【20分・2人・声劇台本】秘めた告白
男1:女1
【演じる上で注意点】
注釈:以下は、読まないでください。
() 描写(読まないでください)
[] セリフ読み方
【】各場面
A 男性の名前を入れて読んでください
B 女性の名前を入れて読んでください
【あらすじ】
幼少期より一緒に育ってきた、執事とお嬢様。2人は、交わらない身分の差を抱えた両片思い。そんな2人はある日、街へお忍びで出かけることになる。秘めた思いを抱えた2人のお話。
【台本】
【屋敷・朝】
(扉が開く音)
男「失礼します。お目覚め、いかがでしょうか」
女「うっ…カーテン開けないでよ…[伸びをする]んーーー!」
男「来週より、お話させていただいたアレ、始まりますね」
女「[あくび] ふぁ~…A、なんだっけ?、アレって」
男「お気になさらないでください。
お嬢様、先に朝の支度をしていただきます。本日のドレスです。」
女「ありがと…今日は、青。…うん、そのドレスでいいわ」
男「では、お嬢様、ダイニングルームでお待ちしております。」
女「えー、今日も一緒に行こうよ」
男「いえいえ、私は執事の身、先に行って準備を完了させてまいります。それでは。」
女「…(少しの沈黙) 行ったし…私の事どう思ってるのかなぁ…」
(沈黙)
男「お待ちしておりました。」
女「あれ、パパとママの分は?」
男「今日は婚前巡礼に行かれております」
女「なにそれ?」
男「事前にお伝えしました通り、来週からお嬢様のお見合いが始まります。その為に、色々なところで挨拶周りをして、最後の出席者の確認をしております」
女「[食べながら] えー?にゃにしょれぇ?」
男「まだ、お口のお食事が残っております」
女「(少し沈黙) なにそれ?聞いてないけど?」
男「事前にお伝えしております。」
女「私、嫌だよ」
男「旦那様のお決めになったことなので」
女「え、いや…[イラっとしながら] なんも聞いた事ないから言ってるのよ」
男「申し訳ございません。」
女「まだ早いと、先方にお伝えして」
男「旦那様にお話しください。」
女「[溜息] はぁ~…パパは、聞いてくれないの知ってるでしょ?…
いつも忙しくてご飯すら食べれないじゃない」
男「…」
女「ねぇ…黙ってないで、なんか言ってよ?
本当に嫌なの、A、どうにかして」
男「そちらは、お受けできません。旦那様は絶対です。」
女「もう!なら、Aは、パパの言ってる事に賛成なの!?」
男「そちらは、私が口を出すことではありません。」
女「私の気持ち、一番わかってるはずよ!」
男「…」
女「こういう時は、都合がよくだんまりなのね…
本当に都合がいい口だこと」
男「申し訳ございません」
女「いいわ…その代わり、話すタイミングを明日にでも作って頂戴。それくらいは手伝ってくれるわよね?」
男「かしこまりした。こちらで、お伝えしておきます」
女「で、今日は何かある?」
男「いえ、本日は療養日の為、一日公務はお休みになります。」
女「わかったわ。あと、ご馳走様」
男「もう1つだけ、お食事後ですが、よろしいでしょうか。」
女「今度は何?」
男「本日、正午より日没まで、家を留守にさせていただきます。」
女「あら、珍しいじゃない。
Aのあなたが家を留守にするなんて、何用なの?」
男「旦那様、直々のご依頼がある為、私自身で行かせていただきます。」
女「へぇ~…初めて聞いたわ。そんなに、大切なものって何?」
男「申し訳ございません。お伝えできません。言うことを固く禁じられております。」
女「え…何言ってるの?」
男「申し訳ございません。」
女「ほんき?」
男「はい」
女「なんか、最近冷たくなってきたじゃない?私、なんかした?」
男「いえ、もしそう感じられたのであれば、申し訳ございません。どのように接すればいいでしょうか。」
女「[溜息] はぁ~…別に…あっ!なら、昔みたいに接してよ!」
男「昔…とは?」
女「ほら、私たち子供の頃は、タメ口で遊んでるだけだったじゃん?」
男「はい」
女「その時みたいには?」
男「致しかねます」
女「なんで!?」
男「私は、執事と――」
女「やめて、いいからもう。なら!私もその買い物連れて行きなさい」
男「えっ」
女「そうよ!それがいいわ!私も、街に行って買い物する」
男「お嬢様が、出られると民が驚かれます。お控えください」
女「ばかね、このまま行くわけないじゃない。パパとママに怒られるわ。
…侍女の服借りるわ…
[呼びかけ]それでもいいかしら?……だそうよ」
男「……[深呼吸] かしこまりました。お連れ致します。」
女「やったぁ!なら、正午に正面玄関でね」
男「かしこまりました。」
(沈黙)
【買い物】
