071 「上手くボーッとする」のが好き <上>
『デフォルトモードネットワークに おまかせ!(notアッコ)』
1.
25歳ぐらいまで本当にダラダラ過ごしていた。
その反動からか、ここ3年ぐらいはかなり色んなことに興味が出てきて、空いている時間で色々なことに手を出して調べたりしている。
とは言っても、ちゃんと人に師事したのはピアノ教室ぐらいで、あとの映画や宅録、仏教などはすべて、自分で本を読んだり、詳しい人の解説を聞いたりしながらの独学である。
それぞれを専門的にやっている人からしたら、どれもにわか勉強の範疇だと思う。
それでもやっぱり「知らないことの中にこんなに面白いことがあったなんて!」と驚くたびに楽しくなってクセになるし、全く関係がなさそうに見える分野の知識同士が結びついたりする度に興奮してやめられなくなる。
「色んなことに手を出して何にも身にならない」かどうか、この時点ではわからないので、今は知的好奇心にまかせて色んなものを自分の中で結びつけながら知りたいがままに知識を貪っている状態である。
そのおかげで、プロレスのにわか勉強をした時に、好きなハロープロジェクトと結びつけて「新日の三銃士はモーニング娘。、全日の四天王は松浦亜弥、UWFは太陽とシスコムーン、大仁田厚率いるFMWはミニモニ。」という印象で覚えることが出来て、これをプロレス好きな友人の西野くんに話したら、斬新なアングルだとまあまあ関心された。
手広く興味を持たないとこういう結びつきはなかったと思うし、何より楽しいので、どん欲に色々見ておいてよかったと思った。
2.
自分の中で一斉に色々なことに興味が出てきてからというもの、とにかく時間が足りない。
時間の使い方が下手なのかな?と、色々やり方を工夫したり時短する方法を考えたりしていたが、結局は、やりたいことからやりたいことへ、途切れる間もなく次々やって、頭がパンパンになってから倒れるように眠っていた。
「ダラダラするのは時間が勿体無い!」とセルフ詰め込み教育をしていた。それはそれで楽しかったが、頭が疲れて仕方なかった。
その過程で、脳についての、にわか勉強をしている時に『デフォルトモードネットワーク』という概念を知った。
脳は「ボーっとしている時にも、覚えたことや潜在意識に入った記憶の整理をしている」らしく、デフォルトモードネットワークによって”何もしていない時に”アイデアが整理されひらめいたり、見たものの記憶が定着したりするらしい。
その時点で、”ダラダラは敵”思想に陥っていた自分にとって、これは目からウロコだった。どおりで頭が疲れるわけだし、ひたすらやってもひらめかないときはひらめかないわけだ。
睡眠以外に、「脳が覚えたことやアイデアを整理する時間」を取ってあげていなかった状態だった。
これはバイトの初日に、メモを取る時間も与えずに、200個ぐらい一気に仕事を教えられて、はいじゃあ次~と更に詰め込もうとされているようなものだ。
僕はそれでバイトを一日で辞めたことがある。あのバイト初日の「ちょっと待ってよ…」という状態を、知らず知らずのうちに自分の脳に課していたということか。
そこからは大いに反省し、ダラダラすることも必要で、むしろ記憶を色濃くさせたりアイデアの整理のために、必要な時間だと考えられるようになった。適度にダラダラする時間を意図的に作るようになった。
最近読んだ『思考の整理学』という本が名著で、多分に感動したのだが、その中でアイデアの熟成を”酒造り”に例えた章があった。
・「どんなに”いい素材(≒ビールでいえば麦やホップ)”があって、”それを発酵させるための酵母”たるアイデアがあったとしても、それを混ぜ合わせればすぐにビールになる訳ではない」
・「頭の中の醸造所で寝かせて、時間をかけ、アルコールが醸し出されるされるまで、素材と酵素の化学反応を待つことが大切」と書いてあった。
これがデフォルトモードネットワークに他ならず、この理論を援用して、ダラダラする時間で発酵を待っている、と考えるとかなり肯定的に捉えられるようになった。
(続きます)