LOWな民度に嵐のため息
知人に誘われ食事会に行った。
ホルモンの有名な店があって、ようやく取れた予約だという。
コロナ禍なのでしめやかに営まれた食事会ではあるが、男女が同じ比率で集合している時点で合コンでは...?と邪推せずにはいられなかった。
大手広告代理店勤務(既婚)のもじゃもじゃがホルモンそっちのけで自身のプレゼンをしている。いちいち可愛い相槌を打つ知人。かたや国内NO.1車両メーカー勤務(既婚)のムキムキも負けじと“目にモノ見せてやるゼ俺の成績功績まじこれ奇跡ィ!”とマウントを取ってくる。だから相槌打つなよお前も!調子乗っちゃうじゃん!
(それともまさか...ここは...シブヤ・ディビジョン...?)
そう錯覚しそうな程の熱いラップバトル。
“だったら俺だってジョインしちゃうゼ!”と懐から龍の絡みつくデコマイクを取り出し、“派遣社員の立ち位置の難しさ辛さむず痒さァ、いいさそれも醍醐味さァ!退勤後のダルさしんどさ脇汗の臭さァ、アラフォーになって痛感さ足腰の脆弱さァッ!”と暴れ狂いたい。
ヒプマイの世界ならそれもありだろう。
だがここは脂が飛び散るただのホルモン屋、ヒプノシスマイクを武器に熱い火花を散らす世界線ではない。
相槌を打つよりホルモンを咀嚼したい。
思ってもいないヨイショ言葉で自分の口を疲弊させたくもないし、所詮は地位や権力やお金だよねという暗黙のマウントに降伏したくもない。
もじゃもじゃは奥さんと子供を残して別邸でのびのび暮らしていることを自慢し、ムキムキもほとんど家に帰らず愛人と週末を過ごしている事に優越を感じているようだった。
知人には申し訳ないし、参加させてもらえるだけでも光栄なことは百も承知だが言わせてほしい。
そんな貧弱な語彙で濡れる程こちとらバカじゃねんだよ!ひけらかす地位や能力が己の印象や価値を下げてるってなんで分かんねんだよ!つーか既婚が家庭放ったらかして女と飯食った挙句、違うオンナの話して悦に入るってどんだけ下衆いんだよ!LOWな民度に嵐のため息だぜ!
この食事会で唯一分かったのは、“こいつらのホルモンは、きっと食べても美味しくない”ということだけだ。