女「遅いじゃない」
男「申し訳ございません。お嬢様が、ここまで早く支度を整えているとは……思っても…」
女「なに?」
男「いえ、なんでもございません。それでは、あちらの馬車で」
女「待ちなさい。」
男「はい?」
女「あの馬車いくつもり?」
男「はい」
女「駄目よ。それに乗って街に行くのは、ばれる危険性があるし…
それに…その口調、直してよ」
男「口調と申しますと?」
女「その敬語よ!街で、「お嬢様」とか言ったら、アウトよ?。だからこそ、ちゃんと下の名前で、かつタメ口よ」
男「それは…」
女「致しかねます?なら、ばれてもいいの?」
男「かしこまりました。それでは…(少しの沈黙)
Bさん、いくよ?」
女「っん…結構威力あるわね…」
男「どうした?大丈夫?」
女「なんか、急にタメ口っていうのも…照れるわね」
男「戻した方がよろしいでしょうか?」
女「いや!だめ!その///…[小声で]タメ口でお願い」
男「わかった。じゃ、行こうか?」
女「…っん、うん…[小声で]これやばい」
(沈黙)
女「わぁー!すごいよ、このお店!」
男「その店には、入らないよ。こっちだから」
女「もう…さっきから、そればかり。いつもこのお店の商品だけしか見たことないから、初めて自分で買ってみたいのよ」
男「ダメだよ。頼まれたモノがあるだろ?」
女「あ、そうだった。そのお店どこ?」
男「あのお店」
女「んー、なら、私こっちのお店入っていい?新しいお店みたいだし、
バレないと思うの」
男「わかった。そのお店から、出ない事。すぐに戻るよ」
女「わかってる」
(少し沈黙)
男「[店の店主と話す]失礼、ご主人。これくらいの身長の女性を見ませんでしたか?…
…はい…えっ!…どっちの方向に歩いていきました?
…ありがとうございます」
(少しの沈黙・女がナンパされている)
女「やめて!離してって言ってるでしょ!…あ、A!」
男「おいっ!…やめてもらえるか?僕の奥さんに手を出すのは…
…顔は覚えたからな…
(少し沈黙) 大丈夫かい?」
女「うん…少し怖かった」
男「こっちこいっ」
女「……え、[小声で]なに抱きしめてるの」
男「心配させるなよ…」
女「ごめんなさい…ね、みんな見てるから」
男「あ、失礼しました」
女「いいの…ね、口調戻ってる」
男「あ、ごめん」
女「あなたもあんな顔する事あるのね」
男「[溜息] はぁ~…もう屋敷に帰ろう。用は済んだ」
女「え…もう少しだけ、お願い?」
男「ダメ。こんな危ない目にあって、これ以上何かあったら、どうする?」
女「…はい」
男「その代わり、手を繋いで帰ってやるから」
女「え…いいの?」
男「また、どこか行かないようにな」
女「[照れて] …はい」
(長い沈黙)
男「それでは、こちらで失礼します。」
女「え…」
男「もうお屋敷の門が見えますので、手を離して、歩きましょう。」
女「なんで、口調まで?」
男「執事の私が、お嬢様に対する話し方というものがあります。」
女「でも!…まだ、屋敷に着いてない」
男「いえ、この周辺は、近衛兵が巡回しておりますゆえ、見られる可能性があります。」
女「わかったわ…なら、ここから一人で帰る」
男「かしこまりました。それでは、お夕食のタイミングでお部屋にお迎えにあがります」
【屋敷・夜】
男「失礼します。お嬢様、お夕食の準備ができました」
女「…」
男「お嬢様?」
女「[泣いている声で]…いい…要らない…」
男「どうされました?」
女「[泣声] 聞かないで…」
男「かしこまりました。それでは、こちらにドレスを置いていきますね」
女「[怒って] ねぇ!なんでそうやって、放っておくの?」
男「…」
女「そうやって、泣いている私を放っておくの!?…
[声を震わせて]昔は、すぐに駆け寄ってくれたのに」
男「…はい」
女「あの時の、Aはどこに行ったの!」
男「私は執事という立場で…」
女「[声を震わせて] そうやって、私を避けるのね…」
男「いえ、避けてはおりません」
女「なら!なんで、放っておくの!」
男「私は、執事なので、お嬢様の—――」
女「もういい!執事執事執事って!…こんなドレスっ…」
男「お嬢様、おやめください!そのドレスは」
女「いいの!もう!離して!」
男「やめてください!落ち着いてください!」
女「なに!?、そんなにこのドレス大切なの!?」
男「このドレスは来週のお見合いで、必要となるものだからです!」
女「[泣きながら]…なんで…ねぇ…なんで…
なんで泣いてるかわかってる!?」
男「…いえ、わかりかねます」
女「あなたのこと、好きなの…」
男「…お嬢様…困ります」
女「もう、その呼び方辞めて…
[声を荒げて] お嬢様であることが本当に嫌いなの!
