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0415.Aが創作した話

AがBに「XとYが付き合っているらしいよ、だって、Zが見たんだって、XとYが同じホテルに入ったのを」と、嘘を創作して話した。

AとBは友だちだが、XもYも、AやBとは会うはずもない人だった。

「嘘ぉ、マジぃ」Bは歓喜した。

Bはそのビッグニュースを、仲のいいCに話した。

Cはその話を聞いてショックを受けた。XはCのあこがれだったから。

Cはその “事実” を胸に仕舞っておくことができずに、つい、Dに話した。

Dにそんなの嘘だよと言って欲しいという気持ちがあった。

DはEに話した。

EはFに伝えた。

FはGに話した。

GはHに知らせた。

Hはひさしぶりに会ったCに話した、YがXにヤられたらしいよと。

Cは驚いた。Bから内緒だよと聞いたことを、こんどはHから聞かされた。

「それ、あたしも聞いた」

「ショックだよねー」

「ゆるせない!」

同じ話を、Bと繋がりのないHからも聞かされたので本当の話だと信じた。

CにとってあこがれだったXが、嫌悪すべき対象になった。

Cは義憤ぎふんられて、その情報を拡散した。

DもEもFもGもCと同様、Xを攻撃した。

Cは彼らの支持を受け、Xへのヘイト活動の急先鋒になった。

Cの日常は変わった、Xへのヘイトが生きがいになった。

XとYの仲など、もうどうでも良くなった。

いまは、手の届かない存在だったXと、同じレベルで戦っているのだ。

そして、正義は自分たちにあり、悪は叩かれるべきなのだ。

CもDもEもFもGも、Xをおとしめることにおいて、仲間だった。

ひとりだったけど、仲間ができた。

もう誰も、そのグループを抜けることはできなかった。

抜けたら自分が非難の対象になるから。

Xへのヘイトはまたたく間に広がった。

Xは身に覚えのないことで、窮地きゅうちに立たされた

完全無欠のXが崩れていくさまを、みんなが愉しんだ。


Aは、それをみて、ほくそ笑んでいた。

Aは、正体がばれないように、ときおり陰から燃料を投下していた。

Aは、Wから、多額の報酬を受け取った。


すべて、創作、つまり嘘です。

柳 秀三

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