え」でした。ロゼに火入れされたお肉も美味しいのですが、ソースの香りのインパクトとじゃが芋のピューレの滑らかさが素晴らしくて、感動という点においては、料理人人生で1、2を争います。今回は子羊ではなくよりオレンジと相性の良い鴨肉でつくりました。よくよく調べてみると、オリジナルは子羊ではなく鴨肉らしい。
作り方
·鴨胸肉の皮目に格子状に切れ目を入れ、塩とトレハロースをふり、しばらくおく。
·蜂蜜と赤ワインビネガーでキャラメリゼし、オレンジ果汁とグラスドヴォライユを加える。塩で味を整え、コーンスターチで少し強めに濃度をつける。
·エスプレッソ珈琲を加えひと煮立ちさせる。この作業は盛り付けの直前に行う。
·鴨肉の皮目をカリカリに焼き、ロゼに火入れする。付け合わせは季節野菜のロースト。