…なんでなの!?だって、Bは私をお嬢様としてしか見てない!
お見合いなんてしたくないの!」
男「旦那様のご意向です」
女「なにそれ、Bは!…そうよね…私がお嫁に行っても困らないのよね…」
男「[遮るように]それは違う!」
女「え…」
男「あ…いや…その…なんでもありません。」
女「待って!そのまま、言って。お願い、どう思ってるの?」
男「いえ、私は…」
女「[急かす様に] 言ってよ!ね!ね!ね!ね!お願い!B!言ってよ!」
男「[怒ってる] わかったよ!言ってやる!俺はな!
[段々大きく]ずっと…ずっと、ずっと!好きなんだよ!
でも…執事として一生ついていくと決められている!それが、俺の義務なんだよ!」
女「え」
男「[早口で]俺だって!俺だって!一緒にいれたら、どんなにいい事か!
(沈黙) な?だから…お互い、ちゃんと身分のあった人と…恋をしよう」
女「やだ!そんなのやだ!だって、好きになっちゃたもん!
責任取ってよ!」
男「無理だよ!Aには…もうお見合いが決まってるじゃないか!」
女「それは決まってないもん!」
男「[泣きそうに] 頼む…もう、俺どうにかなりそうだよ…
このドレス、本当は旦那様から頼まれたものじゃないんだ。」
女「え、なら、なんで?」
男「このドレス、俺がBに似合うと思って、最初で最後のプレゼントなんだ」
女「なにそれ…」
男「だから、このドレスに身を包んで、お見合いに出てくれ…ませんか?」
女「やだよ…もう…気持ち知っちゃったもん…
私、パパに言うから、2人で結婚するって」
男「それは…」
女「ね?反対されるかもしれない…でも、一緒にさ」
男「…」
女「なんで黙るの?」
男「わからないよ…」
女「なにが?」
男「Bと一緒にいたい…でも、執事としては、もう一緒にいれない」
女「いいの…ね、私たちもう身分なんていらないの」
男「…なんで?それが唯一、俺たちを引き留めてた」
女「違う。もう、愛があるから、愛してるから」
男「本気で言ってるの?」
女「うん、私人生で絶対に後悔したくない…だから」
男「だから?」
女「一緒に、パパに言おう?」
男「……[深呼吸] わかったよ」
女「[喜んで] やった!ほんとに?ね?ね?」
男「昔からそうだよね、Bは決めると折れない。
どれだけ見てきたと思ってるの?」
女「…うん」
男「今日は、もう寝て?俺も執事に戻るから」
女「だーめ!」
男「…お嬢様?」
女「その言い方やめて。あ、待って。なら、お嬢様としての命令よ」
男「なにそれ」
女「今日は一緒に寝なさい」
男「[焦って] いや、何言ってるの」
女「[上目遣い] ね?お嬢様命令が聞けない?」
男「…う…わかったよ」
女「なら、私ベッドで待ってるから」
男「先にご飯は?」
女「あ、そうね、お腹すいたかも」
男「なら、ダイニングルームで待ってるよ」
女「待って、この部屋出たら、また執事に戻っちゃう?」
男「うん」
女「なら、Bが彼氏であるうちに…ちゅっ」
男「…ん!あ、ありがと、[照れて]じゃ、いくよ」
女「うん」
男「B?」
女「なに」
男「大好き」
女「大好き!」
(扉を閉める音)