大学生だった夏の頃〜蝉の抜け殻〜

私が在学してた大学には、芸術系の学部があった。農学系の学部だった私は、そこの授業も受けたことないし、そこの人とも関わったことはないのだが、今回はその学部にまつわるエピソードを書こうと思う。ずっと心に残っていて、どこかに書きとめておきたいなと思ったので……。

とある学年のとある夏の日のこと、私は大学ではなく市の図書館へ向かおうとしていた。そこまでの道のりで、木に蝉の抜け殻がついているのを見かけた。

気になって、蝉の抜け殻を見てみると、蝉が抜けたあとの穴に何かが挟まっている。気になった私はそれを手にとってみた。

それは、紙のメモで、そこには「この紙を見た人は鉛筆とかでメッセージを書いて蝉の抜け殻に戻しておいてほしい」みたいなことが書かれていた(正確な文章は忘れた)。

そのメモにはその蝉の抜け殻を設置した人の情報も書かれていて、私の大学の芸術系の学部の人だった。

あたりを散策してみると、ぽつぽつとそのようなメモの入った蝉の抜け殻が設置されていた。

私は、こういうことやるの素敵だな〜風情があるな〜さすが芸術などと思ったが、そのとき筆記用具を持っていなかったのでそのまま紙を蝉の抜け殻へ戻した。そしてそのまま図書館へ向かっていった。


……というエピソードである。短い文章で書ける些細なエピソードなのだが、卒業してからずいぶん経った今でも、大学の夏というとこのエピソードも頭に浮かんでくる。

蝉の抜け殻に何かを書き残した人はいるのだろうか?それを設置した人は無事に手に入れたのだろうか?手に入れたメモを見て設置した人は何を思ったのだろうか?

もしもどこかでその人と出会えるならぜひその話を聞いてみたい。


そんな話でした。

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ヤナギハ
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