芸術関係に転職した頃
私が、デザイナーから、芸術関係の職業に転職したのは、私の進んで来た道の行き止まりが見えたようだったからだ。
10年以上のデザイナーとしてのスキルを、まるまる手放すのは少し勇気がいった。
そして、全く素人である芸術関係の職業で一体何ができるのかも分からなかった。
デザイン業界で自分の表現について迷いに迷って、芸術に救いを求めた。という言い方が分かりやすいかもしれない。
転職して新生活を始めた私は、何もかも手探りで、何らかの解答を得て安心したかった。
そこで、新居を、芸術がどんな風に生活に介在するかについて考察したり、実体験したりする私の研究室にすると定義づけることにしたのだ。
暮らしの中の芸術の介在の仕方を考えるのだから、その場を「暮(くれ)」と名付けた。
残念ながら、私の生まれ育った家庭には、文化や芸術などの気配は無く、それまで、芸術家も芸術品も憧れでしかない、日常から乖離した存在だった。
でも何故か私はそこにしか救いを求められないと思っていた。
私の辿ったデザインという枠組の中では求められなかった答えを求めて。
何とか確実なものとして芸術を自分の生活に引き込みたいと思っていた。